三人の鎌田
璢胡ちゃん達の番になり、私は自分の席に座った。ほっと一息つくと目の前が鮮明になる。焦りすぎて視界が狭まってしたのがよく分かった。
「ひひ~?」
「静かにしててね。冷。」
鞄に収まっている冷と会話している内に璢胡ちゃん達が前に立った。私たちから見て右から璢娘さん、璢夷さん、璢胡ちゃん…年齢順かな?身長は璢娘さんと璢夷さん同じくらいだし。
「出席番号順だったな。」
「うん…」
「オッケー!」
三人共、随分性格が違うんだなぁ。
璢娘さんは明るさを振りまくタイプで、璢夷さんは冷静沈着で周りを落ち着かせるタイプ、璢胡ちゃんは不思議ちゃん。
「まずは俺からだな。俺のunarmed armはこれだ。」
そういって出したのは万年筆。
よくお爺ちゃんが使ってたなぁなんてしみじみ思い出す。私達の歳で使う機会は少ないけど、馴染み深いものかな。
「俺はこの万年筆だ。ペンそのものが武器になっているようだな。」
そう言ってこちらに見やすいように掲げてくれる。
万年筆の握る部分の色は黒で、書く部分は金色。一般的というか、万年筆を想像した時に真っ先に浮かぶ色のものだった。
「他にも能力があるが、まぁそれはまたの機会にでも話そう。時間もあまり無いしな。」
璢夷さんは発表を終えると教卓から離れた場所に移動した。璢胡ちゃんを目立たせるためだろう。今度は璢胡ちゃんが話し出す。
「私のunarmed armは…楽器。」
「どんな?」
すかさず質問が入った。私達は一度見ているけど、中には見てない人もいる。詳しい説明が必要だろう。
「基本的には何でも…。でも僕は打楽器が好きです。」
「へぇ~…で、能力は?」
「…衝撃波、とか。」
「「!?」」
「打楽器は衝撃波を出します。そして弦楽器は音を飛ばします…そして吹く楽器は超音波…他にも楽器毎にあります…」
時に音で攻撃、時に衝撃波とかで衝撃吸収して防御、その他支援系など色んな面で活躍が出来そう。
それより、多種多様な楽器を演奏できるなんて羨ましい。移動とかの関係もあるし、普段使う武器は限られてくるんだろうけど機会があったら色んな楽器の音色を聴いてみたい。
「じゃー次あたしね♪あたしは、リボンとかボタンとかがunarmed arm。そーゆーのを自由に動かしたり出来るの!」
璢胡ちゃんの後ろからにょーんと現れた璢娘さんがちゃちゃっと説明をしていく。
武器がリボンとかボタンということは裁縫が得意って事かな?可愛らしい洋服も自作だったりして。
「はい、終わり♪」
「姉さん…いくら何でも勝手すぎないか?」
「いーのいーの♪気にしない!」
「何がともあれ…席につきましょう。」
鎌田家っていつもあんな感じなのかな?
これまで武器が暴走することなく平和に発表が進んでいる。順調順調。
「お…終わったのか…じゃあ次!輝生!」
「…めんどくさっ。」
呼ばれた後すぐに面倒だと口にする男性。静さんだ。昨日も終始ダルそうにしているけど今は更にダルそう。
「面倒くさいじゃない!ほらそこに立って発表しろ。」
「発表してどうなんの?」
うわ…先生に喧嘩売ってるし。こ、怖い。
先生もどうしようかと考えている中、一人が静さんに声をかけた。
「…ちゃんとやんなきゃ駄目…」
「何だよ、別にいいじゃん。」
まさか政宗さんと喧嘩するの…?
ピリピリとした空気が一瞬流れる。
喧嘩を売られて買うような人じゃないけどやっぱり心配だ。
「…分かったよ。」
だけどその心配は無用だったようだ。
すぐに静さんが折れたから。こんな人を一瞬で折る政宗さんって一体?
…で、先生に喧嘩売った静さんが取り出したのは、ゲーム機。
「お前また喧嘩売る気ー…」
学校にゲームを持ち込むなんてと少しお怒りの先生。でもこれは仕方が無いんじゃないかな。
「これが俺のunarmed arm。」
「へ?」
やっぱりゲーム機もunarmed armになるんだ。
「能力はゲーム化。」