麒麟はキリンにして麒麟にあらず
っとまぁ、前回はちょっとした作者の中のブームで文を書いたわけですが、皆さん分かっていただけたでしょうか。
……といっても、進路について迷ってるのは事実です。
ふーむ、どうしましょうかねぇ。
“緋威翔side”
静かになった、この空間はきっとすぐに野次馬で埋まってしまうでしょう。しかしそうなっては遅いのです。そうなる前に決着をつけねばならないのです。
今までに二人を気絶させたこの麒麟という方は、まだ他にも策があるでしょう。とっておきの秘策を隠し持っているかもしれません。僕はどうするのが最善か。……答えはありません。なんていったって前例がないのですから。
それなら相手の事を探りつつ、戦うしかありません。
ふとカードを持つ手を見ると、ワナワナと震えているのが分かります。何故震えているのか?恐怖からか?いえ、そんなものではありません。僕を震わせているのは怒り。二人を気絶させたこの人が許せないのです。
気絶ではまだマシではないかと思う人もいるかと思いますが、二人が気絶しているということは、相手にハンデを与えているも同じ。弱味を握られるのもそうです。だがらこそ僕は、ひえったと共に頑張らなくてはいけない訳で。
相手は少しも悪びれる様子はなく、さも当たり前のように振舞っています……虫酸が走ります。
この感情は、あの時とーー。
「緋威翔、君に一つ質問をしたいんだけど。」
「何でしょう?」
冷静な判断?今はそんな事していられません。ただ、目の前の敵を排除したい……。
「君は、あの二人の事が…好きなの?」
「貴方には関係ありません」
「ふぅーん、そう。じゃあ俺が貰ってもいい?」
「は?」
「テイクアウトして家でじっくり研究をしようと思ってね。」
「………ません」
「何?よく聞こえないなぁ。」
「そんな事、させません…!」
まさに火に油。あの人は一体何を考えているのでしょう。僕を怒らせたいのでしょうか?そんな事にかまって居られる程、暇ではありません。
カードを構え、攻撃するという意思表示を行うと彼はニタニタしながら接近してきます。今なら射程距離。僕はすかさずカードを投げました。
カードが風を切り、進んで行く先は的である麒麟。鋭利なカードは彼の武器を傷つける筈だった。
しかし、彼は自分の身で以てそれを拒んだ。流れる深紅の液体が目に焼き付く………。
彼は今の動きによって右手の指先を怪我したようだ。指先から滴る雫を不思議そうにまじまじと見つめた彼は、舌で指をなぞりながら言った。
「やはり指二本でカードを挟むのは容易じゃないですねぇ。」
「!?」
「おや、何を意外そうにしてるんです?それに顔、青ざめてるよ?何か過去にあったのカナ〜?実に興味深い。」
……何か、思い出しそうな気がしますーーでも霧が掛かって…後少し、後少しなのに……
「過去は過去。今は今、ですよ麒麟さん」
「過去があるから今があるのではないのかね?」
「全くもってその通り。しかし、過去の記憶を切り取ったとしても、未来は続くものですよ」
「やれやれ、君と話していると話がおわんなーー」
薬品を放出させようと栓に手を伸ばすその瞬間。チャンスは一度きりーー。
「ひ〜〜」
一気に足へブーストを掛け、相手の懐に潜り込みます。その際にひえったをマフラーのように巻き、相手の射程内へ。彼はすかさず薬品を嗅がせようとしますが、僕は彼の腕を掴みました。
「……っ、何をするんだね…!」
そのまま腕をひねり、彼のフラスコがその手から離れるまでキープ。脱臼や骨折はさせないよう、細心の注意を払いながら。
「いててて……っ」
彼は研究に浸るあまり、自身の強化を怠ったようですね。
やがて痛みに耐えかねた麒麟は、そのフラスコを離しました。その隙にフラスコを奪い、ひえったに預けます。
「おっ、俺のーー」
必死に手を伸ばす麒麟を背負い投げ、床に叩きつけました。頭に血がのぼっていたせいか少々やりすぎてしまったようです。
「……〜〜ッ」
起き上がる事無く腰をさそる麒麟さんを見て、やりすぎてしまったと思い彼に手を差しだしました。
「貴方の研究は、相手を痛めつけるのではなく相手を救う事に使っていただきたいものです」
最初はフラスコを奪うのではなく、フラスコの中の薬品を嗅がせる事により眠ってもらおうと思っていましたが、どうやら彼には効かないようなので、変更しました。どうやらうまくいったようです。
「まさか君みたいなヤツにやられるなんてね……油断しすぎたかな。さてと。じゃあ手ぶらになった事だし帰らしてもらおうかー」
彼は懐からチケットのようなものを取り出すと、空間に差し込むような動作をしました。すると彼は霧のように徐々に透けていき、終いには消えてしまいました。
敵がいなくなった事を確認し、直様2人の元へ駆け寄ると、丁度薬品の効果が切れたようで、2人は目を擦りながら辺りを見回していました。
「緋威翔…あの変な奴は…?」
「逃げました」
「あの人を緋威翔さんが追い詰めたってことですか…?」
「ひ〜ひひひ〜♪」
「あれ?このフラスコ…」
「彼から奪いました。彼はこれを持ち帰る事無く、空間に消えました」
空間、という言葉を強調し、彼の能力或いは彼にまだ仲間がいる事を示唆します。
「これは一度持ち帰り、研究しましょうか。相手がこれを奪い返す事をしなかったのが何か引っかかります。それに…嫌な予感もするんです。ここは一度学校に戻りましょう」
「そうね…それがいいわ」
2人は頷き、こちらを見ています。
どうかこの嫌な予感は外れて欲しい…そう願いながら空を見上げると、丁度お日様を隠すように進む雲が、僕をまた不安にさせました。
今、正に僕の予感は的中する事になるのです………。
麒麟はキリンにして麒麟にあらず。この題名で伝えたかったことは、彼(麒麟)は幻の動物(特別な存在)ではなくキリン( 至る所で見ることができる)ということ。
その言葉が指す意味は、またいずれ。
次回は、緋威翔たちが学校に戻る話か、カインたち側の話(花菜美の話)かで迷ってます。どっちにしようかなぁ……。




