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blanket  作者: 璢音
再び戦いへ
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無人のミッションカウンター

GW最終日。皆さんはどうお過ごしでしょうか。無事社会人になり一ヶ月が経った璢音です。

やはり時間があまりない事から元々遅いのに更新速度が落ちております。もっとちゃっちゃかいきたいんですけどね。

じゃないと完結出来ないですし。

思いのほか花菜美編が長引いてしまっているのもどうにかしないと…。


解決すべきこと、学ばなければならない事がまだまだ沢山ありますが頑張ります。

では、本編です↓

緋威翔さんと花菜美さんを見送った私達は、カインさんの事もあり保健室で待機をしていた。二人がここを出てからだいぶ時間が経つが連絡はない。

心なしか周りがそわそわしている。理由はそれぞれ違うだろうが、私が心配しているのは緋威翔さんの事だった。花菜美さんは緋威翔さんを狙っている。ミッションの為とはいえ二人を追跡する事もせずにここに残ったのは失敗だった。


徐々にカインさんの容態は良くなってきているのでこの辺で二人を探しにいくのもありかもしれない。…が、ここに皆を残し一人で行くのは気が引けた。もし何かあったら困るのは自分だ。


皆は今何を考えているのだろう…。


「月華ちゃん。」


カインさんが寝ているベッドのすぐ側にいた政宗さんが声を掛けてきた。私は何だろうと思い政宗さんと目を合わせる。

どこまでも真っ直ぐな黒の瞳。それは私に何か問いかけている気がする。


目を合わせたまでは良かったが、その後政宗さんは何を言うこともなく目線を落とす。言い出すかを迷っているのだろうか。何かを考えているように斜め下を見る政宗さんに、私はどうしたのかを問わずにはいられなかった。


聞けば私が心配している事を見抜いているようで行かなくていいのかと、そう洩らす。

私は行ければ行きたいが、現状を考えるとそうにもいかないのだと答えた。


「一人で行くのが怖いなら、私も一緒にいくから…大丈夫、カインさんなら真希に任せれば平気だから。」


さっきは誰よりもカインさんの事を心配していたというのに、政宗さんは…。


そんな事を思った。


「私の事なら気にしなくても大丈夫です。」


カインさんまでもがそう言ってくる。

皆の優しさに触れ、有難いと感じる一方でどこか申し訳なく思う。


「負けちゃ駄目だよ?月華ちゃんに敵う子なんていないんだから。」


真希さんの微笑みがとても温かく、私も少しだけ暗い気分が晴れた。皆に勇気づけられ向かうは図書館。例え何かがあっても乗り越えてみせる。そう思いぎゅっと拳を握りしめた。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


前回襲撃を受けてから綺麗に片付いた第7教室のミッションカウンターは、現在幟杏によって施錠されている。


静かな教室は物音一つしない。


氷椏はデータの整理をすると言ってパソコンのある教室へ向かい、幟杏はそんな氷椏についていこう等という気が起きず、かといってミッションカウンターに留まるのも気に食わず学校内を彷徨い、誰かと合流しようとしていた。


氷椏がいると悪者にされてしまう。


元はといえば自分が悪いのだが、幟杏はそうと薄々思いながらも認められずにいた。

何故自分ばかりが責められるのか。何故氷椏ばかり守られるのか。それが理解できずにいた。

少しぐらい自分の味方がいたっておかしくないではないか。なのに完全に味方がいないというのはどうなのだ。そうやって周りから一斉に責められる自分を哀れに思う人すらいないというのか。

そう思うとイライラとしてくる。


元々カッとなりやすい性格の幟杏がその感情を抑え込む事など出来ず、その怒りの矛先は自身の武器へと向かった。二人で共有している携帯という武器。それを自分が持っているということは、力が自分にあることを示していた。今、氷椏に何かがあったとしても対抗など出来やしないだろう。そう思うと少しは気分がパッとした。


廊下を彷徨い、更には外へ出て以前バトルが繰り広げられた噴水のある広場に足を運んだ。

そこにあるベンチに腰掛け、噴水を見つめながら思う。


自分はどうしてそんなにも氷椏を嫌うのだろうか?いや、実際は嫌ってなどいないのだ。むしろその逆なのだ。

それに氷椏の友人達に強がって見せてはいるものの、内心は怖い。本来の私は人見知りなのだから。

それを誰が知っているというのだろう。

心を許しているからこそ、自分勝手に振る舞う。それは好きな子を苛める男子と似ていた。


そんな自分の我儘でさえも包み込んでくれる姉が…いや、本当は兄が欲しかった。

そうやって自分を甘やかしてくれる、そんな兄が。

しかし自分にいるのは姉としての尊厳を失った、妹に勝てもしない惨めな姉だけだ。

特に優しいという訳でもなく、涙脆い。すぐに物事を諦め人に頼る、情けない姉。

周りからみれば、自分勝手な妹を抑えようにも抑えられないか弱い姉と、姉に反抗し続ける非常識で我儘で強気な妹。何故こんなにも捉われ方に差があるのか。


皆、分かっていないのだ。氷椏の事を。氷椏は人にいい部分しか見せていない事に気がついていないのだ。

それに気がつけばきっと見方は変わり、自分の味方をしてくれる人も増えるはずだ……。


ベンチの周りには餌を求めてやってきたのか鳩が何羽かいて、物欲しそうにこちらをみている。

そんな鳩を見て私はポケットを探った。

ポケットの中には小さなクッキーと個装されたチョコレート、そして第七教室の鍵が入っていた。

無言でクッキーの袋を取り、破り、クッキーを細かく砕く。砕いたそれを自分から少し離れたところに放った。待ってましたというように鳩がクッキーの欠片に向かい、食べる。

その様子を満足げに眺めた私を、誰も知らない。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



緋威翔サンが琴春っていうゴシックロリータ娘を追っかけて行ってから多分一時間くらい経った。

それは正確な時間じゃなくて、体感時間なんだけど。

私はと言えば、この場に残った宏満とかいう男と戦闘している。


相手は変な泥人形みたいなやつをいっぱい呼んできて、それで私を囲む。

そして自分は安全でいたいからと離れたところで私が戦う様子を眺めている訳。

小さい頃、少女が魔法で女戦士に変身して悪いやつらと戦うみたいなよくあるアニメが好きだったころを思い出して、もし小さい頃の私が今の私をみたら興奮すること間違いなしだなって思った。


そんな風に色々考えながら戦えるのは、この泥人形に特殊な能力が無いから。

多分、私の武器は他人を攻撃するという事を目的にというか、そういう設定になってる。でもあの男の武器は自分を守る…いわば盾の役割を果たしているみたいで。

蹴っても蹴っても潰しても吹っ飛ばしても。腕が離れても復活してわらわら戻ってくる。

それが物凄くムカついた。だからこっちも諦めずに蹴って蹴って蹴りまくった。


憎きあいつの顔が泥人形に浮かんだ気がして、反吐が出るほどムカついて力を目一杯入れて蹴る。

人形が砕け散る。けどまた再生して戻ってくる。一体いつになったら消えてくれるの?


かれこれ一時間くらいずっと蹴りを炸裂していた私の足も流石に疲れを訴えてきた。

だけど逃げようにも囲まれてるし、場所を確保するためにも蹴るしかなくて。


見れば新たに作られたらしき色が違う泥人形とかもいて。

影から見ているだけのあの男はここまでしないと怖いみたいね。なんて心の中で嘲笑った。


「お前は一体いつまで蹴り続けるんだよ。さっさとくたばれよ!」


「残念ね。私の脳内に諦めるっていう言葉は無いわよ。それより、アンタはそこで見ているだけとかビビりなの?戦闘能力皆無の雑魚なの?人形だってどれも木偶の坊じゃない。センスなさすぎ。」


目の前にいる男が私の言葉に顔を真っ赤にしてもう怒りが爆発しそう!って感じ睨みつけてきたけど、全然怖くない。こんな分かりやすい言葉に振り回されるなんて馬鹿みたい。


「お前は絶対に許さねぇ。……クレア…ごめんな、俺のせいで馬鹿にされちまって。」


クレア?


怒りに顔を真っ赤にさせた割にはすぐに表情は戻って、そして誰かに謝り出して。訳わかんない。

もしかして人形に名前つけるタイプ?きっも。


「お前に分かるはずなんてねぇし、わかって欲しいともおもわねぇよ。見て失敗作だって分からないような女にはな!お前はもう少し可愛げってもんを身につけたらどうだよ。いかにも棘生やしてるじゃねぇか。そりゃ男も逃げるわ」


「五月蝿い。」


泥人形を一方に蹴り続ける。勿論あのきも男がいる方向に。

じりじりと後退していく泥人形達を容赦無く蹴りつけ進む。宏満とかいう奴は後退せずにその場に立ってるからもう少しすればあいつのムカつく顔を蹴れる。


そう思ったけど。


色違いの泥人形に蹴りを放った時、事態は急変した。


「ぬ、抜けない!?」


ぐちゃりとくい込む音がしたと思ったら、ブーツが抜けなくなってた。

足だけ抜こうにも、粘土が足にもへばりついて取れない。

ううん、粘土っていうより、沼に突っ込んだ感じ。とても気持ちが悪いし、怖かった。

……足が飲み込まれていく……。


「クレアを馬鹿にした奴は許さない。いっそのこと失敗作の中に入れて固めてやろうか?きっとクレアみたいな綺麗な肌になるぜ。……おっと、肌が綺麗でも見せる相手がいねぇし、まず埋まってたら見せられないよなぁ。」


足がハマったことに気づいた男が泥人形を集結させていく。

このままじゃあの大群がきて身体や顔ごとのみこまれる。そんなのゴメンなんだけど。

普通はこういう所で助けがくるものよね。例えば……ね。


「バッシャアアアアアアアン!」


は、え?冷たァァァァアアアアアアア!!


来たのは紛れもなく王子様(に相応しい人)。だけど、掛けたのは声でも優しさでもなく、冷たい水。

ドロドロと崩れ落ちていく泥人形。そして解放される私の足。

改めて踏みしめた地面は水溜りのようになっていて、足をついた瞬間に泥がはねた。さっとよけたはいいものの、体制を崩してそのままボチャンと泥の中に尻餅をつく。

最悪。こんなの絶対おかしい。


「な、どういうことだよ!」


今だけはそこの男と同感だわ。


「以前同じ状況になっていましてね。対処法は分かっているんです。」


笑みを浮かべてゆっくりとこちらに歩いてくる緋威翔サン。その綺麗すぎる表情にどこか黒いものを感じて

思わず身震いをする。美しい、けれど怖い。恐ろしい。

普段はとても優しそうな感じだったけれど、もしかしてこの人にも何かがあるというの?


手には水がはいっていた銀色のバケツを持っていた。

近くにそんなものが調達出来る場所なんてあっただろうか。そういえば、近くに川はあったみたいだけど。

バケツは一体どこから持ってきたんだろう?


「宏満さん。貴方は前に僕たちのいる学校へ来ましたね?そして、友人を攫おうとした。」


「仕方がねぇだろ、それが任務なんだからよ。お前に何が分かるってんだ。」


「分かりたくもありませんね。あ、そういえば…琴春さんとクリスタルさんは逃げましたよ。」


一瞬の動揺。砂の音と同時にそいつを守っている泥人形が後ずさる。

私を放置したまま二人が睨み合っている。けれど、勝敗はもう決していた。

蛇に睨まれた蛙状態の宏満とかいう奴。元々守りに徹する臆病なタイプだから、こんなに堂々と勝利宣言のようなものをされたら逃げたくもなると思う。

逃げようと一歩動き出す相手を観察するように動かない緋威翔サン。これから先の行動を考えているような気がした。私はそんな中何もすることができず、泥の中に座ったまま二人の様子を眺めていた。

ここから見える緋威翔サンの顔は恐ろしくもやっぱり美しくて。ついつい魅入ってしまって。

敵がいることも泥の上に座っていることも忘れてしまう。助けてくれてありがとうだなんてそんなこと言う余裕というか、隙というか…もない。ただ視界には緋威翔サンが映るだけ。いつの間にか相手の男は視界から外れていた。


それから少し経ってぽぉっとしていた頬の赤みが少し落ち着いた時。やっと今の状況を飲み込むことが出来た。あの後宏満は尻尾を巻いたように逃げ出し、その場には私達二人が残っている。緋威翔サンは私が戻るのを待っていてくれたらしい。話しかけても肩を叩いても反応が無く、どうしようも無かったとのことだった。私が正常な状態に戻ると手を差し出してくれて、泥の中から引き上げてくれた。更にはハンカチも貸してくれた。流石に状況が状況だったとはいえ、あの行動をとったことに反省しているらしい。けれど、私は気にしていなかった。反省なんてしなくても…とも思った。私はその手に触れたこと、ハンカチを貸してくれた事がとても嬉しかったから。ハンカチは泥で汚くなってしまったので、洗って返そうと思う。


「緋威翔サン。琴春が逃げたって本当ですか?」


気になったこと。それは何だか自信がありげだったあの琴春が逃げたって事。

何かの憑かれたようなそんな感じをしていたから、逃げるくらいなら自傷行為でもするかと思ってたんだけど。緋威翔サンが抵抗出来ないくらいに弱らせたか、クリスタルって子が何かしたのか。


「えぇ。クリスタルさんが琴春さんを助けにきたようで、武器の力を使って僕が何も手を出せないように…それこそ尾行なども出来ないように足止めをして、琴春さんを連れて逃げてしまいました。本当はあの三人がどこに集まっているのかを知りたかったのですが…。」


拠点……それさえ分かれば良かったのに、と落ち込む緋威翔サン。彼の肩をポンポンと叩き抱きしめ慰めたい衝動に駆られたけど、そんなことを今したら確実に引かれる。我慢、我慢。


日が雲に隠れ、時折吹く風が肌を撫でる。涼しいと感じると同時に時間がだいぶ経っている事に気が付く。二人で歩き、銀色のバケツを近くにあった花屋に返し、緋威翔サンがいる学校へ戻ってきた時には既に午後五時を回っていた。

オレンジ色の空が段々と藍色、紺色に染まって行く。河原でそんな景色を二人で眺めていたい…なんて妄想しながら緋威翔サンの隣を歩いてきたけれど、一向に進展は無かった。進展はおろか、会話すらもなかった。二人とも戦いに疲れていたのかもしれない。掛ける言葉が見つからなかったのかもしれない。


途中、二人きりになる前に一緒に居た女達とも会った。緋威翔サンが現状説明などを軽くすると、一人は頷き一人は心配そうに俯いた。俯いた方の女の頭を軽く撫で大丈夫と言う緋威翔サン。

くそ、羨ましい。あの女、絶対に許さないんだから。協力してくれるって言ってたのに抜け駆けしやがって。第一なんでこんなとこまで来たのか、たかが知れてる。私たちが二人きりなのを阻止しようとしたんでしょ。これだから信じられないのよ。そうイライラしながら態とらしく咳をすると、その行為の意味に気が付いたみたいで申し訳なさそうに目を逸らした。どこまでも気に入らない女だわ、ほんと。


学校に戻ってみたら、知らない人が増えてた。なんか女みたいな男②とか、根暗そうな女とか。それと、コスプレ娘に気の弱そうな女、オタクっぽい女、それから面倒くさそうな男子が二名。

誰なのか聞いたらすぐに返答が帰ってきた。外国までいって事件を解決してた同じクラスの子たちなんだってさ。確かDチームとかいってたかな。クラスの中にまたチームがあるなんて可笑しな話だよね。


「その子は誰なのかな?」


「花菜美さん。今回の……よ。」


「成る程ね。気の強そうなお嬢さんだ。」


なにやらヒソヒソと話す声が聞こえる。そっか、私のこと知らないんだっけ。


「どっかの誰かに似てるじゃん。」


「う、うるさいわね!」


「あれー?誰かって俺は言ったんだけどな?もしかして自覚あんの?」


「キシャーッ、あんまり言うと猫パンチするわよ」


「まぁまぁノエルちゃん落ち着いて……」


こう人数が集まるとやっぱカオスっていうか、なんかごちゃごちゃしてくる。

私からしたら転入生みたいな立場な訳だからこんなにわちゃわちゃしてないで状況の説明とかして欲しいんだけど。ていうか、さっきの会話で私のこと今回の…って言ってたけどその続きは一体なんだったの?何か標的とか聞こえた気がしたんだけど、気のせい?


「おかえりさない。花菜美さん。足は……大丈夫ですか?痛んだりはしていませんか?」


「カインさん…だっけ?今は大丈夫。あの二人のおかげで痛みは無いし。別に、気にすることないんじゃない?まぁ、ウジウジいう様だったら償いとして一発蹴らせてもらうけど、どうする?」


「ダメ…カインさんはやっと回復したんだから…」


「ところで花菜美さんはこれからどうすんの?何かここに戻ってきたけど、俺らみたいに学校に通う?」


……それもいいかもしれない。緋威翔さんがいるし。学校に来るなら毎日会えるんでしょ?

それにここ、不細工は居ないしどっちかっていうとイケメンが多いように感じるし。

別に損は無いし、いいかなぁ。入っちゃおうかなぁ。


「まぁでも入る前に、被害者さんに謝ってもらうけどな!じゃねーと任務継続されちまうし。」


「それは嫌。」


「なら無理だなぁ。」


私達や他の人たちがそんな感じで喋っていると、不意に手を叩く音が二回聞こえた。

それを合図に皆が静かになる。その音の主は、緋威翔サンだった。


「前回の襲撃の犯人が確定しました。報告します。名前は宏満と琴春。武器は泥又は粘土と蝶です。蝶には毒を持ったものがいたり、姿をくらませる事にも使えるようなので注意が必要です。また、クリスタル。この人物にも注意が必要です。」


「クリスタル?」


「えぇ。どうやらあの二人…いえ、三人は何らかの組織に加入しているようです。もしかしたらもっと大勢の武器所持者が今後敵対してくるかもしれません。今のところ、クリスタルについては武器がダイスであることが分かっています。こちらに危害を加えるような真似はしませんでしたが、あちらの仲間なようです。」


「私たちが海外にいる間に何か物騒な事があったのねぇ。」


「特徴とかは教えてくれないのかい?」


「特徴…、宏満は、髪をワックスかなんかでトゲトゲにしてて、背は思ったよりちっちゃい。で、口がすごく悪い。琴春って子はゴシックロリータを着てて、髪型は内巻きのセミロング。宏満より少し小さいくらいかな。でも靴で盛ってるかも。」


私が喋りはじめると皆ビックリした様子でこちらを見てきた。私がそこまで覚えていたことに驚いているのか、私がここまでこのひと達に協力している事に驚いているのか、もしくはそれ以外か。まぁ、どうでもいいけれど、少しは役に立てたことがわかって少し嬉しかった。緋威翔サンが満足げに頷くのをみると、小さくジャンプをしたい気分にもなった。


「僕より花菜美さんのほうがはっきり覚えていたようです。まぁ、あそこに千佳さんがいれば話が早かったのですが。」


「うーん、じゃあそれっぽい人見かけたら写真とってみるよ。」


「どうやら図書館付近にたまに現れるようです。図書館の近くにある森、あの辺が怪しいと思われます。」


「森かぁ。ちょっと見晴らしが悪くて危ないよなぁ。あまり大人数ではいけねぇし。」


「なら僕が行こうか?空から監視したり誘導するのは得意だけど。あ、その場合はセイラも連れて行ってね。相性がいいからさ。」


話が目まぐるしく進んで行く中で、私は一人取り残されたような感覚に陥っていた。

そう、皆は同じ学校の同級生。そして私は乱入してきた元敵。いや、今も敵って認識されてるんだろうけど。


「そういえば受付の二人はどこに?」


「ん?そういえば居ないな。どこいったんだろ。」


「氷椏ちゃんなら、パソコン室で調べ物してるみたいよ。ミッションカウンターにある、情報のデータ化をして、それをプリントすることで手早く情報が回せるようになるからって。今第七教室は施錠されてるし、流石に二回目の襲撃はないと思う。」


「幟杏さんはふらふらっとどこかへ向かったのを見かけましたが…どこにいったんでしょう。」


こんな状況で一人ふらふらなんてよっぽど腕に自信があんのかな。それとも単に人が群れてるのが怖いとか?どちらにせよ厄介というか危険なのには変わりがないね。


「二人にも出来れば合流して欲しかったのですが…。今二人について行っている人か、探しに行った人はいますか?」


「真希さんと亜里亞が探しにいってます。」


「わかりました。では二人のことは任せるとしましょう。…それと今後の方針ですが、どの班が学校に残りましょうか。」


「万が一また襲撃されたらたまったものじゃないものねぇ。」


普段はこんな感じで話し合いをして、ミッション?を受けているんだなって感心する。先生達が何かしてくれる訳じゃなくて、全部自分達でするんだ。

調査も、戦いも、防衛も。

そして私等みたいに暴走した人達の問題を解決したり、その人のケアをしたり…敵わないなぁ、この人たちには。


私は何でこんなにも意地張っちゃってんだろう。そこまでする必要はあったのかな。ただ人を引っ掻き回して、それで満足出来た?

…出来てない。むしろ余計にヤケになっていっただけだった。

意地を張るより素直になった方が楽なのかも。そんな風に思えるなんて思ってなかったけど。


「じゃあ今回は私達が残りましょう。それとD班から聖夜君を借ります。大丈夫ですか?」


「どーぞどーぞ。俺らの班団体行動とか苦手みたいだし、各自その辺の調査とかする方が向いてるだろうしさ。それに、聖夜だってそっちの方がいいだろ。」


ウザそうな男の目線の先には、ウザそうな男②がいた。名前は聖夜か。

その聖夜って人は笑顔で頷いている。


「ならば決定ですね。カインさん。あまり無理はしないでくださいね。回復したばかりなんですから。」


「水分は補給しましたし、武器の方も落ち着いたようですので大丈夫です。ご心配なく。」


笑顔で言葉を返すカインさん。その言葉に嘘偽りはなさそう。ちょっと安心したかも。

あの時、まるで狂気に染まっていくように顔色や表情が変わっていってたから、普通じゃない状態になったのが分かってたし。今は顔色もいいし、笑顔を見せてるし大丈夫そう。


「俺らは情報を元に捜索するか。」


「私は女の子の服装の情報だけで探せそうだから、フリルとかレースの感じとか、ミニハットの有無とか詳しく聞きたいかなぁ。」


「お姉ちゃんは服装で人を見分けるのとか得意だもんね。」


「だから花菜美さん。私に情報を頂戴!」


緋威翔サンと一緒に行動したかったけど、それは無理そうだなぁ。役に立てるならいいんだけどさ。

コスプレ娘と気の弱そうな女と行動を共にする予感。


「私の名前は璢娘よ。こっちは妹の璢胡。宜しくね?」


「分かってるとは思うけど、私の名前は花菜美。宜しく。」


差し出された手を握って、仲間である事を確認した。これからちょっと様子見して、上手くやっていけそうだって思ったら、ここに入学させてもらうことにしよ。そうしよ。

花菜美からの視点が長くなるとことにより、月華が空気状態…どうにかしてあげないと。

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