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blanket  作者: 璢音
再び戦いへ
83/139

もっと食べたい!

たまに無性に甘いものが食べたくなります。

特にケーキとチョコレート。


最近ではマカロンなんかも。


チョコレートは元々好きで、マカロンは単なる興味。


ではケーキは…?

これも理由がちゃんとあるのですが…

何とも迷惑な事です。

そのせいでどんどんおでぶになっていきます(´・ω・`)


…くだらない雑談はさておき、本編をどうぞ。


どこにでもあるような、ファミリーレストラン。その一角はまるでパーティのようになってる。いつもとは違う光景がそこにはあった。


テーブルの上はデザートと空の皿で溢れかえる。そんな中ウェイターさんは忙しそうに両手に皿を載せて、キッチンとこのテーブルを行き来していた。


「あの量をたった2人で?」


それは信じがたい光景だった。


お相撲さんとか、身体の大きい人ならまだ理解ができた。でも目の前にいる2人は私たちとそこまで変わらない普通の男女。


ただ、食欲だけが抜きん出ている。


ケーキが一瞬で消え、ジュースはまるでお湯をはったお風呂の栓を抜いた後のように凄い速度でなくなっていく。

見ているこちらが逆に食べたようになって、気分が悪くなってしまった。


「すみません、そこの席に座っている方。他の方に対して失礼だとは思わないんですか?」


ずいずいと距離を詰めてまくし立てるのは意外な人物。その人物とは、普段はあんなに大人しい璢胡ちゃんだった。


2人はそんな璢胡ちゃんには気がつかないようで、目の前の食べ物を次々と飲み込んで行く。


いくらなんでも、失礼じゃないかな?

何故か私も怒りが増してきてしまっていた。

みんなが大好きなパフェやアイスやパンケーキやショートケーキやあんみつにわらび餅に……それを全て2人で牛耳ってしまっているんだから、多少怒っても仕方が無いよね?


「聞こえてないんですか?」

「ごふぇんごめふ。今ひょっといふぉがしーから、っと待って……」


そう返事した男性の喉がごくん、と大きな音をたてた。


忙しい?食事をする事が?


「で、なんだい?料理はちゃんと頼んでいるし、お金だって払うよ?何が悪いのかな?」

「そんな言い方おかしいんじゃないですか?普通、2人でこんな量を食べたりなんかしません!」


ダン!とテーブルの僅かな隙間に手を勢い良く押し付ける。食器がその振動で少し位置がズレた。

思いっきりテーブルを叩いたらしき璢胡ちゃんの手は既に赤くなっている。


璢胡ちゃんがテーブルを叩いた後も、二人の対応は変わらなかった。更に怒りを増して行く璢胡ちゃんを遮って男性の前に誰かが現れる。


それは物申す為なのか、それとも璢胡ちゃんを止めるためなのかはわからない。


「人前で声を荒げるなんてお前らしくないぞ。」


止めに入ったのは兄である璢夷さんだった。


男性は興味なさげに璢夷さんをちらりと横目で見て、それからハッとしたように顔を上げた。

勢いが凄すぎてテーブルの上の食器がカタカタと音を立てる。


一体どうしたんだろう。

いきなり態度が変わったから、きっと璢夷さんに関係があるんだよね。

そこまで考えたけれど、それから先は全く分からなかった。


「……ごめん。」

「えっ?」


先程の態度とはだいぶ変わっている。

彼はだらりと項垂れていた。


今にも泣きそうな小さな掠れ声がぽつりと聞こえてくる。

周りをゆっくりと見回せば、皆が心配そうにこちらを見ているのが分かった。


「そうだよね、二人占めは良くないよね。また周りが見えなくなってた…。」


そう言って彼は食事をとることをやめ、帰る支度を進めて行く。


この場は収まったって事でいいんだろうけど、なんだか腑に落ちない。


「兄さん、何であそこで私を止めたんですか。私は今、後悔しています。」

「彼はもう反省している。彼がまた同じ行為をしたら、注意をすればいい。璢胡…お前の気持ちは分からなくもないがな。」


行き場のない怒りを抱えたままの璢胡ちゃんに対してなだめるように璢夷さんが言う。

璢胡ちゃんもちゃんと理解はされているのだと分かったようで、それ以上は何も言ってはこなかった。


「レーダーが、反応してる。」


少し後ろの方から控えめな声が聞こえたかと思えば、レーダーが反応していると言っている。


何で?誰が?

考えられるのは、怒りを上手く解消出来なかった璢胡ちゃん。それから、食事中だった彼、そして…私?


「レーダーは、どの辺りにマーカーが示されていますか?」


声を聞く限り、この会話をしているのは真希さんとカインさんかな。二人とも下手に刺激しないように落ち着いた口調になってる。


「マーカーは僕から見て斜め正面、丁度…」



真希さんの斜め先にいたのは

私ではなく、


かといってあの男の人でもなく、


璢胡ちゃんでもなかった。


その先には一人、席に座っている人がいた。


「レーダー?マーカー?君達何を言ってるんだい?」


警戒しつつ彼が聞いた。それもその筈。私たちが彼を知らないように、彼もまた私たちを知らない。


「皆して妹を見るなんて。」


そう、真希さんの斜め前にいるのは彼の妹さんだった。


思えば会話する事無く、今もただただ食事をしている。


そんな彼女が口を開いた。


「お兄ちゃん、もうご馳走様なの?私はまだ食べ足りないよ〜。もっと注文して?」


この場の流れや空気を一切無視して彼女は食べ物を欲した。

どう考えてもこれはおかしい。


「…っ、もうお店にこれ以上の食べ物はないそうだよ。」


そう兄である彼が言うや否や、それまで変化のなかった彼女の表情が歪んだ。


「…え、そんな筈ないよね?まだ私、腹三分目だよ?」


怒りとも絶望とも言える表情は、今まで会ってきた誰とも違った。


それはどこか恐ろしくも感じる。


そこのない闇を見ているような、今にも自分も落ちてしまいそうな…。


「これは不味いな。」


「お兄ちゃん。嘘は良くないよ?ほら、早く頼んで?」


どこまでも食に執着する彼女と呆然と立ち尽くす私達。均衡が乱れたのはその後すぐだった。


「そっかぁ、お兄ちゃんもアイツらと一緒なんだぁ…。」

「違う!そんな事はない!」

「だって私に食べ物をくれないんだもん。」


その手に握られた、ナイフとフォーク。

それは私たちが普段使うような、銀色のどこにでもあるもの。派手な装飾もない、普通のナイフとフォーク。


…の、筈だった。


「ほーら、この人たちもそう。私のこと……邪魔だって、いらないって思ってるんだ。だったら…皆食べてあげる。」「机の下に隠れろ!」


被せるように急かす声。

誰だか分からないまま、皆机の下に潜り込む。


すると突如机に謎の衝撃が襲ってきた。


ストトトトッ、ガチャン!

カシャンカンカン!


食器に何かが当たっているのはかろうじて分かる。


避難訓練の時のように背を低くして耐える。

私の班の人も事を大きくしないよう、素直に声に従って机の下に隠れていた。

狭いけれど、不思議と不安がなくなった。


「ダメだよ、ーー!その力は!」

「お兄ちゃん煩い!黙ってて!」

「お兄ちゃんの言うことを聞けぇぇえ!」


パリン!ガチャガチャガチャ!


叫び声と共に騒音のボリュームが大きくなっていく。


最早何が起きているのか、全くわからなくなってしまった。


床には割れた皿の破片や氷、飲み物やナイフやフォークやスプーン、箸などが散乱している。


踏まないよう、飛び散る破片が目に入ったりしないようにする為にはかなりの注意力が必要だと思う。


「け、警察を…!」


突如戦場と化したファミリーレストラン。


従業員さんが慌てて電話をかけに行くのが想像出来る。


「紫綺、いけるか?」

「援護があれば、いつでも。」

「戦闘部分は割いても構わん。頼んだ。」


「どうしようか。」

「様子見しましょう。」


「きゃぁ〜紫綺くぅん、千佳…こ〜わ〜い〜。」

「全然怖がってないわね。」


私達はこういう状況に慣れてるからそこまで取り乱したりはしないけれど、ナイフやらフォークやらが宙を舞うのを普通の人が見たら…気絶しちゃうんじゃないかな。


「そこっ!煩い!ワタシを大人しくしたかったら美味しい食べ物寄越せぇええっ!」

「君達!申し訳ないけれど何か食べ物を用意してくれないか!?」


鳴り止まぬ騒音の中お兄さんの声が聞こえる。


食べ物…そっか!食べ物食べたら落ち着くんだね。


確かに周りにあるのは食器類ばかりで食べ物は一切落ちてない。飲み物は溢れてるけど。


「では、持ち寄りますか。このまま暴れられるのは困りますしね。」


どこにいるかは分からないけれど、そこまで離れていない所で話し合いをしているみたい。


ここに残っているのは私達と彼女らと店員さん達。

ここに食材はもうないから、持ってこなくてはいけない。


「幸いここには厨房もありますし、適当に作ればいいでしょう。」

「あら、腕の見せ所ね。」

「わ、私は料理が下手なので店員さんに事情を説明して協力を仰ぎます…。」


私は何をすればいいんだろう。

手伝いかな。それとも買い出しかな。


「璢夷と緋威翔は料理班確定、政宗が状況説明するの?じゃあ政宗が指示していく感じで。」

「えっ…私が?」

「指揮とってってねー。」


政宗さんに丸投げ状態の紫綺さん。

でも何か考えがあるはずだから、私は賛成します!


「…じゃあ氷椏さんも一緒に指揮とってください。私一人じゃ支え切れない…」

「任されました。」


ミッションカウンター常駐の氷椏ちゃんならこういうの慣れてるかもしれないもんね。

私は指示を仰げばいいのかな?


私たちが作戦を練っている間にもどんどん破片などが散らばっていっている。

そのうち窓が割れたりでもしたら大変…!

急がなきゃ。


「ノエルさん、聖夜さん、沙灑くん、ケインさん、亜里亞さん、真琴さん、千佳さん、アルバートさんは買い出しお願いします!」

「真里亜さん、璢胡さん、カインさん、璢娘さんは掃除をお願いします…!」

「霧雨さんと栞さん、紫綺さんと幟杏はここに残って防衛を!」

「カインさん、セイラさん、月華ちゃん、静さん、真希さんは厨房で調理をお願いします…っ」


わ、私調理班!?


てっきり掃除をしてほしいと言われるかと思っていた私は動揺した。


嫌ではない。料理を作るのが苦手という訳でもない。なのに何でこんなに動揺してしまったんだろう。


やっぱり彼の存在が大きいんだろうか。


政宗さんと氷椏ちゃんの指示は的確で、それぞれの得意不得意を把握しているのが良くわかる。

その証拠に、この班分けに異議を唱える人はいなかった。


それぞれが早速持ち場に向かう中、他の人よりもと競う人もいるみたいで戦場の空気はどこかにいってしまい、どちらかといえば、時間制限のあるクッキングバトルのような雰囲気に変わる。


緊張感はそのままだけれど。


「月華ちゃん、頑張りましょう?」


近づいて来たセイラさんにエールをおくられ、他の調理班メンバーと共に私は厨房へと向かった。





職業体験。一度中学の頃に機会があったけれど、私はその時お花屋さんを見に行った。


色とりどりの花に囲まれて、笑顔が咲く店内で作業をするのがとても楽しかった記憶がある。


その時も職場の裏側のスペースを見れて興奮してたっけ。



……厨房に入り、最初に思ったのはそんな事だった。


「色々なジャンルの料理を振る舞う店なだけあって、調理器具もかなりありますね。」

「はい、ここに置いてある器具以外にも料理人が各自で持っているものもあります。」


厨房へと案内してくれた店員さんが、何がどの辺りにあるのかを丁寧に教えてくれる。


本当なら今にも逃げ出したいはずなのに、私達を見て今の行動に思い立ったらしい。


「食材は今この場にないんだろ?だったらとりあえずどんなモン作るかでも決めておこうぜ。被ったら面倒だしな。」


静さんが気だるげに話している。


そういえば静さんとあまり話したことがないような?


どこか怖い印象を受けているのでどう話していいのか戸惑ってしまう。


「そうですね。では食材が集まる前に決めましょうか。」

「璢夷は何でもできんだろ。じゃあ、レパートリーが少ない奴から決めてけよ。」

「言葉に気をつけた方がいいですよ静さん。…皆さんの得意な料理はなんですか?」


言葉の荒い静さんの提案をかみ砕き、優しく話しかける緋威翔さん。


私の得意料理…かぁ。何だろう。


「簡単に分けるのでは駄目かしら?」

「というと?」

「おかず系と甘い物系のような大雑把な分け方でいいかという事ですよね?セイラ。」

「えぇ。お兄様の言うとおりですわ。」

「で?お前らはどっちにすんの?」


「私と月華ちゃんはスイーツを作りたいと思っているの。あなた達はどうかしら?」

「僕はおかずかなぁ〜。」

「私はどちらでも構いませんよ。」

「俺おかず系で。」

「僕は…」

「緋威翔はスイーツを頼む。」

「えっ?…分かりました。」


緋威翔さんが決めるより早く、璢夷さんが少し慌てたように言った。


さっき静さんが言った通り、璢夷さんは万能だからどちらを担当しても大丈夫なはず。


何か他に理由があるのかな?


「じゃあ比率的な問題もあるし、璢夷もカインもこっちの方がいいね。」

「俺、璢夷、真希、カインが前菜とかメインディッシュとかで緋威翔と月華とセイラがデザートって事だな?」

「そうなるな。」


店員さんに教えてもらった通り、デザート担当の人の持ち場につく。


道具やセットを目の前にしているからなのか緊張感が増していく。心拍が速くなり、落ち着かなくなった。そわそわしながら周りを見ると、普段と変わらず落ち着いた緋威翔さんと何だか楽しそうなセイラさん。


二人とも特に緊張した様子はない。


私だけがこの場で緊張しているのかと思うと恥ずかしくなった。


「食材、どんなものが来るか分かりませんから難しいですね。お二人は何を作るか決めていますか?」

「いえ、私は決めていません…。」


決めるも何も、考えられない。

私がレシピ無しで作れるものなんて、パンケーキやクッキーやプリンくらい。

普段レシピに頼っているのが良く分かる。


「私はチーズケーキやガトーショコラから作ろうと思っています。この二つは満腹度を上げてくれるでしょう?」

「所謂‘‘重い’’スイーツを作る作戦ですか。良いですね。」


余裕のある二人はそう会話を続けて行く。

置いていかれた私はこの後どうしようと不安になる事しか出来ない。


「では僕は生クリームを多めに使ったショートケーキから作っていきましょう。おそらく、それくらいの材料なら一式揃えてくれる筈です。」

「兎に角甘い物…マカロンなんかもいいかもしれませんわ。満足感を与えるにはぴったりですもの。」

「月華さんは…」

「はいっ!?」


いきなり話を振られても、対応に困る。

ましてや、その相手が想い人なら。


「手伝っていただけますか?その…まだあまり慣れていないもので。」

「は…はい!喜んでっ!」

「ありがとうございます。助かります。」


頼りにされる程の腕前はないけれど、素直に嬉しい。誰かに必要とされるのは。


「では私はあちら側で作業しますわね。お二人はこちらで…道具の準備だけでもしておきましょう。」


そう言い微笑んだセイラさんが私の後ろを通り調理場の奥へと進む。


「お二人で…頑張ってくださいね。」


通り過ぎる際に、セイラさんにこっそりと言われ声にならない叫びが込み上げたのは、内緒だ。

今回のタイトルはもっと食べたい!でしたが、これ…わかる人には分かるネタです。遊びすぎました…。


次回は買い出し班のお話の予定。


皆さん、もうすぐ2014年が終わりますが今年はどんな一年だったでしょうか。


私は就職したり環境が変わったりと、かなり変化があった刺激の多い年でした。

来年はもう少しゆったり余裕を持ちたいものです。


皆様、来年も宜しくお願いしますね。

ではまた次回。良いお年を!



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