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blanket  作者: 璢音
再び戦いへ
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最初の料理

「あれもいいけど、こっちも捨てがたい…」

「姉さんいつまで悩んでんの?もう僕戻りたいんだけど…。」


うーむ、と食材の前でしゃがみ込み考えている姉を横目に僕はカートを揺らしていた。


亜里亞姉さんと同じく買出し班になった僕…真琴は、料理があまり得意ではない。

イベントがあるたびに何かしら失敗しては姉や妹を困らせてきた。


だからこうして姉に食材の選定を任せて荷物持ちに回った訳だけど…ここで姉の優柔不断が発動してしまったのさ。


僕としては早く…具体的には聖夜より早く戻って、セイラがスイーツを作るのを見ていたい。なのに、うまくいかないや。


「ごめんごめん…でもこういうのは大事なんだゾ☆」

「姉さん、キャラが乱れてるよ。」

「…ノリわっる!だからモテないんだよー。」

「それとこれは関係ないから。ほら、一刻を争うんだからさ、急ごうよ。」


さっきからずっとこの調子。

他のクラスメイトがいないからといっていつものお嬢様系(笑)キャラを投げ捨て、素の状態になっているようで、何かがある度に話しかけてきてはわけのわからない事を言ってきたりとほんと大変。


……皆にバレたってしらないからね。

自業自得ってやつでしょ。


「真琴〜あと何が必要だと思う〜?」

「大体のは揃ったし、後は他の人に任せて帰るでいいじゃん。駄目なの?」

「んー…あ!やっぱりこっちじゃなくてあのーー。」


あーもう。いつになったら戻れるんだよ…。


「ん?真琴と…亜里亞さん?」


僕らが見ている棚がある列前を通り過ぎようとしたのだろう人が声を掛けてきた。

変なイントネーションがついてるからきっとアルバートだ。


声がする方向を見ると、やっぱりそこにはアルバートがいた。

買い物カゴに結構食材が入ってるから、きっと会計をしにいこうとしていた所で僕らを見つけたんだろう。


「あ…アルバートくん。もしかして会計しにいくのかしら?」


途端に口調がお嬢様系に戻った姉に、僕はないわー、ひくわーといった目線を向けた。


「そうなんです、はよせんと彼らを待たせる事になるし。」

「そうよね。でも…うーん、やっぱりこっちかしら…?」

「何を迷っとるんです?」

「これなの…。」


そう言って姉はアルバートに缶詰を差し出した。右手は白桃を、左手は黄桃の缶を持っている。

さっきからずっとこれで迷っているんだから、バカバカしい。口には出せないけど。


「んー…なら白桃がええんちゃいます?」

「でも黄桃も捨てがたくて…。」


だったらどっちも買えば良いとさっき言ったのだが、聞き入れられなかった。

一体どうしてそこまで迷うのかがよく分からない。きっと本人にしか分からない。


「せやったらこうしましょ、俺が白桃買って亜里亞さんが黄桃買えばええんちゃいます?」


その瞬間、姉の目に輝きの色が灯ったのを僕は見逃さなかった。


良かった、これで戻れそうだ。


「ありがとうアルバートくん!」


姉は左手及び黄桃の缶を差し出す。

アルバートはそれを苦笑いしながら受け取った。その後はすぐに笑顔になってたけど。


「さ、戻ろ。みんなが待ってるよ。」

「えぇ、戻りましょうか。」


会計を済ませてスーパーを出る。


「そういえば、他の皆と会ったりした?」


一番近くにあるのがこのスーパー。だからてっきり全員ここにきちゃうかと思ったけど、意外と会わなかったな、と振り返りアルバートに聞いてみる。


すると数人には会ったものの、全員ではないと答えた。


周りにはいくつかのコンビニがあるし、そっちにいったのかもしれない。もしかしたら買いに行ったんじゃなく、取りに行った奴もいるかもしれない。

どう考えたってあの食欲の塊みたいな子がこれっぽっちの食材で満足するはずがないし。


それともあっちこっちに買いに行ってるのか?効率悪そうだけど。


まぁ、食材が早く多く集まれば何でもいいんだろうけどね。


「ケインは猛ダッシュで消えた。沙灑は自転車に乗って行ったのみたけど二人とも会ってへんなぁ。」

「沙灑が自転車使ったのには驚いた。」


帰り道荷物を抱えながらアルバートと話す。


姉さんはもう少しフルーツのコーナーが見たいというので、姉さんを置いて先に帰ることにしたんだ。


「どっちの意味なん?」

「どっちってどういう事さ?」


え、知らへんの!?と驚いた顔をするアルバート。何か僕、おかしな事言ったっけ?


「沙灑の機械製作力は凄いんやで。」

「機械を製作?は?」

「例えるなら名探偵コ…」

「あー…あの博士ね、はいはい。」


有名な探偵アニメに出てくる博士がそういえば色んな発明をしてたっけ。

沙灑がそんな感じのことをしてるとは考えにくいんだけど、どういう事だろう。


「どんな物作るの?メカ?」

「んー詳しくは知らんねん。でも、璢夷が沙灑作のスケボーに乗ってたんは知っとる。」

「スケボー?機械じゃなくね?」

「畳める、軽い、速い。兎に角優秀なんやて。」

「ふぅーん…。」


結局詳しい話はどっちにも分からなくてこの話は終わった。


気がつけば戦場(ファミレス)が目の前にある。


「戦況はどんなもんやろな。」

「いい方向に向かってるといいけど。」


気を引き締めてからいざ入ってみると、先程とあまり変わらない光景が目に入ってきた。


いや、さっきよりはちょっと片付いてるかな?そんな所。


割れた皿が箒ではかれて端のほうに寄せてある。でも防衛班とあの女の子がいる付近は近付きにくいのか放置だ。


誰かが雑巾で床にこぼれたジュースを拭いているのも見えた。


「なんやねんコレ…。」

「僕もそう思ってるし皆もだと思うよ。」


普段店内の奥の席に向かうように、テーブルとテーブルの間を通って行く。

たまにこっちに流れ弾ならぬ流れフォークとかが飛んできたけど、席同士を隔てる壁と曇りガラスに体を潜めてやり過ごした。


まさに戦場だよ。


「遅くなったー!ん?めっちゃいい匂いがする。」


厨房の扉を開けるなりいい匂いがふわ〜んとしてくる。

これは……炒飯の匂い?


「おー、旨そうやんそれ!」

「俺特製普通の炒飯!」


得意げに大きな皿にこんもりと乗った炒飯を見せつけてきたのは輝生だった。


「料理得意なんだ、意外だなぁ。」


輝生がこの班なことに違和感を覚えたが、どうやら自分が間違っていたらしい。


人と接するのは得意じゃないくせに、人をもてなす料理は作れるのか。


「さてと、誰かこれ持っていっとけ!俺は次の料理を作らねぇと!」


そう言って炒飯を置いて持ち場に戻って行ってしまった。


取り残された僕らと、近くで休んでいるケインくんと目が合う。


「…誰が行く?」


あの戦場の中心地に。

僕はごめんだね。絶対軽傷じゃすまないだろうし。


「まぁまぁ、ここは恨みっこ無しでじゃんけんせぇへん?」

「いいぜ。そうするか。」


勝手に決めないで欲しいと怒る前に、ケインがじゃんけんを始めてしまう。

これは…勝つしかない。何としても!


「最初はぐー!」


何を出す…?チョキか?いやパーの方が…いやでも……


「じゃんけん」


えぇい!チョキ出してやる!


「ぽん!」


恐る恐る二人の手を見る。

アルバートはグーを出していた。


ま、まずい!


そう思ってケインを見るとパーをだしている。…あいこか。


ホッとしたのもつかの間。すぐに次のじゃんけんが始まった。


「最初はグー、じゃんけん…」


次もチョキでいく!


「ぽん!」


その瞬間、僕は自分の目を疑った。

二人がグーを出していたからだ。

まさか、まさかそんな。


「あ、あぁ……」

「頑張れよ!」

「ふぁいとぉー。」


二人とも勝ったからか安堵の表情を見せ、こちらを労ってくれる。


畜生、負けた…。


仕方なく台に置かれた炒飯を持ってフロアに戻った。


少しずつ少しずつ、周りを見ながら近づいて行く。なるべく足音を立てないように、すり足で。かといって皿とかの破片を踏んでも大変なので、足元に細心の注意を払う。


さっきまで外にいたから分からなかったけど、状況はいい方向に向かっているらしい。


皿はほぼ全て割れてしまったのか、宙を舞うのはフォークとナイフ、それからスプーンに箸。でも箸も割れたりして使い物にならなくなっているのもあった。


この状況から察するに、彼女はこれらの物を自在に操れるのだろう。


「真琴さん、それは…」

「炒飯。」


氷椏の問いに最低限の言葉で返す。

……あまり余裕がない。

近付くにつれフォークなどもこちらに飛んでくるからだ。


「炒飯…美味しそう。」

「余所見してたら刺されるよ!?」


政宗と幟杏が何やら言っているが、耳を通り過ぎて行った。


「幟杏、真琴さんに着いていってバリアを。」

「煩いなぁ、言われなくてもやるってばー。」


幟杏がすぐ後ろをついてくる。凄く落ち着かない。

ボタンのカチカチという音が後ろで連続的に鳴っているからだ。


氷椏と幟杏の能力の一つ、防壁(ガード)は携帯に夢中になることで発動するらしい。

夢中になっている間は、干渉を一切受けないとか。

範囲は使用者から半径50cmとかそのくらいだったかな。


「……あぁあ、いい匂いがするなぁ〜。」


対象がこちらに気づいた。


「攻撃が止んだ?」

「匂いが近づいて来るからかしら。」

「ん?じゃあもうバリア張んなくていい?」


ぱっ、と僕から離れる幟杏。


「炒飯かぁ!あったかいうちに食べたァい!」


対象の目はキラキラとまるでおもちゃを前にする子供のようだ。

さっきまでの行動が嘘のように大人しくなる。


「そうそう。あたしがお腹いっぱいになるまで料理をくれればいいんだよ〜っ!」


対象のいるテーブルについた。

両手で支えていた皿を、テーブルにゆっくりと置く。


そして速攻で離れた。


勢い良くいただきますと大声を出し、同時に手を合わせてから食べ始める。


食べる勢いは凄まじく、すぐに皿の底が見え始めた。あんなに盛ってあったにも拘らず。


「んんん〜おいひぃ!ふぉれ、られがふくったの?」

「輝生。」


ごくり、という音の後にどこにいるの?と首を傾げて聞いてくる。


「厨房にいるよ。今次の料理を作ってる。」

「じゃあ注文しちゃおっかなぁ〜。火加減とかチョイスを見るに中華が得意だとみた!蟹玉希望!」

「は、はぁ…。」


同時に静くん、蟹玉一つ〜〜という声が響く。


これはまだまだ休めそうにない。




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