休日二日目【月華編Ⅰ】
今回は、短め。次回がまたきっと長くなるので早めにきりました(笑)
休日二日目。寮にある自室で目を覚ますと、丁度携帯の着信音が鳴っていた。
携帯を手に取り、内容を確認する。どうやら電話が掛かっているらしい。
私は通話ボタンをタッチし、電話に出た。
「もしもし?」
電話の相手は酷く焦っているようで、しかも何処かを走っている様で、息を切らしながら電話に出ているようだ。
「もしもし?」
返答が無いのでもう一度もしもしと聞くと、暫くして喉の音が聞こえてから、相手が出た。
「もしもし、月華ちゃん?」
「はいそうですけど?」
「えっと、ちょっと外に来れるかい?」
いきなりの展開に、私は驚く事しか出来ない。だって私は今起きたばかりだ。支度をしていなければ、着替えもしていない。
因みに、電話の相手は聖夜さんだ。
「出るまで時間が掛かりますけど?」
私がそう聞くと、彼は大丈夫だから成るべく早くと口にする。私は分かりましたと返事して電話を切った。
それから急いで支度をして外に向かう。
元々、寮は女子と男子で別れているのだが、女子寮と男子寮の出入り口は近い。
聖夜さんは、出入り口で私を待っていた。いや、それだけではない。あの時間に起きていたと思われる人々の殆どが出入り口に集まっていた。
「一体何が?」
私は事情を知らないので、近場にいて、事情を知っていそうな璢夷さんに聞いた。
璢夷さんから聞いた話によると、どうやら聖夜さんの飼っていたペットの鳥が、誤って窓から出ていってしまい、迷子だという。
「それはすぐに見つけないと!」
寮を出てからすぐに見つけないと、鳥がどんどん遠くに行ってしまう可能性がある。
「皆朝早くにごめん。俺の大事な鳥、アマリアを見つけるのを手伝ってくれないかい?」
そこにいた一同、聖夜さんからモーニングヘルプコールが来たと思われる人々は、快く承諾し、各自鳥を探しに出掛けようとする。
その際に、アマリアちゃんの見た目と特徴が書かれた紙を渡された。目を通してみると、以下の事が分かった。
一つ目。アマリアちゃんは、カナリアである。色は黄色。
二つ目。アマリアちゃんは、口が達者で人の言葉を真似する。
三つ目。アマリアちゃんは、気に入った女性の肩によくとまるという。
以上の三つを踏まえて、私達は探索に出た。
一人ずつでは作業が大変だという事で、ペアになり行動する事になったので、私は近くにいた璢夷さんとペアを組み、探索を始める。
「カナリアは野生に居ないから目立つと言えば目立つな。ただ、木々に隠れて見えないという事もあるかも知れないが」
「そうですね……、目撃証言もありませんし」
「目撃証言か……」
璢夷さんは少し困ったように軽い溜め息をつき、それから指を顔の所まで持っていき――、「指笛」を鳴らした。
それは決められたリズムのようで、丁度鼓笛隊の笛のリズムのような、「ピーッ、ピーッ、ピッピッピ」というリズムだ。
暫くして、私達の元に何羽かの鳥が集結していた。
「璢夷さんって鳥も呼べるんですか!」
これだったら、ブリーダーの仕事も出きるんじゃないだろうか。
「俺のペット達だ。」
集まったのは、烏(鴉)、鳩、鵯、目白という、この街で簡単に見られる鳥達だ。
「本当は梟や鷹も呼べるのだが……こんな住宅街にそんな鳥達が居たら騒がれてしまうからな。」
「た、確かに不自然ですよね。」
絶対そんな鳥が住宅街にいたら、通報される。だって猛禽類だし。
璢夷さんは、鳥達に日本語で用件を伝えると、その鳥達は一斉に、同じタイミングでそれぞれの鳴き声を放ち、一目散に飛び出した。
「これでアマリアを見つけたら特集な鳴き声を放つ。それを聞いたら鳴き声のする方へ進めばいい」
な、何と華麗な……と感心している場合ではない。鳥達に任せっきりにする訳にもいかないので、私達も通行人に話を聞くことにした。
「きゅるる……」
朝御飯を食べてないせいか、お腹のなり具合が酷い。
「朝御飯を食べてないのか?」
心配そうに璢夷さんが話し掛けて来た。私は素直に頷く。
「ならこれを食べるといい。」
璢夷さんがポケットから取り出したのは、一粒のチョコレートと飴玉だった。
璢夷さんのポケットからそんなものが出てくるとは思っていなくて、思わず目をまん丸にしてしまう。
「何だ?意外か?」
「えぇまぁ……。」
その前に、貴方のポケットは何次元なのか聞きたいです。
「チョコレートは空腹を抑える効果があるし、飴玉は甘味を長時間味わえるからな」
成程。ただ単に好きだからポケットへ入れている訳ではなく、そういう理由からポケットに入れている訳ですか。納得です。
「あ、有難うございます」
「礼には及ばない。まだまだあるからな」
やはり何次元なのか聞きたい。
璢夷さんから手渡されたチョコレートを口にしながら、昨日の事を思い出す。緋威翔さん、紫綺さんとチョコレート談義をした事だ。確か二人共、ビターチョコレートが好きで――。
「くるっくくくー!くるっくくくー!」
「カァーッアアアカァーッアアア」
聞き慣れない鳥の鳴き声。まさか!?
「見つけたのか!」
慌てて鳴き声のする方向に走っていく。すると前方から黄色い物体が近寄ってくる。
「くるっくくくー!カァーッアアア!」
おまけに変な鳴き声だ。さっきの鳩と烏を混ぜたような――。
「あれだな。」
璢夷さんは冷静に言うと、ポケットから何やら謎の個体を取り出す。
一体あの中には他に何が入っているのだろうか。
ポケットから取り出したのは、小さな木の塊。その塊にはネジがついている。オルゴールについているようなネジだ。
「それは?」
「聞いていれば分かる。」
璢夷さんはそのネジを左右に回し始めた。
すると、鳥の鳴き声がし始める。綺麗な透き通った声だ。何の鳥の鳴き声なのかは分からない。ただ、この状況を考えてみると多分、カナリアの声なのだろう。
前方から接近してくる黄色い物体が、すぅーっと接近してくる。そして、近くにあった木にとまった。
「鏡。お前がこれを回すんだ」
璢夷さんに指示された通りに、カナリアの声を出す何かを受け取り、ネジを左右に回す。すると先程のように、カナリアのものと思われる音が鳴り響いた。
黄色い物体、カナリアのアマリアちゃんは、警戒心を示し木から離れようとしない。
「鏡。諦めずに回すんだ」
「はいっ」
鳥を刺激しないように、小声で会話をし、私はまたカナリアの声を発する何かのネジを回す。
すると、アマリアちゃんがひゅーっと風を切って飛んできた。
逃げてしまう!?そう思った瞬間、思わず目を閉じる。少し経つと、肩に軽く何かが乗る感覚がした。
「!?」
ゆっくり目を開き、肩を眺める。するとそこには歌を歌うアマリアちゃんの姿があった。
「成功だな。寮まで持ち帰るぞ。他の皆には連絡しておく」
オルゴール的な物を回しながら、ゆっくりと歩き寮へ戻っていく。その間アマリアちゃんは、私の肩にとまったまま、たまに歌を歌いながら過ごしていた。
無事に学校の隣にある寮まで行き着くと、璢夷さんから連絡を受けたらしい聖夜さん達がいた。あまりにあっさりと連れてこれたことに驚いているようだったが、一番驚いたのは、聖夜さんだった。
アマリアちゃんを見た瞬間、駆け寄り、アマリアちゃんの名を呼ぶ。アマリアちゃんはその声に反応し、私の肩から離れ、聖夜さんの手に乗った。
聖夜さんは安心したようにしてから、こちらを向き頭を下げた。ありがとう。そう呟いた聖夜さんは、頭を下げたまま、上げようとしなかった。多分、泣いているのだろう。男として、涙を見せるわけにはいかない。ましてや、セイラさんを含む私達の前で。
少したって、涙を拭うような仕草をしながらゆっくりと顔を上げた。その目はまだ少し赤い。
「それにしても驚いたなぁ、まさか月華ちゃんが見つけてくるなんて。」
「璢夷さんのお陰ですよ。」
璢夷さんがあのカナリアの声の鳴るものを持っていなかったら、アマリアちゃんは私の肩にとまらなかっただろう。
「璢夷さん、あのカナリアの声がするものは何だったんですか?」
「木とネジが擦れる音を利用して、鳥の鳴き声に聞こえるようにしたものだ。名前は分からん。」
「そんなものあるんだ・・・」
「そうだ。欲しければ作ってやるぞ。」
ま、まさかの自作でしたか。
「じゃあ、作ってもらおうかな」
璢夷さんの活躍により、早く捜索が終わった。朝起きたのが大体九時頃、そして捜索が終わったのが、九時半頃だ。
30分で捜索が完了するという凄い結果になった。
アマリアちゃんが見つかった事で、聖夜さんに集められた私達は解散し、また個人行動が始まった。
私は、昨日で色んな人に振り回され体が悲鳴をあげていたので、午前中は自室で暫くゆっくりする事に決めた。
今回は月華の他に、聖夜、璢夷にスポットライトを当ててみました。
謎次元ポケット(?)を持つ璢夷と、鳥を可愛がるという一面を持つ聖夜の話でしたね。
さて、月華はどうやら昨日今日の件で疲れているようです。
部屋にこもる事にしましたが、ただ部屋で過ごすだけでは終わりません。
途中で誰かが訪問してくるようです。
では次回もお楽しみに!




