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blanket  作者: 璢音
再び戦いへ
62/139

捜索

それぞれが今やるべきことを確認し部屋を後にしていく。私達C班は学校に残り、また学校が襲われる事があれば速やかに対応出来るようにと対策を練る事になった。


今回はD班から聖夜さんも合流し共に行動をするみたい。B班は璢娘さん、璢胡ちゃん、そして花菜美さんが三人で琴春さんと宏満さんの捜索を、残りのB・C班メンバーは各自情報収拾をする事に決まった。千佳ちゃんのカメラや、静さんのゲームの能力、そして鎌田姉妹の連携があればすぐに見つかるんじゃないだろうか。


皆が部屋を出て行くのを見送ってから私達は話し合いを始めた。


「さて、防衛方法ですが…」


「僕を呼んだのは、屋上や空から侵入者や異変を探らせる為でしょ?ならセイラと一緒に屋上で見張りをしているよ。」


「おー、なっる!そういうことかぁ!」


「…そういうことです。セイラ、頼みましたよ。」


「任せてください。」


息がぴったり合っているし、話も凄いスピードで進んでいく。普段から連携をとっているこの人達にしてみればこれが普通なのかな。

私には最初から作戦が決まっていて既に話した後なんだったんじゃないかって思えてくる。ケインさんの反応からそれはないって分かっているのだけれど。


「ノエルさん。貴女は僕達と一緒に校内を警備すると共に情報を整理しましょう。花菜美さんについても話し合わなくてはなりません。」


「そうね。一番私達があの子と話したりしていて状況が分かっているしそれがいいわ。」


「なら私とケイン、そして受付の二人を探して四人で情報収集をしてみます。氷椏さんはパソコン室にいるんでしたね。先に合流して話をしておきましょう。ケイン、幟杏さんを探してきてくれますか。」


「分かったよ。カイン。」


こうして私達もバラバラになり、担当の仕事をすることになった。

校内は至って平穏で、前回戦った形跡も残っていない。私達が通う学校そのもの。

ただAチームがまだ帰ってきていないことや皆が学校外へいってしまっていること、前回の戦いにより教師もむやみに廊下を歩かなくなったことによりいつもより静かではあった。

自分たちの足音が廊下に響いているのが気になる。それ以外の音があまり聞こえないと何故だか不安に感じた。私以外の二人は何やら難しそうな顔をしながら周りを見て歩いている。二人の表情に雲が掛かっているのをみると考えているのはあまりいいことではなく、その対策法も浮かんではいないようだ。


「ねぇ。」


ふと足を止めたノエルさんが私達を止めた。こちらをじっとみている。

私達が言葉を発する前、急いでいるかのように早口でノエルさんは続けた。


「花菜美さんのことだけど…。緋威翔、あの子と共に行動してみてどうだったの?何か不審な点とかはあったの?」


緋威翔さんは即座に首を横に振る。


「いいえ、特に不審な点はありませんでした。武器が暴走することも無かったですし。ただ…宏満と戦っている時に一瞬見せた表情が気になりはしましたが。」


何を話しているのかがよく分からない。今ああして私たちに協力してくれている花菜美さんに不審な点などない。なのに疑っているのだろうか。確かに彼女は私たちと同じ生徒ではない。だけれど、あの子は悪い子なんかじゃない。それはわかる。少し恋情には注意しなくてはいけないけれど。


「あの子を璢娘や璢胡と一緒に捜索に行かせて大丈夫なの?私達と行動を共にした方が監視という面でもよかったんじゃないの?あくまであの子は私達が受けた依頼の標的。管理下から外れてしまっている今暴走したらあの二人に止めることが出来る?」


「あの二人の力は、私が保証します。」


「月華…。」


以前のバトルで見せた二人の連携。紫綺さんの技によって効力は失われてしまったけれど、あの力が機能していなかったらどうなっていたか分からない。二人はアイコンタクトをするだけで次の行動を合わせる事ができる。そんな気がした。

花菜美さんが攻撃型の武器を持っていることは知っているけれど、花菜美さん一人に対しあの二人が負けるはずはない。


私が返答した後、暫し沈黙が続いた。私の言葉を聞いて俯いたノエルさんとそれを見守る緋威翔さん。

二人が何を考えているのかは全く想像が出来ない。だけどこの場に変な空気が流れていることは分かった。


「花菜美さんはあの二人に任せて大丈夫です。彼女が理由もなくあの二人を攻撃するなんてあり得ませんから。…いえ、理由があってもしないでしょう。握手をする姿を見ていましたが、あれは完全にお互いを信じている目でした。僕には分かります。」


「…普段ポーカーフェイスの貴方が言うんだから本当なんでしょうね。ほんと、知れば知るほどに分からない人だわ。緋威翔って。」


緋威翔さんの一言で空気が変わったのが分かる。呆れ顔で手を左右にだしやれやれといった様子で息を吐くノエルさんはその言葉で納得したようだった。話は終わりまた足を進める。


カインさんが向かったコンピュータルームの近くまでやってくると、宣言通り氷椏さんが合流した状態になっていた。ケインさんはまだ幟杏さんを見つけられていないのだろう。姿は見当たらない。


「情報収集はあの方々に任せ、一階へ向かいましょう。敵が来るならよっぽどのことがない限り入り口など一階から来るでしょうから。」


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「ここが第七教室かぁ。初めて来たけどそんなに広くないし、書類が多いな。」


「マスター、人の気配を感じます。気をつけてください。」


「大丈夫さ、心配には及ばないよ。すぐに帰るからね…。今は外に人が流れているし、ヴァルの力を使えばまず見つからない。っと、あったあった。これを見たかったんだ。」


「マスター、それは…?」


真新しい紫の表紙の分厚い本を手に取りパラパラと捲る(マスター)

漆黒に染まったその目は今好奇心によって輝いていた。

闇に灯る一筋の光を見ていると、罪悪感がこみ上げる。どこまでも無邪気…それ故に恐ろしい。

自分がここに存在しているから、このお方はこんな風になってしまったのだろうか。


分厚い本は後にアルバムだということが判明した。そこにはまだ一枚の写真しか入っていない。写っているのはとある女子を中心に笑うクラスメイトの顔…そう、それは今期の新入生入学式の際に撮った写真だった。


「ふむ。この子か。中々力を持ってそうじゃないか。でも、うちのエースには勝てないね。」


「おっしゃる通りです、マスター。まだ力の制御がやっと出来るくらいの力…武器を使うことに慣れていない彼らが勝てるはずはありません。」


「油断は禁物だよ、ヴァル。いつ力が解放されるか分からないからね。それにこの子の前世は」


「イア姫、でしたね。」


楽しそうに微笑みを見せてから部屋を眺めるマスター。私はそれを横から眺めている。このお方が考えている事は全てお見通しだ。

私の力を使えば、簡単なこと。


写真中央に写るあの娘の名は鏡 月華。前世はこの国の姫であるイア。武器は冷と呼ばれるブランケット。能力は生物化……そしてもう一つ。まだ覚醒はしていないが、確かに波動を感じる。

生前イアが大切にしていたアレが、第二の武器だろう。今はだいぶ深くにしまってあるようだ。


武器所持者としてはまだまだ未熟、あのお方の足元にも及ばない。


注意する事は、第二の武器が使用可能になった際の行動。下手に行動すればこの私ですら負ける。彼女は類稀なる武器を二つも所持する事になるらしい。


「ヴァル、もしかしてこいつは……」


「翼らではありませんか…!奴らも転生していたとは…。」


今回、全員同じ枠組みの中いるとは厄介な。奴らは一人一人が才能と確かな力を持っているというのに。


「それにナトさんの義理の息子…こりゃあ協力してくれそうにないや。」


パタンと閉じられた本から放たれる風がマスターの前髪をふわりと上げる。窓から差し込む光が主を照らすが、目に入るのは光を受けて濃さを増す影。


「あとは……そうそう、これこれ。」


アルバムを置いてから書類をせっせとかき分けていた主が、ひとまとまりに紙をまとめて笑みを溢しながら満足そうに書類の束を掲げた。

見れば生徒の能力についてや過去に起こった出来事などを綴った日記のようなものだった。生徒の誰かがわざわざ書いたのだろう。コンピュータの文字では無く、ボールペンを使っての手書きのようだ。字から察するにこれを書いたのは女子だと思われる。


「よし、欲しかったものは手に入った。帰ろう。ヴァル。」


「仰せのままに。」


自身の翼を広げ、スピアを地面に突き刺す手前で力を解放する。ゴォ、というように風が舞い、主はふわりと浮上した。

そのままもと来たように窓から校舎を後にする。主の腕には、先程の書類が抱えられていた。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「………特に侵入者はいないわね。ま、当たり前といえばそうなのだけれど。」


退屈そうに伸びをするノエルさんと慎重に辺りを見回す緋威翔さん。そして何を話していいのか分からない私は、一階付近をうろうろしていた。粗方情報はまとまり、今後花菜美さんの件をどうするかという話も終わった。


恐らく、彼女は認めて欲しかったのだ。

ただ彼から一言が欲しかっただけだったのだ。それがないから彼女は怒ってしまった。色々な事を試し高めてきたにも関わらず、認めてもらえなかった事が許せなかったのだ。

なら、認めさせればいい。病院にいる彼に。

ただ今は状況的にも無理なので、一件が落ち着いてから解決させよう。それが私達の答えだった。





誰もいない一階入り口付近で一旦待機すると共に、他の人たちの状況を確認すると緋威翔さんが言う。私たちはそれに従い一時停止する。入り口には見事な花や、トロフィーなどが飾られたガラス張りのケース、壁には賞状。扉の上にはステンドグラスの窓がある。

いつ見ても清潔で、綺麗な空間だ。


「それにしても誰もいないわね…」


辺りを見てため息をついたノエルさんが、懐から何かを取り出した。猫の模様のそれを開きじっと見ている。


「何か痛いと思ったら睫毛が目に入っていたのね…」


どうやら鏡みたいだ。可愛らしい鏡である。


「可愛い鏡ですね。」

「そうでしょう。私のお気に入りなの!」


そう言ってノエルさんは鏡をこちら側に向けてくれた。鏡は上下共についていて、薄っすらと曇りガラスのような材質のもので端に猫のマークが入れられている。猫のマークの部分もしっかり顔が見えているので、この部分もちゃんと鏡になっているようだ。


鏡をみていると隙間から後ろにいる緋威翔さんが写っていることに気がつく。


「何しているんですか。ちゃんと周りを見ていてください。」


こちらへ寄ってきた緋威翔さんにたしなめられてしまった。ノエルさんはしぶしぶと鏡を閉める。


………閉める瞬間本のようなものを抱えた男の人と、羽が生え甲冑を着た女の人が見えた気がした。


驚き声にならない叫びを上げた私だったが、あれは気のせいだろうか。それともあの鏡には何か秘密があるのだろうか。

写った人達は誰だったのか。

何故私に見えたのだろうか。


あまりにも一瞬の出来事だったので、見間違いかと思った。


でも………あれは…


私は二人には何も言わず駆け出す。


「どうしたの月華!?」


向かうは屋上だ。セイラさんと聖夜さんに聞けばこの二人の正体が分かるかもしれない。


私は一歩も休まず、階段を駆け上がり屋上へ向かった。


息を切らせ重い扉を開く。ギィという音と共に目の前に青空が広がった。

空に浮かぶ聖夜さんと、屋上から辺りを見渡すセイラさんが即座にこちらを向く。


「どうしたんですか月華ちゃん。」


「侵入者でもいたの?」


二人の言葉の投げかけに即座に答えられない私は、一度呼吸を整えてから話し出す。

こういう時は急がば回れ、だ。


「今、この辺に翼の生えた女の人と、本を抱えた男の人はいませんか!?」


余りの慌てぶりに状況を察してくれたのだろう、二人はすぐさま監視に戻る。


「セイラ、ここは任せたよ。僕はこの辺りを探してみる。」


「分かりました。お気をつけて。」


戦場に向かう夫と見送る妻のような会話を交わし、聖夜さんは白い翼を広げて飛びたつ。

セイラさんは経緯を教えて欲しいと辺りを警戒しながら言った。


「さっき、ノエルさんの鏡を見た時に窓側が映っていて更にそこに翼の生えた女の人と、本を抱えている男の人が見えたんです。」


「翼の生えた女性…?聖夜と同じ能力の持ち主なのかな。」


基本的には、同じ能力を持つケースは稀。同じ武器を二人で持つことが珍しいのと同じ理由だ。

但し、同じ分類の物を武器として扱うというケースは多い。


例えば、千佳ちゃんの武器であるカメラ。写真を撮る事が好きな子が何らかの影響で武器を生み出した場合、カメラになる確率が高いだろう。

能力は、持ち主の感じた事や思っている事に左右されるので別のものになる。


カメラの場合なら、千佳ちゃんはうつしたものを実体化させる事ができる。

他の人がカメラを武器にしたなら、何かを写す事に特化したりシャッターをきることによりカメラに写る範囲の時を止めるなど、考えられる能力は様々だ。


少しの間、セイラさんと屋上から校庭を見下ろす。

不審な人物の姿は見えない。

羽が生えた女性は空からでも帰還が可能だけれど、男の人の方は無理だろう。

となれば何故不審な人物が見つからない?

やはりあれは見間違いだったのか。


「ん…あれ、クマちゃんが反応してる。」


セイラさんの武器である熊のぬいぐるみがひょこひょこと先ほどまで動いていたのだが、ある一点の方角を見てピタリと止まってしまった。空に何か気になるものでもあったのだろうか。それとも何か他に興味を惹くものがあったのだろうか。私はぬいぐるみではないので分からないが、クマのぬいぐるみは一歩も動く気配がない。


「クマちゃん、どうしたの?」


このクマは私の冷と違い喋ることはしないし、意思表示も殆どしない。

ただセイラさんの思うがままに動き命令に従う。

従順なしもべという表現が近いだろう。実際は小さい頃からの友達のように見えたが。


「ギィ」


屋上の扉の開く音だ。

慌ててみると、私を追ってきた二人の姿があった。


「いきなりどこに行くかと思いきや…。ここにいたのね。」


「おや、聖夜さんがいませんね。見回りですか?」

「今、羽が生えた女性と本を抱えた男の人を探しに行っています。」


「ひー。」


大人しく蛇のように腕に巻きついていた冷が鳴く。

魔法の絨毯のようにふわりと持ち上がるとそのままクマのぬいぐるみの方へ近づいて行った。


何かをしようとしている?


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「あれ。イア…じゃなかった。月華ちゃんだっけ?とそこにいる娘の武器には僕の姿が見えるようだね。」

「えぇ。そのようです。マスター。」


第七倉庫から抜け出しそのまま帰るのは勿体無い。折角ここまで来たのだから広い校庭や裏庭などを見ておこうと思い、ヴァルに術を掛けてもらい空中散歩を楽しんでいたところ、面白いものを発見した。

それは月華の武器である毛布らしき生命体と、月華の仲間である娘。そしてその武器のクマのぬいぐるみだった。


空には翼の生えた男がいる。あれは確か……


「セイヤだ。懐かしいなぁ。随分丸くなっちゃって。」

「はい。あの頃の影すら残っていませんね。」


前世の記憶を持つ僕にはほんの数日前のように思える日々。

禁忌を侵して堕ちた者。そう、彼はそうだったはずだ。

…となればこの娘は城に仕えていた侍女か。

まだあの事を無意識に思っているんだな。武器にそれがあらわれている。

似合いもしない真っ白な翼。当時名を轟かせた翼の紛い物。


想いを寄せた少女に手を伸ばすも籠の中にいる自分では、触れることすら出来ない。

ーー触れたら、壊してしまうから。


悔しかっただろうね。悲しかっただろうね。

怒り狂うのも仕方が無いね。


そうして自身の翼を黒に染めた。

でも漆黒には程遠くて曖昧な色。完全な黒になれなかった彼は余計に自身を苦しめた。


「いっそエクソシストにでも祓われた方が、幸せだったかもね。彼。」


毛布とぬいぐるみに目を落としながら、僕はぽつりと呟いた。

前世の事なんて今言ってもしょうがない。それに今の彼らには記憶がない。

知らないまま生きている方が幸せなはずだ。


「本物の翼にはどうやったって勝てやしないのだから。」


緋色の帽子を被る男…緋威翔を見る。

それにしてもリスィとそっくりだ。

流石光と影…と言ったところか。


「彼も丸くなりましたね。」

「そうだね。翼を真っ赤に染め上げた頃とは別人だね。彼は後悔していたのかも。」


知らず知らずの内に、前世の影響を受けて最悪の状態を回避しているようだ。


何を考えているか分からないのは昔と変わらない。表情から読み取る事が出来ないんだ。リスィの能力でなのかは知らないけれど、ヴァルも彼の心は読めないと言っていた。


「猫娘はまたそのポジションか。繰り返さないといいね。」

「あの娘の事です。きっと繰り返します。」


猫は気が変わりやすい。


当時どこに所属する事もなくフラフラ彷徨っていた猫である彼女は魔力を所持しており、人に姿を変える事が出来た。


その姿で人を誑かし、からかっていた。


そんな中セイラに出会い、拾われ育てられたとか。

それまでの過去を忘れ新たな生活を楽しんだのは束の間。

刺激が欲しくなった彼女はセイラを置いて戦場に向かっていく。スリルを求めて盗賊へと成り下がった猫。その悪行はセイラにも届いた事だろう。


その時彼女は何を思っただろうか?


「マスター。毛布が接近してきます。」


思い出話を展開させていた僕の肩に優しく触れ、ヴァルは言った。


見ればクマの元から毛布が離れ、こちらに近づいてきている。


「いいよ。面白そうだし、触れてみようか。」


分かりやすく言うなら、風に飛ばされた洗濯物のように思ったよりも早い速度で毛布は迫ってきた。

こちらも少し距離を詰め、毛布に触れてみる。すす、と撫でてみると毛布は嫌そうに離れた。

僅かに残る、人の熱。きっと月華のものだ。


「ひひ!?」


触られた事がよっぽど嫌だったのか体をうねり毛繕い?のようなものを始める毛布。

異変に気付いたのか、屋上にいた二人もこちらを見上げている。


「冷?何やってるの?」

「ひぃー。」


「ここに誰かがいる。と言っていますね。」


でも彼女は分からないみたいだ。首を傾げているのが分かる。


「ひぃーえ!」


冷は二人に気付かせる為に僕等の周りをぐるぐると回ってみたり、頭を毛布の裾で指してみたりとあれこれ試行錯誤している。あまりにも可笑しいので僕は笑いそうになってしまった。

本人…いや本毛布は真剣そのものだから尚更だ。


ん?


冷が腕に巻きついてきた。丁度包帯のようだ。

そしてそのまま僕を引っ張って行く。


まぁ、このまま見つかるのも面白いといえば面白いか。


「ヴァル。」

「何でしょう、マスター。」

「心、読めるくせに何を言ってるの。」

「かしこまりました、マスター。」


ヴァルはペコリと一礼すると、僕から冊子を受け取った。


「じゃあ、宜しくね。」


◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


冷が何かを引っ張って来ているかのようにぎこちなく近づいてくる。私は冷を受け止めるべく冷の側に向かった。


「冷!一体どうしたの?」

「ひひーひひえ、ひえーひひ。」


触れられるくらいの距離になったので、手を伸ばす。

すると冷とは別の、何かに触れた感じがした。冷にしては温かい、しかも生地ではないもの。

そう、人間の腕のようなもの。


ビックリして手を離す。


「月華ちゃん、どうしたの?」

「人の…腕。」

「え?」


「人の、腕がある。」




元々の設定を含む前世編を別で書こうか検討中。前世を本編に絡ませすぎたようです。

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