休日二日目【月華編Ⅶ】
今回の休日編はこれにて完結!次からは平日に戻ります。
ただ……今回は本編に関わる詳しい部分を練り込んでしまったので、若干内容が暗い(´・ω・`)
だが、パーティーの明るさでふっとばす!((ォイ
ではではお楽しみください。
やけに真剣な眼差しでじっ、と見つめてくる璢夷さんを私は直視出来なかった。
話したい事は、夢の話のハズ。だとしたら何で黙ってダンスをしたまま、じっと私の目を見つめるのだろうか。
璢夷さんの事だから、そういう展開じゃないのは分かってる。だけどやっぱり……慣れない。
「あのぅ……夢の話でしたよね?」
「……、あぁ。お前の見た夢の話を聞かせてほしい」
一度視線をずらし、再度目を合わせる璢夷さん。その表情はいつものままで、動揺は全く見られない。
「私がイアという少女の視点から、イアが治めている国について……」
私は覚えている限りの事を全て話した。細部もしっかりと。全てを伝え終えて、璢夷さんの出方を伺っていると、彼はやはりそうかと一言洩らしてから言った。
「鏡。お前の見たイアという姫は、セミリア・ファル王国の姫だ。ミラ前妃に代わり、女王になった者だぞ。」
「……薄々感じてはいました。真里亜さん達と話をしている際に、妙な共通点がありましたから。」
「話の飲み込みが早くて助かる。それで、元々城があった場所は――」
「今はセイラさんの家になっている場所ですね?」
あの庭園は夢に出てきた城の庭とそっくりだったと真里亜さんが言っていたから間違いない。
「あぁ。そうだ。そして、アルバートの視点に出てきたカルキノスは、恐らく元老院の1人だろう」
「……璢夷さんってこの国の事にお詳しいんですね。」
「緋威翔から伝わった情報の一つに過ぎん。本当は、あいつがお前と話す予定だったのだが」
「……それで、その夢がどうかしたんですか?」
「unarmed armの起源は知っているな?」
「えぇ。確か姫が――イアが魔法を使って武器の存在自体を消滅させた。しかし、争いが無い事で負の感情を吐き出せなくなった者達が、本来武器でないものを武器化させてしまった――。そうですよね?」
璢夷さんは頷く。
「その武器を作った原因は、彼女の魔法にある。」
「武器を消滅させる魔法ですか?」
「大方、平和の為にやったのだろうが、彼女は……いや彼女達には一つだけ誤りがあったんだ」
誤り……、彼女のお陰でこの世界は平和に保たれた。なのにその中にミスがあるというの?
「彼女のミスって……一体?」
「武器が無くなった事により、“強い者”とはどんな人になる?」
「……普段から肉体を使って……武器を使わずに戦う人ですよね?」
「ならば、猛者達が弱者を苛めたとすれば?」
「……!」
全くもって抵抗出来なくなる……!
平和を乱す原因だった“武器”はある意味で自分を守る“盾”の役割も果たしていたのだ。
「でもそんな事って……!そうだ、魔法は?魔法はどうなんですか?」
「魔法は……彼女しか使えない。しかも、元老院の許可がないと使えなかったんだ。」
「元老院は気付かなかったんですか?そんな酷い事が起こるかもしれないという事を。」
「中には知っていた奴もいただろう。」
「だったら何故……っ」
それを教えなかったの…!
彼女は自らの選択肢が間違っていると知らずに……っ
「そいつらは権力を握る為に姫を貶めるつもりだったんだ。」
「そんな……!一体誰がそんな事をっ!」
こんな会話、ダンスをしながらするものなんかじゃ……ない。
私は足を止め、正面から璢夷さんと向き合った。
「……少し静かな場所でお話しましょう。」
「……それもそうだな。すまん。」
私達はテーブルに近付き、話を再開した。
「裏切った元老院はタウロス、スコルピオス、そして……カルキノスだ。更には、リゲルとアンタレスも彼女を裏切っている。」
「……!」
「彼らは裏で団結し、権力を握ろうとした。姫が魔法を使ってから数年後には、彼らが実権を握るようになっていたらしいな」
「でも、セミリア・ファル王国って平和だったんじゃ……」
最も平和な国と言われたその国でそんな事が起きていたなら、決してそんな名前はつかない筈。
「それはリゲルが何とか元老院を丸め込め、最低限平和は持続させた方がいいと思わせたからだ。」
「それで……姫は」
「姫は“単なる飾り”として生かされていたようなものだ。姫が居なくなっては統率力がガクンと落ちるからな。」
「夢の中のイアはあんなに頑張っていたのに――」
「そして姫派の元老院達は、姫がお飾りになっている事に気付かずに過ごしていた。」
「………。」
もう、聞いていられない……。
「姫の権限は確かにあった――しかし、彼女は元老院に脅されていたのだ。私達に逆らえばこの国は争いの中心になる、と。」
私は咄嗟に耳を塞いでいた。彼女がどんなに辛い環境で、人々を守る為に自分を犠牲にして、あんな笑顔を振り撒いていたという事を知ってしまった。耳がその真実を受け止めてくれない。否、受け止められないのは自分だ。
でも真実を聞かなければならない。姫の無念を晴らす為にも……。
「彼女は平和を守る為に、飾りになる事を選んだ。」
「その結果、彼女の国は栄えた。」
「そうだ。だが、それだけでは終わらなかった。」
彼女の持っていた力が強大なのは誰だって分かる。全世界の武器を消滅させる魔法を彼女1人で発動させてしまうのだから。
「裏切った元老院達は次に、彼女の力を望んだ」
「でも魔法は姫にしか」
「だから、姫に秘密を聞こうとしたのだ。気付かれないように自分達の有利な場所まで連れていき、拷問をした」
「彼女はそれをも耐えたというんですかっ!?」
「……そうだ。それで民が救われるのならばと、必死に耐えたそうだ。そして――」
璢夷さんが話に間をあけた。重大な事を今まさに言おうとしているのかもしれない。
私はじっ、と耳を傾ける。どんなに小さな声も聞き漏らさないように。
彼は一度下を向いてからこういい放った。
「――最初の武器が生まれてしまったんだ」
「!?」
武器は……負の感情を貯めた人々(こくみん)が作り上げたんじゃ……
「そう、この世で最初の非武装の武器は、イアが作った“母親の形見”だったんだ。形見は何だったのかは知らないが、元老院はその力を恐れ、一旦手を引いた。それは良いものの、非武装の武器を作る条件等、研究を続けていった。」
「それじゃあもしかしたら」
「その元老院の子孫は武器が作られる条件を知っている筈だ。だとすれば、自身でその原因を作っている可能性もある。」
「もし、元老院の子孫が彼らに加担しているとしたら――」
「非常に厄介だ。自然に出来た武器ではなく、人工的に作られてしまう可能性も0ではない。」
「そ、そんな……」
「……まぁ、最後の方は憶測だ。第一子孫がその裏切った元老院の意思を継ぐとは限らないだろう?そこまで深刻視するものではないが、何処か片隅に記憶しておいてくれ。」
「……はい。しっかりと……記憶しておきます。」
忘れる事なんて出来ない。そんなこと、絶対に。
「……折角のパーティーの気分を台無しにしてすまない。」
「いえ。話を聞く事も大事ですから。ましてや、あんな重大だ話……」
「………ふむ、お前を元気付けるにはアレしかなさそうだな。」
「えっ?」
「ちょっと待っていろ」
僅かに微笑んでから彼は広間を後にした。向かったのは何処だかは分からないが、恐らく自身の部屋だろう。
暫くして、璢夷さんが戻ってきた。私の横を通過し広間へ戻っていく。さっきと何ら変化はない。
(何してたんだろ……?)
色んな人が踊っているその場所を通っていく璢夷さん。その先には――。
「……おい、何時までこいつと踊っている気だ?」
「なーに?璢夷くんも私と踊りたいの?どうしてもっていうなら、良いよ?」
「あぁ、どうしてもだ。こいつをお前から引き離すにはそうするしかないからな。……何、退屈はさせない。」
「うん、じゃあ良いよ!また踊ろーね、ひーと君!」
「え…えぇ。」
疲労感漂う彼は、すぐに幟杏ちゃんのいる場所から抜け出し、すぐさま広間を後にした。
「あら、やっとなの?」
「何考えてんだアイツは。」
いつの間にか踊りを止め食事をしていた二人が寄ってきた。
「やっとって……どういう事ですか?」
私は私の方を見て微笑んでくるノエルさんに疑問を抱き、即座に質問をした。しかし、彼女は待っていれば分かるわと軽く答えるだけである。
「あー……お前のそのドレスにこの葡萄ジュース、掛けてやりたいなー」
やけに棒読みで言う輝生さん。しかも一部を強調して……?
「あら、来たわよ。月華ちゃんっ」
私にウインクしながら、彼女はある方向を指した。そこにいるのは勿論……。
「ひ、緋威翔さんっ!?な、なんでそんな服装をっ!?」
私が驚くのも当たり前だ。さっきまで緋色のタキシードを着ていた彼が、いつの間にか白のタキシードを着ている。しかも白って――。
「ほぅら、行って来なさいよ。そして楽しんで来なさい。お姫サマ♪」
「キザ男の何処が良いのやら――まぁ、でも今回は面白そうだな」
もう、何が何だか分からない。
「すいません、遅くなってしまって。衣服を仕立てるのに時間が掛かったようですから」
そう言いながら微笑んで手を差し出す緋威翔さん。私は何を躊躇うことがあろう。
「ゆ、夢みたいです……!」
私は泣きそうになりながら、彼の手をそっと握った。
「御迎えにあがりましたよ、姫様」
「………ッ!」
「あーっ、ズルいーっ私も姫になりたい~っ」
「俺じゃ不服か?」
「なら私に立場を譲って頂戴っ!」
「オバサンにはあげないよ~っだ!」
「な、なっなんて事……ッ!」
「おい、幟杏!あいつを怒らせるんじゃないっ」
「霧雨ちゃんは俺のおヒメ――」
「ドスッ!!」
「あんたは黙ってて!」
「霧雨ちゃんそれはなんでも……き、きついぜ……ぐはっ」
「キャーッ!」
周りの音も全く気にならないくらいに、嬉しかった。璢夷さんには感謝してもしきれないくらい。そこまでしてくれるなんて……。
緋威翔さんも緋威翔さんでわざわざお揃いの白のタキシードを璢娘さんに仕立てさせてたなんて……っ
私を殺す気ですか…っ
「一緒に城に来て、一緒に踊って。本当に仲が良いんですね。僕と姫君は。」
「……ふふっ。そうですね。」
こうやって貴方と踊る事をどれだけ望んでいたか――。
皆は踊り疲れ、それぞれがテーブルへと向かっていく。広間に残されたのは私達だけになっていた。
「まるでシンデレラを見ているみたいね。」
「うわー氷椏ってばロマンチスト~っ」
「こーゆー時ぐらい、夢をみたいもの」
「まぁ、氷椏も良かったんじゃない?誰かさんと踊れて。」
「……クスッ、そうね。貴方は王子様二人と踊ったものね」
「うんっ、楽しかったぁっ」
周りはいつしか私達を見守る形に。それこそ、結婚式のような光景。私は――ずっとこの出来事を忘れないと思う。
こんなにドキドキして、こんなにも楽しいって思った事はないんだもん。
……私って緋威翔さんの事、好きなんだなぁって……今頃になって気付いた。
彼は、どうなんだろう――?
「ねぇ、兄さん。」
「なんだ?璢胡。」
「私の時間なんだけど……」
「あぁ、すまない。権限を使ってくれて構わないぞ」
「……でも、そのままでいいっ」
「?」
「だって私の大切な人が、あんなに幸せそうなんだもん」
結局私達はその後も壮大にパーティーをし、気が付いたら夜が明けていた。だから、皆学校があるからと急いでに寮へ帰る事になった。私もその1人である。
あのウエディングドレスは、記念として璢娘さんからプレゼントされたので、自室に飾ってあるのだが……見るとつい表情が緩んでしまう。
いつか、またあのウエディングドレスを着る日が……。
私はそんな事を思いながら、急いで学校にいく支度をするのだった。
今回は台詞がメインでしたがいかがでしょうか。
“セミリア・ファル王国の秘密”……以前緋威翔が借りたやつですが、一体何処まで書いてあったのでしょうかねぇ……((
詳しすぎですよね(笑)
ついでに言っとくと!
月華達が踊っている間は台詞を多めにし、踊りについては敢えて余り触れませんでした。想像にお任せします。
ふふふ、執筆楽しかった~☆
さて、次回からは通常に戻ります。次の武器は――今私が欲しいもの①!
次回もお楽しみに!




