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blanket  作者: 璢音
再び戦いへ
82/139

思考は夢現

ふー!やっと更新できた!


どうも、璢音です( ‾᷄꒫‾᷅ )←


最近仕事が残業続きで執筆時間があまりなく、通勤途中・昼休み・帰宅途中に細々と書いております( ‾᷄꒫‾᷅ )←


しかもこの回は(忘れられていた)美麩ちゃんの為にいつもより気合いれて長く書いたせいか時間のかかることかかること。


前置きはさておき、本編へどうぞ!

今頃皆さんは歓迎パーティと称して食事をしているのでしょうか。私もそれに参加していたら、今を楽しんでいた事でしょう。

ですが私には早急に確認しなければならない…調べなければならない事があるのです。


私のこの武器に関するコト。

今まであまり武器を使った事がないのですが、どうやら“開く”力の他にも能力がありそうです。


最近人の身体の一部…胸だったり背中だったり頭だったりに、鍵穴が見えるようになりました。それは自分の身体にも存在しています。


人の鍵穴を勝手に開くのは良くない。ならば自分の鍵穴を開いてみてどうなるかを検証すればいい。そういう結論に至りました。


開くとどういう事が起きるのか未知なのでとても心配です。でも、この力の使い様によっては誰かを救う事が出来るかもしれません。ならば、試してみる他はないのです。


一人寮にある自室でカーペットの上にへたりと座りながら、首にかけた鍵をつつ、と弄ります。


勇気を出して鍵をつまみ、額にある鍵穴へ向かって差し出します。鍵穴に鍵を差し込むことは出来ませんが、それでも鍵を捻るとカチャリと錠の落ちる音が響きました。


その瞬間ありとあらゆる力が一気に抜け、体を支える事が出来ずバタリと床に倒れます。その様子は見るより明らかでした。意識も遠のき、鍵がカーペットの上を滑ります。


あの鍵穴は開いてはいけないものだったのでしょうかーー。


このまま私は誰に知られる事もなく消えるのですか?そんなのは嫌です。彼らや彼女らに恩返しを出来ていませんし、まだやり残したことが沢山あります。こんなところで死ぬわけには……!






気がつくと私は見知らぬ場所にいました。

辺りは暗く、遠くには仄かに明かりが見えます。次第に目が暗闇に慣れてくると、ここが森だという事に気がつきました。

梟の鳴く声が聞こえ、頭上を月が照らしています。肌にはひんやりとした土が触れており、倒れたままの姿でここにいる事がわかります。


学校の側に森はありましたが、その森とは少し違うような気がしました。


倒れていた体を起こし、体についたであろう土を払います。しかし不思議な事に、体に土は着いてはいませんでした。


「大丈夫か?ミフィー。」


ミフィー?私と似た名前ですね。

それにこの声には聞き覚えがあります。


「いきなり倒れたから何があったのかと思ったよ。」


この声にも聞き覚えが…そう思い声の主を見ると、目の前に璢夷と紫綺さんがいるではありませんか。

ですが服装がいつもと違います。

璢夷も紫綺さんも黒いローブに身を包んでいるのです。


「その身体だと不便だろう。懐中時計の能力を使うといい。そうすれば貧血などにはならんからな。」


懐中時計?


握った手のひらを開くとそこには金色の小さな懐中時計が握られています。鍵の代わりとでもいうように、キラキラと輝いていました。無意識にネジを回すと身体が軽くなっていくように感じます。


「無理はしないでよ?辛かったら俺がなんとかするから。」


そう言ってくれるのはありがたいのですが、どうにも変な感じがしてなりません。普段こうして紫綺さんと話すことは中々ありませんし。


「えぇ…ありがとうございます。」

「ミフィは死神になってからまだ日が浅いからな。」


し、死神と今聞こえたのですが気のせいですか?気のせいですよね。私は人間ーーー。


「そうそう。タナトス様の息子であるルイスと違うからね。」

「シャンヌよりも新人だからな。慣れないのも仕方が無い。」

「待って。ルイス?シャンヌ?私が知っているのは璢夷と紫綺さんよ。どういう事?」


声は思いのほかすんなりと出すことができ、ちゃんとこの場にいる人達に聞こえているようでした。

ただ、反応はあまりよくありません。

璢夷ーールイスも紫綺さん(シャンヌさん?)も私がこんな事をいうのは意外だというような顔をしています。おかしいのは私の方なのでしょうか?


「ミフィ、だよね?」

「私の名前は美麩です。」

「ミフ?似ている名前ではあるが、ミフィではないということか?」


私は素直に頷きました。


「ちょっとルイス、これどういうこと?」

「分からん。死神として過ごしてきた中でも初の事例だ。」

「私は死神になんてなった覚えはありません。ルイスさんにシャンヌさん…?ここは一体どこなのか、教えていただけますか?」


一人一人の顔を見ながら言います。


この森の事が分かれば、少しは前進できる気がしたのです。


「あー、えっと、シャンヌはこっちね。俺はフィジー。」

「し、失礼しましーー沙灑くん!?」


フィジーさんが手を差し出す方向にはルイスさんの背中にある翼があり、名前を伝えた瞬間翼は姿を人に変えました。

その人をよくよく見てみれば、沙灑くんにそっくりではありませんか。


次から次へと知り合いが似たような名前で出てくるので混乱してしまいます。


「質問への回答がまだだったな。ここはセミリア・ファル王国にあるリスィ・ヒューレーという場所だ。」

「ま、見ての通り(ヒューレー)だね。」


リスィ・ヒューレー?

リスィという人の所有する森という事でしょうか。


「ルィス。」


シャンヌさんがルイスを手招きして耳元で何かを囁いています。シャンヌさんも沙灑くんに似て、人見知りのようです。


「そうだな、その可能性もある。…ミフ、と言ったな。一つ聞いてもいいか?」

「はい、何でしょう?」

「セミリア・ファル王国を現在統治している…つまり女王の名前は知っているか?」

「え?えぇ…。」


現在セミリア・ファルを女王は統治していません。共和国となっています。元老院をもとにして作られた政治のための団体等はありますが、セミリア・ファル王国時代から残っている建物や物は少ないです。


図書館がいい例です。あれはセミリア・ファル王国時代からあります。当時も民間のための図書館として使われていたとか。


話が逸れました。女王の話でしたね。


「女王は…いません。」

「いない、だと?」

「やっぱり違う時代の人ってことか〜。過去?未来?」


そう問われれば確定したも同然でしょう。念のために聞いておきますが。


「貴方たちの知る、現女王はどなたなんですか?」

「ミラに代わり、イアが現在女王となっている。」


以前授業をする際に調べたものと一致しているとなると答えは未来で決まりです。


「どうやら私は過去に来てしまったようです……。」

「女王がいないということは、この国は共和国になるのだな。それはミラも喜ぶだろう。」

「国民を第一に考えてたもんね。」


だから慕われていたのだとルイスさんは言いました。

そうですね、愛したからこそ愛されたのでしょう。


「そういえばさ、ミフは何でミフィに取り憑いてるの?まさかミフィの転生後とか?」

「そうならば、色々話を聞きたいものだ。…ミフがここに来た目的は何だ?」

「ええと…。」


私がどういう経緯でここに来てしまったのか話してもいいのでしょうか?タイムパラドックスなどが起きてしまわないかが心配でなりません。ここは軽めに説明をしておくくらいにしておきましょう。


「未来から来た私は特殊な能力を持っていて、その力で何が出来るのかを検証したらここに飛ばされてしまいました。」


ルイスに何か思い当たる点があるようで、立ち話もなんだと、近くの丸太に腰掛けるよう勧められます。私は素直に座るとルイスの瞳を見つめました。

思い当たる点があるとすれば、現在の体…ミフィの事でしょう。


「ミフィの体を借りている以上、何かしら繋がりがあるのだろう。鏡を見てみるか?似ている点があるかもしれないからな。」


ローブのどこからか四角い鏡を出したルイスさんはそのまま私が映るように差し出してきます。見る前から薄々察してはいましたが、ミフィという人は私と瓜二つでした。


「どうなの?」

「私にそっくりです。」


間違い探しすら出来ない、自分と全く同じ見た目をした女性。それがミフィ…。


「やはりな。先程シャンヌをサシャ、と言ったのもそういう事か。…少し聞きたい事があるのだが、いいか?」

「私に答えられることなら。」

「ミフィは特殊な死神でな。突然だが、死神の武器といえば?」

「鎌よね。」

「あぁ、だがミフィの鎌は普通の鎌と見た目が違う。形状が鍵に似ているんだ。」


鍵といえば、私の非武装の武器も鍵。

そういう事ですか。


「今、ポケットの中に懐中時計があるだろう?」


ポケットを探ると確かに時の止まったブロンズの懐中時計が入っています。針を動かそうとしても動く気配はありません。壊れているのか、止まっているのが正しいようです。


「それを握って頭の中で武器になれと命令してみてくれ。」


言われたとおり、懐中時計を握ります。


(ミフィの武器になるのですーー!)

そう念じると懐中時計は淡い光を放ち、形状を変えました。それは確かに私の武器と同じく鍵で、鎌に似たつくりになっています。


「これがミフィの武器なのだが、どうだ?見覚えはあるか?」


私は頷いてみせます。


「えぇ、私の武器と殆ど同じです。それにこの武器…なんだか初めて持つような感じがしない。」


私が輝生さんの世界に入るために鍵を使った時。あの時と同じような感覚がします。鍵が熱を帯びているのか、それとも私の手が温かくなっているのか…どちらにせよ、その熱反応は鍵を使用している間だけ起きたのです。


それが今も起きているとなると、やはり私の考えは間違っていない。


「ではミフィの生まれ変わり…という事で良いんだな。……先程言っていた“能力”というのは鍵を使う。違うか?」

「そう。私は鍵の能力を使ってここに来たの。」


私の答えに対してそうか、と呟くルイスさんは少し嬉しそう。ミフィが気にしていたという事なのでしょうか…自分が周りと違うことを。


「帰る方法もきっとその能力だな。何も用意は出来ないが、ゆっくりしていくといい。今は任務もないからな。」

「俺ら以外の人と話すの久々かも。何でも聞いていいよ。わかる限り答えてあげる。」


そういってくれるのなら、遠慮はしない方がいいかな。折角直接自分という訳ではないけど、違う自分の事を知れるかもしれないのだから。


「リスィ・ヒューレーは、セミリア・ファル王国のどの辺りにあるの?」

「この森は王国の端に存在する。イアのいる城よりも、ミステリア城の方が近いな。」

「ミステリアって確か隣国よね。王子が統治してる。」

「そうだよ。この森はミステリアと繋がっててさ、国境も曖昧なんだ。だからどちらの国の住民もこの森を行き来してるよ。」

「俺達のホームへ続くゲートもこの近くにあるんだ。」


死神でも散歩はするのかな。それともパトロール?

どちらにせよ、ここに会話が出来る人(?)がいて幸運だったみたい。

そのお陰でこうして色んな情報を聞くことが出来ているし。


「少し辺りを歩いてみたいのだけど、案内してくれる?」

「あぁ。何処に向かいたいんだ?」


普通の人に姿が見えない分、大体の場所は行けるという。


折角ここまで来たのなら、セミリア・ファル王国以外の場所にも足をのばすべきなのかな。どうしよう…。


「ルィス。誰かがこっちを見てる。」


ぴんと体を強張らせ、辺りをキョロキョロと見回すシャンヌさん。ルイスさんはそれを見て静かに辺りを目で探る。

フィジーさんは頭の上にクエスチョンマークが浮かんでいるみたい。私も特に何も感じないけれど、誰かがいるのかな。


「確実に一人…いや二人いるな。こちらを見てはいるが、敵意はなさそうだ。それより向こうが警戒してしまっている。」

「どこにいんの?別に俺ら何もしないけど…。」


突如木の葉の擦れる音がなり、柔らかな風が吹いた。

風が頬を撫で過ぎて行くのを確認してその方向を見る。

すると豪華な服に身を包んだ二人の男女の姿があった。


男性は御伽の国から飛び出てきたかのように優美なオーラを醸し出している。かといって近寄り難さは感じさせない。

漆黒の髪にアメジストのような瞳。どこか遠くを見つめているような、その視線が交わるとあまりの美しさに目を合わせていられず、逸らしてしまう。


女性は男性とは反対に輝く銀の髪をもち、瞳はアクアマリンのような透き通る水色。

冷たさを含んだ視線に射抜かれると、まるで自分が氷になってしまったかのような錯覚に陥ってしまう。

頭に乗せた花飾りも美しいけれど、その花が霞んでしまうほどに圧倒している。


「まるで王子様とお姫様みたい…。」


私が声を漏らすと、男性がこちらを見て微笑んできます。あまりの不意打ちにどうしていいか分かりません。ついぽつりと出てしまった独り言は、二人に聞こえてしまったようでした。


「そうだと言ったらどうします?死神のお嬢さん。」


周りにいる三人の死神(と翼)は全員男性なので、お嬢さんは私のこと。やはり聞こえてしまったようです。思わぬ失態に耳に熱がこもります。


王子様(仮)に不快な様子はなく、ただ静かに微笑んでいます。お姫様(仮)はその王子をチラリと横目で見て、やれやれといった様子です。


「王子様…とお姫様、なんですか?」


私は大胆にも再確認をしました。

するとお姫様(仮)が意外にも答えてくれたのです。


「自分の隣にいる方は、正真正銘…ミステリアの王子です。」

「初めまして。噂には聞いていましたが本当にこの森に死神がいるとは。」


そう言いつつ手を差し出してきます。

握手という事でしょうか?


「こちらも大国の王子と会うとは思ってもみなかった。今日はハプニングが多いな。ところで、何故分かった?俺達の事が。」


何故分からないのかが解らないとでもいうような間があり緊張したものの、すぐに王子はにこやかに返答をくださいました。


「内に秘めた感情や魔力の流れ、溜め込み方といった所ですかね。感情を理解し、ある程度似た形をとってはいるものの、本物ではないように見受けられましたので。」

「そこまで視えているのか。噂に聞く通り、魔力が強いのだな。」


フィジーさん曰く、本来死神が見えるのは死期が近い人や動物なんだそう。

でも中には死神が持つオーラを察知したり、死神を視ることが出来る者がいる。それがこの二人みたいな魔力の強い人という訳。


私はミフィの体なので見えているだけ。特例みたい。


「噂?どんな噂ですか?興味があります。」

「王子、その辺にしておきませんか。自分達はここへ散歩をしにきた訳ではないのですよ。」

「…対した用事ではないでしょう。それよりこちらが気になります。」

「…分かりました。ですが、約束の時間に間に合うようにしてくださいね。」




「それで、私の噂というのは。」


あまりにも真剣に聞いてくるので、少しルイスも躊躇ってるように見えます。多分、王子が世間体を気にしているのがわかるからでしょう。

あまりいい噂ではないのかもしれません。


「女性が苦手だと聞いたが、それはただの噂だったようだな。」

「確かにあまり好きではありませんね。」


私やお姫様(?)と普通に会話していますし、応対は出来るみたいですね。

大国の王子とあれば数多の女性が憧れるでしょうに。きっと対応するのは大変でしょう。


「時計塔がお気に入りで、そこに妃の候補がいるとか。」


チラリと隣にいる女性を見つつフィジーさんも噂を伝えます。


「時計塔…一度見てみたい。」

「お嬢さんならいつでも来れるんじゃないかな?今度来てみるといいよ。あそこからの眺めはとてもいいからね。」


「噂に聞く王子はもっと冷酷だったのだが、それも違うようだ。噂とは怖いものだな。」

「それはあながち嘘ではありませんね。今はリラックスしていますが普段はあまり喋りませんよ。」

「そうかな?」


リラックス?

国境近くなのにですか。


そういえばミステリアとセミリア・ファルは仲がいいんでしたね。納得です。

それに自然豊かな場所ですから、マイナスイオン等が働きかけているのかも…。


「…ですから結果的にそう見えてしまうのかもしれません。」

「全然そんな風に見えないね。なんだか不思議だなぁ。」

「そういう君は死神ではなく翼ですね。仲間同士仲良くしませんか?」


王子も翼という事ですね。

翼と階級は関係が無いのでしょう。

どちらかというと仕えるイメージがあるので意外です。


「勿論。俺は藤色の翼…まだニックネームみたいのはない。宜しく。」

「私はクリアに近い水色でね。…氷結の片翼、なんて呼ばれているよ。」

「片方しかないの?」

「その通り。」

「片方なんて珍しいんじゃないですか?」


シャンヌさんもフィジーさんも両翼がありますし、どういう事でしょう。


「珍しいね。今まで私達以外で聞いた事がないよ。」


‘‘達’’?


「達、という事はもう一人いるんですか?」

「それは自分です。」


まさかのお姫様(?)でしたか。

二人で一緒に行動しているのもそれが理由なんですね、きっと。


「私が右の翼で」

「自分が左です。」


王子の言葉を遮るようにフライングで答えるお姫様。そういえば名前を聞いてないです。


「あの、私は…ミフ…と申します。失礼ですがお名前は…。」

「そんな畏まらなくて大丈夫ですよ、ミフさん。私はミステリア・スタラクティティス・パグ・クルスといいます。クリスって呼ばれますが個人的にはティと呼ばれたいです。」


な、長い名前…!


「ならティと呼ぼう。俺の名はルイスだ。後ろにいるのはシャンヌ。」

「フィジーだよー。」

「自分はクレイスです。クリスと呼ばれると混同してしまうのでレイと呼んでください。」


ティさんにレイさん。二人共素敵な名前。


「王子、そろそろ向かわないと間に合いません。」

「そう、じゃあ私達はこれで。どこかでまた会えたらいいね。」


そう言い残して二人は森の奥に消えていきました。


「あの方向はセミリア方面だな。」

「もしかしたらイア女王に会うのかもね。」

「お忍び?」

「かも。なんか凄いところで会っちゃったね。」


「これからどうするんだ?さっきは行き先を聞き損ねてしまったからな。」

「ミステリアに行ってみたいです。」

「王子達と逆方向に進むってわけね。じゃ、行こうか。」


四人で話をしつつ、歩き始めます。


木々が揺れ木の葉の擦れる音。落ちている葉を踏みしめる音。鳥が囀る音。どれも耳に心地よく入ってきます。

時々小動物が横切ったり、木の上にいたりしました。

武器がない今、狩猟目的でくる人が少ないからでしょう。


…武器がない?


なら先ほど手に持っていた鎌は一体?


「ルイスさん。」

「何だ?」

「イア王女が現女王という事は、武器形成不可の魔法がこの世界に掛かっているという事ですよね?」

「あぁ。そうだ。……なら鎌が何故存在しているのかが気になるのか?」

「そりゃそうだよね。ばっちり鎌だもんね。ルイスの武器とか。」


ゆっくりと歩きつつ続く会話。

それはとても重要な事の筈なのに、何故か三人は動じません。


「俺達の武器は、人間に‘‘危害’’を与えるものじゃないからだ。」


ルイスさんが続けて言います。


「あの魔法…ごく僅かの人にしか内容は知られていないが、どうも武器になりうるもの全てを消す、或いは生まれないようにするという物ではないらしい。」


ど、どういう事でしょう。

私が聞いた話と違うようなのですが。


「危害を加えるだけのもの、例えば爆弾なんかは製造出来ない。けど日常生活で使う包丁や鋏なんかは今も存在し続けてるんだよ。」

「ただ、人間は傷付けられないようになっているがな。薬も同様だ。」

「副作用は何故か現れない。毒物と呼ばれたものは凄い効き目の薬に。ある意味あべこべだよね。」


イア王女の使った魔法がそんな効力を持っていたなんて。

人を傷付ける武器は消滅する。

人に有害なものは有害な部分のみ消える。


そんな力、どうやって身につけたんでしょう?


そして魔力が存在しているということは、魔法も存在している。武器がない今、強い力を持つのは素手で戦う武闘家や、魔法を使える者になる?


それではあまり意味がないのでは…。


消滅したのはあくまで人間に危害を与えるモノ。力じゃない。

根本的な問題は解決していない。


「不思議な事に、この国の人間同士の争いは少なくなった。」

「イア女王の努力の成果…なのか、それも魔法の力なのか。何にせよ凄い話だよね。」

「他の国は…。」

「元々平和主義のこの国とは違い、実力主義の国ではまだ争いが続いているな。武器で無いものを武器化する研究をしている国もあるという。」


武器を消しても生まれてしまう争いは、どうやったら止められるというのでしょう。


「ミフ?」


歴史は繰り返される…?


「大丈夫?」


人の気持ちが変わるまで…変わるからこそ、無くす事が出来ない?


「体が……て…るぞ…!?」


ならば私達が今していること、感じている事は。


「…た逢………を…し…に…。」


無駄?


段々と掠れていくルイスさんにフィジーさんにシャンヌさん。なのに離れていくのは私。






《 さ よ な ら 》?





プツンと糸が切れたように視界が真っ暗になって、私は深い海に落ちていきました。

海というには暗くて、そして海よりも冷たい。

それはどちらかと言えば、沈みつつ凍りつく感覚。


このままでは永久にこの闇の中に留まる事になると、私の中の何かが警告を発しています。


どうやらあの世界に長く居すぎたようです。ミフィの体に無理やり定着していた私の魂は既に限界を超えていたようでした。




結局ーー分からず終い。

私のことも、武器のことも、彼らの事も、あの世界の事も。


もう少しで鍵の事も、もっと分かるかもしれなかったのに。


鍵?


そういえば、ルイスさんが言ってましたね。


『帰る方法もきっとその能力だな。』


単純な事なのに、どうして気がつかなかったんでしょう。


私がその事に気がつくと、自然と手のひらに鍵が握られていました。

そしてその鍵を持つ手は今、とても温かいのです。

徐々に冷たくなっていくのは時間制限があるからでしょう。


私はすぐに鍵を構えました。


来た時と同じように。


そして目を閉じましたーーー。








目をゆっくりと開くと、目の前は見慣れた床でした。

妙に体が怠く、起き上がりもせずに考えます。


新たに発覚した私の…鍵の能力。

あれは一体何だったのでしょう。


考えれば考えるほど深みにはまっていき、徐々にまぶたに重みを感じ、ついには瞳を閉じて眠りに誘われ、気づけば落ちて行くのでした…。

今回のタイトルはちょっと凝りました。

本文書き終えてじっくり考えようと思ったら割とすぐに浮かんだんです。


てな訳で今回のタイトルは


《思考は夢現》


です。


思考は《ゆめうつつ》


が(本当の)正しい読み方です。


思考は夢でしてるのか現実でしてるのか分からない状態の美麩ちゃんを表してます。

また、帰還後のぼーっとした感じを表してもいます。


そして、このタイトルは


思考は《むげん(無限)》


とも読みます。本当はゆめうつつですけどね。


こう、いっぱい考える事が出来て頭がいっぱいになる感じですね!そのせいで美麩ちゃん寝ちゃいました(笑)


ちなみにタイトル没案は

「アリスのように」でした。


アリスと違って夢じゃないですからねぇ…。


ではまた次回、お会いしましょう!

今回は長い後書きにお付き合い頂き、また最後までお読みいただきありがとうございましたッ!

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