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blanket  作者: 璢音
ちょっと休憩休日編
43/139

休日二日目【月華編Ⅳ】

うっはー今回gdgd(´・ω・`)


 風を切り、息を切らし、そして気持ちは見え隠れに。思い出さえも、途切れ途切れ……。


 青の帽子、テディベア、鎖、鍵、緋色、テディベア、本……。


「あれっ?」


 ふわりと宙に浮かぶ感覚、真っ白な空間。そこは私が行きたかった、目的の場所ではなかった。全く知らぬ空間……。私は急に不安が込み上げてきた。


「ここは……何処?」


そう言わずにはいられない。周りを注意深く観察しながら、私はこれまでの経緯を振り返った。


 確か緋威翔さんのいる男子寮へと走っている途中で……


「君は誰?」


 頭の中に直接語りかけてきているように、実体のない声が聞こえる。


「私は――」


 誰、だっけ……?


「君はどうしてここに?」


 そういえば、どうしてここにいるの……?


ワカラナイ――。


「それならば、教えてあげよう」


「おっ、教えて!私は誰なの!?どうしてこんな所にいるの!?」


「それはね」


 白い空間の中に、ぼんやりと薄い影が現れた。ゆらり、ゆらりと近づいてくる。私は床を見ながら、その影に語りかけていた。

 影に対して恐怖心は湧かない。それどころか妙な安心感に支配される。私はこの空間内にある全てに対し『無知』。何も分からない。それどころか、ついさっきまで覚えていた事も――。


「君の名前は月華。そして今君は緋威翔という人の元へ向かっているんだよ」


 緋威翔……何だか、懐かしく感じる。ついこの前まで、何かがあった気がする。


「でも私はどうしてその人の所へ向かわなければならなかったの?」


「君は――。」


†††††


 鳥のさえずりと、柔らかな風。私は公園を通過して学校の近くへと来ていた。私が来たかった男子寮はもうすぐである。


 右手にはお土産のケーキを持ち、緋威翔さんの元へ向かっていた。『ケーキのお礼』をする為に。


 男子寮の前に立ち、入り口で許可をとりにかかる。

 入り口の横にある、電話のような機械。その機械についたボタンを『252614』と押す。

トゥルルという呼び出し音がなり、暫くするとカチャ、という音と共に緋威翔さんの声がした。


「どうぞ」


 建物内に入り、長い廊下を通る。白い大理石の床と、所々にあるオレンジの光が安心感を誘うと共に高級感を持たせている。

 階段を上り、ネームプレートに『孤中』と書かれた号室にたどり着いた。番号は詳しく見なかったので知らない。

 チャイムを押すと、すぐにドアが開いた。


「どうかしましたか?こんな時間にわざわざ部屋まで。」


 普段こんなシチュエーションはありえない。私自身、男子寮を訪れるのは初めてだった。ましてや、誘われもせず自分から行くことなんて想像もつかなかった。


「この前の、ケーキの礼をいい忘れたのと、お礼にケーキをって思って……」


“言いたい事が他にあった筈なのに”


「そうですか。わざわざどうも有難うございます。……あ、どうぞ中へ。」


“伝えたかったのはそれじゃない”


 私は緋威翔さんの部屋へ上がった。

 彼の部屋は、アンティークな書斎とでもいうべきだろうか。本棚がそこかしこに置かれており、その中には沢山の本が収納されている。本棚の隙間がない程に、ぎっしりと。


「そういえば、月華さん。聞いてくれますか?」


「はい、何ですか?」


 ケーキを冷蔵庫にしまってから、緋威翔さんがこちらを振り返り、話し掛ける。その目には迷いと謎が入り交じっていた。


「例の本、緋色のテディベアを読んで、気になる点が出てきたんです」


“緋色のテディベア……”


「どんな点ですか?」


「緋色のテディベアに出てくるもう1つのテディベア。その色が本編に全く出てこないんです。挿し絵には出てるんですが。」


 あの時話し合った内容から全く進歩しなかったという事か。


「どうも挿し絵を見ていると、赤ではなくやや赤より薄い色になってるんです。しかし、トーンの模様の細かさからいって、赤系統のものとは思えません。」


“私は、この謎の答えを知っていた気がする――”


「何か、思い当たる色はありませんか?」


“確かあれは、あ――”


「……分からないです。見当もつきません」


「そう、ですか……。」


「そういえばその本を読んでいる人が他にも沢山いるみたいなので、その人達に聞いてみるのはどうですか?」


「例えば誰です?」


 茶色の木製のテーブルに真っ白なテーブルクロス。その上に、ティーカップを2セット。緋威翔さんはティーカップに飲み物を注いでいった。

 私は緋威翔さんに勧められ椅子に座り、会話を続ける。


「亜里亞さんや、真琴さん。そして璢夷さん達も読んでるんじゃないかって。」


 緋威翔さんに差し出されたティーカップを手に、紅茶を飲みながらゆっくりと伝えた。


 次に私は作者の緋桜さんの事を質問した。緋威翔さんは緋桜さんが気になり、ネットで調べたという。


「作者の緋桜さんは、僕達と同じ年頃で最年少の有名小説家。ただ、作品はあの緋色のテディベアだけだそうです。」


「有名なら続編を出しても売れる筈ですよね。」


「売れる為ではなく、伝える為に書いたのかもしれません。利益を追及する人ではなさそうですから。現に、印税の殆どを孤児への支援として寄付しています。」


「緋桜さんっていい人なんですね。」


「ただ、どんなに調べても写真は見つかりませんでした。念のため出版社に問い合わせしてみましたが、どうやら本人が顔を明かさないで欲しいと言ったそうです。そして性別も非公開になっていました」


 どんな人かは分からないという事か。そう言われると益々気になってくるがどうしようもない。


「今までに緋桜さんと会った人が何名かいるようですが、サインを貰う代わりに(見た目について)口を閉ざすと約束したそうです」


「その人達は何処で?」


「主に図書館みたいですよ。携帯に緋色のテディベアをつけていたようですから、それを見て気付いたんでしょう」


「じゃあ国立図書館に来ていたかもしれませんね。残念です、さっきまで図書館にいたので……それを先に知っていれば探したのに」


 何か重要な事があったかもしれないのに、何も浮かんでこない。ただ、緋威翔さんにケーキの礼をしなければと、それだけが頭を巡っていた。

 礼を言うのも終わったし、用事はもう特にない。でも、何だかこの話題が気になって仕方ない。


「図書館に行ったんですか。それは是非とも呼んで欲しかったものです。僕は図書館の場所を知らないんですよ」


「今から行きますか?私が案内しますよ?」


「それは有難い。では、お願いします」


 二人で男子寮を出て、図書館へ向かった。途中、図書館から帰ってきたらしい真里亜さんとアルバートさんが二人で歩いているのを見掛けた。


「おや、アルバートさんと真里亜さんですね」


 二人の手にはそれぞれ先程借りた本が握られている。真里亜さんは童話集、アルバートさんはスポーツの教本だ。

 二人は何を話しているのか分からないが、とても楽しそうである。時々笑みを溢しては、話に没頭しているようだ。


「いいムードですし、そっとしておいてあげましょうか」


「えぇ、同感です」


 あの二人の関係が、よりよいものへ発展するように望みながら、二人の横を通りすぎた。二人は話に夢中になっていて私達が眼中に入っていないのか、話すことなく通りすぎていった。



「図書館まではもうちょっとです。」


 暫く他愛ない話をしながら道を歩いていくと、さっきのお城のような図書館、国立図書館が見えてきた。


「あれが図書館なんですか。見た目はお城みたいですね」


「元はセミリア・ファル王国直営の図書館でしたから」


「成程。それで国の重要文化財になっているんですね」


 話の飲み込みの早い緋威翔さんと話をするのは実に楽しい。世間の事でも、武器の事でも、ちょってした悩み事の話でも、緋威翔さんは嫌な顔1つせず話を聞いてくれた。私はその包容力に感心と魅力を感じつつ、一緒に道を歩いた。


 図書館へついた。私は先程図書館を見て回っているので特にみたい本はない。なので緋威翔さんについていくことにした。


 緋威翔さんは迷わず歴史のジャンルの本棚に向かっていく。ここは先程、私がある本を探してきた本棚だ。セミリア・ファル王国の詳細が書かれた本を探していた、あの本棚である。

 まぁ、知らない人に先に本を取られ、結局借りられず仕舞いだったが。


 緋威翔さんは、本棚の前にくると、ぽっかり開いた隙間に興味を抱いたようだった。


「この隙間、本が入っていたにしては随分開いていますね」


「そこには分厚い歴史書があったんです」


「それを知っているという事は、月華さんがここに来た時にはまだあったんですね」


「はい。でも私が借りようとした際に、他の人に目の前で借りられてしまって」


「歴史書を借りる人なんて珍しいですね。調べものでもしてるんでしょうか。その人はどんな人でしたか?」


「えっと――」


 目の前で、しかもじっとその人を見ていた筈なのに、何一つ思い出せない。顔も、姿も、声も、身長も、何もかも。


 誰かに似ていた筈なのに。しかもそれは、私の身近な――。


「……思い出せません」


「まぁ、そんな急に覚えられる訳がないですよね。知っている人ではないんですから。」


「そう、ですよね」


 今一納得がいかない。


「……あ、そういえば。今日の夜、璢夷さんの家でパーティーするそうですよ」


「ふぇ?」


「何でも、璢娘さんがやるっていってきかないらしくて」


 緋威翔さんはクスクスと笑いながら話している。その姿が何とも愛らしくて、思わず女の私が見とれてしまった。


「璢娘さんらしいですね。それで、何のパーティーなんですか?」


「仮装パーティーとか言ってましたね。」


「仮装パーティー?ハロウィーンみたいなですか?」


「いえ、属にいう……コスプレってやつですか。璢娘さんはそのコスプレが好きなようです」


「じゃ、じゃあ参加者は皆コスプレで……!?」

 な、なんてパーティーだ。考え方が凄すぎる。


「きっと、仮面舞踏会みたいにしたいんでしょう。お城も準備するって言ってましたから」


な、なんてこったぁあっ!お城を1日で準備するなんて!一体幾ら掛かるんだろうか……というかまず、1日でお城なんて……


「璢夷さんがよく承知しましたね」


「まぁ、璢娘さんの方がお姉さんですからね……」


「逆らえなかった、と。」


「行ってみれば分かりますよ、きっと。」


 急に何かを悟ったような目になる緋威翔さん。顔は笑ってるけど、目は苦笑に近い。本心は苦笑しているのだろう。そうさせる何かが、パーティーにはあるらしい。


「ところで、誰が参加するんですか?」

「全員ですよ。」


「ふぇっ!?」


「あのクラス、全員強制参加です」


「えぇえええ!!!?」


 図書館で大きな声をあげてしまい、顰蹙(ひんしゅく)をかう。周りからの視線が、痛い。


 緋威翔さんの手には、一冊の本が握られている。『セミリア・ファル王国の秘密』という本だ。


「僕はこれを借りていく事にします」


 前に来た時には無かった本だ。


 緋威翔さんはカウンターに向かいその本を借りた。その本を抱え、二人で外に行った。


「それで……?その服は持参なんですか?」


「いや、全部璢娘さんが仕立ててくれるから心配いりませんよ」


「そ、そうなんですか……」


「集合は夜8時。特に持ち物はなくて大丈夫だと言っていました」


 要件は大体分かったので、頷きながら話を聞く。


 つまりは、パーティーに参加せよ。という事だろう。


「夜の8時に、璢娘さんの家へ行けば良いんですね?」


「えぇ、そういう事です。良ければ一緒に行きませんか?一人では何かと不安でしょう?」


 や、優しすぎる……!夜道は暗いし不安だ。それを汲み取って一緒にと……。


「えぇっ!お願いします!」


「では、7時に寮まで迎えにいきますね」


「はい」


 緋威翔さんは、私を寮まで送ってくれた。緋威翔さんはこれからその歴史書を読むという。


「そういえばこれ。僕は読み終えたので――、月華さんもどうです?」


 そう言って帰り際に私に渡したのは、『緋色のテディベア』だった。丁度私も興味を持っていた為、私は喜んでそれを借りた。


「有り難うございます。すぐに読みますっ」


 部屋に戻り、早速読み始める。内容は緋威翔さんから聞いていた通りなので、私は楽々と読み進める事が出来た。だが、パーティーまでの時間がそもそも短かかったので、全てを読み終える事は出来なかった。


 パーティーには特に持っていくものはないというのて、悠々と本を読んでいた。緋威翔さんが迎えにくるまで、ずっと。

【次回予告】

月華は璢娘の家で行われる全員参加のパーティーに参加することになった。パーティーでは璢娘が仕立てた服を来て出席するのが決まり。月華は緋威翔と共にパーティーへ向かうが――。

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