ドキドキ☆ルンルゥン
こちらはF班。皆さん食事も終えて穏やかに会話を楽しんでらっしゃいます。
僕はといえば心臓の音を気にしすぎて、会話に入ることが出来ずただ相槌をうつばかり。何故ならば。
「色々と話してきましたが、次は何を話しましょうか。」
なんて言う、あの人の笑顔が眩しすぎるのです。
「好きな色なんてどうですか?私、興味があります。」
真里亜さんが楽しそうに笑っています。
僕も同じように笑えているでしょうか?
ぎこちない笑い方をしていないといいのですが…。
「私は、青が好きです。」
カインさんが控えめに答えています。
それに対して真里亜さんが理由を問います。
カインさんによれば、青は空の色、そして海の色。そんな自然に目にする素敵な色だからだそうです。
カインさんの髪の色が青なのも、それが理由なのでしょうか。不思議です。
真里亜さんは、桃色が好きだそうです。
女性らしい色ということや温かい色だからと言っていました。
真里亜さんにとても似合うと思います。
緋威翔さんは、勿論緋色です。
トランプの背の色であり自身の名前にも使われている馴染みがある色だからだそう。
僕も緋色が大好きです。特にこれというような理由がある訳ではありません。
ただ、緋色に惹き込まれたんです。
でもそんな事は言えませんでした。
「僕…私は…黒が好きです。」
適当に目に入った自分の髪色が好きだという事にしてしまいました。正直になれないのは、私の悪いところでもあります。
「黒は、緋色の次に好きです。」
そんな風に笑いかけられたら勘違いしてしまいます。どうか、どうか。
「あの、皆さんはどの楽器が好きですか?」
勇気を出して、話を振ってみました。
ばくばくと鳴る心臓の音。今はテンポ120くらいになっているでしょうか。
目の前にいる貴方がこちらを見る瞬間、見透かされているような気がして火が出たように顔が熱くなってしまいました。はうぅ。
慌てて両手で隠しても、収まりません。
どどど、どうしましょう。
「やっと話しかけてくれましたね。僕はバイオリンが好きです。演奏するのは苦手なんですけど。」
バイオリンを優雅に演奏する緋威翔さんの姿が浮かんできて、ついウットリしてしまいます。いけないいけない。こんな表情をしては。
「私はフルートかな。」
「私はクラリネットが好きです。そういう璢胡さんは確か楽器が武器でしたね。どの楽器が一番好きですか?」
どの楽器もと答えたいですが、そうも言ってられません。私が好きな楽器は…。
「ドラム、です。」
だから普段はスティックを携帯しているんです。長い間使っていたのでリーチや威力も分かりますし。
「意外ですね、貴方みたいな繊細な方があの大きな楽器を好むのは。」
「ドラム…!?かっこいいです、璢胡さん!」
「どんな曲を演奏したりするんですか?」
「そ、それは…クラシックからロックまで様々です。皆さんが聴きたい、演奏したいというものを演奏してきましたから。」
なので僕自身が何を演奏したいのかを聞かれると少し困ってしまいます。
ある時はピンチヒッターとして、休んだ子の代わりをしたり、コンサートに出たりしていましたが、どれも指揮者や演奏者から提示された曲。僕からこれをと言った訳ではありません。
「是非聴いてみたいですね。色々な楽器を演奏しているのを。」
「ま…またコンサートがあれば、お呼びしますね。」
「私も呼んでください!」
「私も。」
「えぇ、喜んで。」
こうして喜んでくれる、楽しんでくれるから音楽はやめられないのです。演奏が終わった後の拍手が心の支えーー。
「そういえば、食事を終えてから時間が経ちましたね。デザートでも食べますか?」
「いいですね。頼みましょうか。」
そう言ってメニューを開き、隣の真里亜さんと一緒に見る緋威翔さん。
カインさんも緋威翔さんからもう1つのメニューを受け取り見せてくれます。
スイーツのページには色とりどりのスイーツがうつっていて、どれもとても美味しそう。
でもあまり頭には入ってこないのです。
視線こそ移さないものの、意識が目の前の2人にいってしまっているから…。
「デザートは何にするか決めましたか?璢胡さん?」
そんな中急に声をかけられて動転しました。
「ぼ…っ、わ、私はこのぱ、ぱふ…パフェを。」
何回かんだ事でしょう。言い終えた後も落ち着きがないのが自分でもわかります。
それとついつい一人称を僕、にしてしまいます。あの人の前では私にしなくてはいけないのに。
「真里亜さんはどうします?」
「私も同じものを。」
「カインさんはこれでしたよね。」
一人一人にどのメニューにするかを聞いて、すぐに注文する緋威翔さん。常に気配りを忘れない素敵な人…。
「はい、ご注文承ります。」
「苺パフェを二つとバニラアイスを一つ、それからティラミスを一つ。以上です。」
あぁ、僕は貴方の側にいるだけで幸せになれます。貴方はそれを知らないでしょうが。
貴方と目が合うだけで…恥ずかしくなって目を逸らしそうになってしまいます。でもそんな事をしたら悟られてしまいます。
だから私は貴方と目が合った時、そっと微笑むんです。それなら自然でしょう?
「申し訳ありません。デザートは全て品切れとなってしまいまして。」
えっ?
「デザート全てが、ですか?」
「はい。申し訳ございません。」
カインさんが驚いて黙り込んでしまいました。それもそのはずです。デザート全てが品切れになってしまっていたのですから。
「そうですか…それは残念です。なら別のものを」
「少々お待ちいただけますか?」
ウェイターさんが襟元にあるマイクを近づけなにやら話をしているご様子。一体何を話しているのでしょう。
「大変申し訳ございません。たった今、ドリンクを除く全メニューのオーダーが出来ないようでして。」
「どういう事ですか?事情を教えてください。」
「えぇと、その…。」
全メニューがオーダー中止?
そんな事、今までに聞いた事がありません。これは何か深い訳がありそうですね。
辺りを見れば次々とお客さんが席を立ち会計へと向かう姿が見えます。今からお店に入ろうとしていた方々も事情を聞いたのか去って行きます。
そのせいで会計場は大行列。
そんな中、僕達とクラスメイトさん以外にテーブルに残る1グループのお客さんが居ることに気がつきました。
そのグループは大人数用の席に2人だけで座っていて、テーブルの上には数々の料理がまるでパーティのように乗っかっています。
どうやらこの方々がこのお店の全ての品を頼んでしまったみたいです。こんなに2人だけで食べられるものでしょうか?
「只事では無いようですね。」
「えぇ。他の班も気にしているみたいです。」
席を立っている人もちらほら伺えます。
このファミリーレストランで一体何があったんでしょう。
僕は今、非常に怒っています。
幸せな時間を妨害されたこと、それと皆さんと食べるはずだった甘味を2人で独占している事。ゆ、許せません。
こうなったら直接話してやるのです…!
今回は璢胡ちゃん視点でした。
次は歓迎パーティに来なかった子の回です。
5/3 誤字訂正しました。
因みに、璢胡ちゃんは初期僕っ子設定だったので、この回では一人称があやふやになってます。




