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blanket  作者: 璢音
再び戦いへ
60/139

カードが示す先

久々の更新。色々とミスった感。緋威翔頑張れ。

「ダイヤのクイーン?何か意味があるの〜?そうには思えないなぁー。だって、手を滑らせたんでしょ〜?」


琴春さんが首を傾げながら、右手の人差し指と中指の間にトランプを挟み、ひらひらと動かす。カードの意味を知らない彼女の動きとしてはまぁ普通の行動だろう。


「クイーンって言ったら女王様でしょー?あっ、玉の輿になるよ!とか〜?」


右手を握りしめ、左手にぽんと当てる。頭の上には豆電球が光っていることだろう。

そんなことは…どうでもいい。ネタばらしをするのは容易だが今してしまってはつまらない。

残ったカードをシャッフルし続け、間合いをとる。


自分はあまり接近戦が得意ではない。それ故に距離を詰められたら一度距離をおくしかない。


自分が納得のいくまでシャッフルし続け、ここだと思った時にトランプを展開させる。

攻撃体制をとったことに気づいた琴春さんも何かを振り払うように両手を動かした。

するとまるで手品のように沢山の蝶が現れる。それは一匹一匹は小さいものの、群となり黒い雲のようになっていた。花の上を舞う綺麗な蝶とは違う、何かを感じる。

それはまるで琴春の指示を待っているかのようにその場に留まり、黒い雲の形状を保っている。

少しも油断が出来ない状況に、緊張を覚えた。


さて、手札の数字をお披露目するとしよう。


「…ッ!?来るよ!臨戦体制をとれっ!」


「場にあるカードは琴春さんのダイヤのQのみ。ならば自分も同じ方法で運勢を占ってみることにしましょう。」


ポツリと呟いた言葉は、琴春さんには聞こえていない。


「…“トリック”。」


一斉に蝶がこちらへ舞ってくるかと思いきや、分散して四方から囲むようにして進行してくる。

そんな中自分に落ち着くように言い聞かせながら、ターンアップカードを捲る。

現れた数字はクローバーの1(エース)だった。

…このカードが示す意味は「望み通り順調にいく」だ。


占い結果と、その結果に纏わるゲームを仕込んだ。その結果、自分は琴春さんに“勝った”。


「貴女の、負けです。」


そう告げると同時に白く輝き消えて行く蝶たち。自分を囲っていた蝶は一匹残らず消滅した。


「えっ…?」


触れることなく、また、何かを放った訳でもなく。ただカードをオープンしただけで消えた蝶。

仕掛けが分かっている自分とは違い、この技に対し知識のない琴春さんが困惑するのは当然だった。

確かめるように手の甲を恐る恐る見る。そこには確かにタトゥーがあった。

微かに震えつつ、また怯えたように身を縮こまらせ、こちらをキッと睨みつけてくる。


「今…何をしたの」


その口調は少し前までのものとは明らかに違うものだった。語尾は何処へいったのやら。

激しい怒りと畏怖が込められた声に、自分はただ聞かれた事に対し答えた。


「ゲームです。」


「なんで…なんで蝶が消えたのよ!」


明らかにパニック症状を示す彼女を眺め、どうしようかと考えるがいい案は浮かばない。

生憎、璢夷さんのような優しさや気遣いは持ち合わせていない。

あの学校を襲い、仲間に恐怖を抱かせた者にそんな感情を持つ訳がなかった。

自分は、仏ではない。しかし、悪魔でもない…と思う。

教えた所で損する訳でもない。教えない理由もない。


「貴女の所持していたカードに、僕のカードが勝ったんですよ。」


たった、それだけのこと。


「僕にはもう、その蝶は効きません。貴女が命令をしたとしても、その蝶が僕を傷つけることは出来ないでしょう。蝶はもう、知ってしまったのです。勝敗を。」


あれだけ近くにいたのなら、効果がないはずはない。


「どういう…こと」


「貴女の占い結果を教えてあげましょう。ダイヤのQが示す結果は“計画していたことが失敗する”です。それに対し僕のカードは“望み通り順調にいく”。なんの矛盾もない、完璧な結果です。更に、クローバーの1は、ダイヤのQよりも上の数値です。エースは切り札。ジョーカーが出ない限り、違うルールでない限り、最強のカード。同じエースが出てしまった場合はまた変わりますが。」


「ふ、ふふふ…まだ…まだだよー…」


「何を言っているんですか。もう蝶はー…」


「私は負ける訳にはいかないんだから。成功してあの人に褒めてもらうのー…だから、だから…」


ザザ、と砂を踏みにじる音がして何をする気なのかと構えつつ様子を伺う。

すると何を思ったのか琴春さんは日傘を槍のようにして突進してきていた。

何がそこまで彼女を動かすのか。その理由は分からないがその目は狂気に染まっているといってもおかしくない。一つを除いて、何も考えてはいないといった目だ。


「全てはあの人の為に…いえ、神の為に…!」


凄いスピードで迫ってくる日傘の先端。ゲームはあくまでも蝶を無効にしただけ。

避けるか、受け止めるか。その選択をする間にもそれはどんどん迫ってくる。

避けるのは間に合わない。そう判断した時には咄嗟にトランプを盾にしていた。

自分にとって大切な、大切なものなのに。それを簡単に盾にしている自分に怒りを覚える。

カードの束は日傘の勢いを止めた。…が、日傘の先端部分の跡が数枚のカードにくっきりと残る。


そのままハラハラと落ちたカードは過去の自分を示しているようで。

その瞬間、何かを思い出しそうになって。その記憶は自分にとっていいものなのかは分からないが、思い出した方がいい気がして。記憶の代わりに脳裏に現れたのは、トランプの柄。緋色をベースに金色の鎖が絡みつく…そのカードの真ん中にはサファイアの埋め込まれた小さな金色の鍵。錠前は、ない。

一体何の鍵なのかは想像できない。そしてこの宝物がどこで手に入ったのかも覚えていない。けれど、それはとても、とても大事なもので。


感傷に浸っているのも束の間。激しい風に身を取られ、砂の上をズルズルと後退する。

気づけば服の左袖部分が破けてしまっていた。それで先程までの状況を思い出す。

どうやら記憶を呼び覚まそうとしていた無防備な内に、琴春さんからの攻撃を受けてしまっていたらしい。

左腕にはわずかな痛みがある。


琴春さんはというとさっきと変わらず、何やら譫言のように小さな声で喋り続けている。

そこまで縋る何か。琴春さんはそれを人だといい、神だと言った。


「蝶、神様が綺麗だと言ってくれた。ずっと、引きずっていた手の甲のソレ、を神様は美しいと言ってくれた…!私が出す蝶を見事だといい、褒めてくれた。私は、私は、あのお方の為に…全てを…例えそれが一方通行の感情だとしても、私は…それでも構わない」


一途な心を蝕む闇。彼女は少しも迷ってはいない。言葉に嘘偽りなどない。

それは彼女の本音であり、想い。

伝わらないからこそ、応えようとする。そうすれば、いつかきっと気づいてもらえる。そう信じて。

コンプレックスをもっているからこそ、ソレのせいで辛い思いをしたからこそ、彼女はそんな存在を求め続けていて。やっと出会えた自分を認めてくれるひと。存在意義をくれる人。自分を救ってくれた人に、応えたい。彼女から感じるのは献身的な愛。


「貴女の蝶は、毒や攻撃することさえなければ綺麗ですよ。」


「ただの綺麗な蝶では飽きられる。見慣れたものではだんだん薄れていく。小さい頃に、見かけては喜んでいた紋白蝶や揚羽蝶は、今ではそんなに感動を与えてはくれない。それよりも綺麗な蝶を知ってしまったから。」


「…それは。」


小さい頃に、誰かに教えてもらった手品。それと同じだ。

あの時は魔法のように感じられた。予想もしない場所から、予想外なものが現れる。

でもそれはやろうとすればとても簡単なことで。知ってしまえば、もうそれは魔法ではなくなる。


日傘をまた構え、突進してくる琴春さんの気持ちが過去の自分と重なった。

……それなら。


目の前まできても、何もしない。防御も、逃げることも。ただ頭にのせた帽子に手をやり、その時を待った。3……2……1……今だ。


いつも被っている帽子をふわりと手にとって見せる。既に近距離にまで迫っていた琴春さんの目に映るのは、白い三羽の鳩。鳩はそのまま空へと羽ばたいて行く。


「あっ……」


攻撃の手を止め見入る琴春さんの日傘を抑えるようにして、じっと彼女の目を見つめた。


「昔、誰かに教えてもらった手品です。確かに、大人になるにつれて感動は薄れていくかもしれません。でもそれは、感動をする側ではなく、感動する者を見守る側になるからです。感動というものを教える側になるからです。昔手品を教えてもらった僕は、その感動を広める為にその手品を色んな人に披露しました。

子供は目を輝かせて手品を見てくれました。」


「………。」


微かな迷いが生まれたのが目に見えた。もう少し押せば、正気に戻ってくれるかもしれない。


「琴ちゃん!!」


静かな森の中で琴春さんを呼ぶ声。その声には聞き覚えがあった。

先程琴春さんの居場所を教えてくれた、彼女だ。


「クリスタル…?」


琴春さんがその名を呼ぶと同時に、焦りが生じる。彼女が自分の後ろからサッと現れるまで接近に気付かなかったからだ。間違っても敵に回したくはない。それにしても、一体彼女は何者なのだろうか。


「ダイス!」


その手に持った青い水晶のようなものがキラリと光を反射する。それは紛れもなくサイコロだった。

しかし、よく見る六面体ではない。サイコロ…ダイスは彼女の手を離れ、回転しながら宙を舞う。


「“行動判定”、偶数なら琴ちゃんを連れて逃走成功…!」


ダイスは宣言を受けて宙に浮いたまま徐々に回転力だけがなくなってゆく。

ダイスの出目は、8。偶数だ。

その瞬間糸が張り詰めたような感覚が襲い、身動きがとれなくなる。

琴春さんは正気に戻ったようだったが、状況の把握に時間が掛かっているらしく、目を見開き硬直している。そんな琴春さんの手を引き、彼女は走り出した。


「帰るよ、琴ちゃん!」


その声でハッとしたように我にかえり無言で頷いた後、琴春さんも手を引かれるままに走り出した。

自分はそのまま姿が見えなくなるまで動けず、動けることを確認した時には既に二人が去ってから時間が経過していた。


逃げられてしまった。…それが結果だった。


しかし、クリスタルの声にはやはり聞き覚えがある気がした。最初に接触した時にも感じたが、今回もだった。しかし、今までにダイスを武器にしていた人など居なかったはずだ。ただ単に勘違いか、それとも…。

占いでは順調に行くはずだったのに、それが覆されてしまった。これは裏に何かがありそうだ。


いや、考えている時間はない。戻って花菜美さんと合流すること、そして学校へ戻り皆にも伝えなければ。そう思いながら来た道を戻り始めたが、不安の為か徐々に進む速度は速まっていった。


何か、悪いことが起きている気がする。それに、自分達も関わっている。

そんな不安が頭をよぎった。

あれ…何でネク◯ニカみたいになっちゃったんだろ…

いや違う。あれは確かにダイスだけどどっちかっていうと効果はルーレットに近いもんね。違う違うTRP◯じゃない。違う違う違う違う違う(発狂)


……ごほん。どうにも、読んだ作品とか観た動画とかに影響される面があるみたいです。私には。

しかし、これ打ち込んでる途中に急に外から「ティラリーン ティラリラリーラー」とか不吉な音楽が流れてきたんですがそれは。一体何があったの。

クラシック好きな人が乗ってる車でも通ったの?それにしてもタイミングが良すぎ。丁度(発狂)って部分書いてた時だったし。びっくり。


さて次回はどんな話にしましょうかね…っと。ではまた。

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