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blanket  作者: 璢音
ちょっと休憩休日編
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37/139

休日【月華編Ⅲ】

ふぅむ。思った以上に長引きますね、休日編。

 二人と解散して、また一人になった私は、気持ちの整理の為、ショッピングセンターの近くにある、やや広めの公園へと向かった。


 公園には、休日だからか沢山の親子の姿が見える。それぞれがキャッチボールや、サッカー、縄跳び等をしており、見ていて微笑ましい。


 私は公園内にあるベンチへと腰掛け、遠くに見えるバドミントンをやっている人達を眺め始める。


 最初は穏やかにラリーを続けていたのだが、途中から豹変し、激しい戦いになっていった。私はその技術力に感心すると共に、そのプレイヤーに関心を抱いた。


 少し近付いて見てみる。さっきの戦いは激しさを増していた。わざと遠めに飛ばしたり、近めに落としたり、左右に相手を振ったり。


 あれだけの技術力があれば、バドミントンも楽しいのだろうな、と思い見ていると、何だか見覚えのある顔。


「真希さんに、真琴さん?」


 よくよく見てみれば、その近くにレジャーシートを敷いて、ランチを楽しむ女子の姿も見えた。


「あら、月華ちゃんじゃない」


「こんにちは、ノエルさん、セイラさん、政宗さん、真里亜さん、それと――」


 レジャーシートに見事に寝転がる一人の男性。こちらに背を向けている為、誰だか分からない。


「あぁ、そいつはアルバートっていうの。セイラ達の家に住む居候よ」


「いっ、居候!?」


 そんな情報、初めて聞いたんですが。


「……ん……?なんや、また増えたんか?」


 そのアルバートと呼ばれる男性が、眠そうな声で聞く。もそもそと動いた後、起き上がりシートに座った。


「おっ、また女の子やな」


「あ、因みにコイツは関西人じゃないわよ。エセ関西弁だからね」


 ノエルさんが私に言う。確かに、関西弁のような話し方ではあるが、変な感じがする。所々でイントネーションが違ったり、言葉も、完璧な関西弁ではない。


「そ、そうなんですか……」


「所で自分、名前は?」


「えっ、あぁ、私ですか?……私は鏡 月華です」


「月華ちゃんか~宜しく頼むわ!」


「宜しくお願いします……」


 何だかこの人の明るさに圧倒されて、上手く話せない……


「所で、皆さんで何を?」


「ピクニックよ」


 真里亜さんが、籠を持って笑顔を見せる。籠の中には、先程皆が食べていたサンドイッチが見えた。


「へぇ、丁度天気も良いし、ピクニック日和ですもんね」


「久々に自由に出来るからね……真希も、楽しそうで良かった。」


「真琴も楽しそうだよ」


 真里亜さんと政宗さんがほのぼの会話を交わすなか行われるのは、本気の勝負に見える。楽しそうというよりは、躍起になっているというか……


「僕が勝ったらセイラさんと二人で遊びにいくからね!」


「あぁうん。そうしなよ。でも僕が勝ったらこのまま皆で遊ぶんだよ!」


 セイラさんと二人きりになりたいらしい真琴さんと、皆で遊びたいと言う真希さん。口調や声が似てるせいか、判別がしにくい。ただ、何となく雰囲気で分かる。


 私は女子とアルバートさんが座るシートに入れさせてもらった。


「何でこんなバトルが?」


 私がノエルさんに耳打ちすると、ノエルさんは声を潜めて訳を話してくれた。


「実は、最初に真琴がセイラを遊びに……本人曰くデートに誘ったらしいんだけど、セイラは皆の方が楽しいって言ったらしくて……それを聞いた真希が皆を誘ったって訳」


「じゃあ、真琴さんからしたらデートのチャンスを真希さんに壊された事になるんですね」


「それで怒った真琴が、真希とバドミントンで勝負する!って言い出して、この有り様よ」




 相変わらず一進一退の攻防を繰り返す二人に、何だか笑いが溢れる。


「二人共、意地になりながら楽しんでるんですね」


「そうね。時間もどんどん減っていくし、むしろ真琴は諦めてるみたいだわ」


「あいつら、いつまでやってんやろな」


「……決着がつくまでだと思いますよ……真琴は、負けず嫌いだから」


「真希ってば、意地張って――……」


 どっちかが折れれば済む話なのに、どっちも折れないから終わらない。


「ねぇ、アタシ達も何かやりましょうよ。このまま観戦してるなんてつまらないし」


「でもバドミントンの道具しか……」


「じゃあ鬼ごっこでもやる?」


 そう言ったのは、現在バドミントン中の真希さん。やはり、皆で遊ぶ事に関心があるらしい。


「じゃあ試合はまた今度っと」


 真琴さんが打ったシャトルを左手で見事にキャッチする。


「真琴さんもやりましょう?」


 セイラさんが言ったせいか、真琴さんも機嫌を直し、参戦する。


 鬼を決めるために私達は、レジャーシートを囲むようにしてじゃんけんをした。


「最初はグー!じゃんけん」


「ぽんッ!」


 こんな大人数がいるにも関わらず、一発で勝敗が決まった。ほとんどの皆がパーを出してる中、真琴さんと真希さんだけがグーを出していたのである。


「まさかのまさかで!?」


 二人が鬼、である。さっきまで敵対していた二人が味方になるという事態になった。


 鬼が決まった事で、鬼ごっこが開始される。


 鬼が数を数えている間に逃げ出す私達。何だか小学生みたいだ。


「きゅ~う、10!よーし行くぞー!」


 無邪気に皆を追いかける真希さん。皆で鬼ごっこをしているのが余程楽しいらしい。


「待てぇええぇ」


 一方真琴さんは、目当ての人を必死に追いかけている。


 勿論、例のあの子だ。


「えっ、真琴…?」


「やっぱり!セイラだけを狙うつもりね!」


「きゃーっ」


 当の本人達は私達を気にせず、鬼ごっこに集中している。


 ただ予想外なのは、意外にセイラさんが走るのが早く、真琴さんが捕まえられないという事。


「セ、セイラ速いっ」


 流石に真琴さんも驚いたのか、そう言葉を漏らす。だが、諦めてはいない。目が物語っている。


「政宗捕まえたーっ」


「う……やっぱり捕まった……」


 ロングスカートを着ていながらも、善戦していた政宗さんが捕まった。


 それに続くように次々に女子が捕まっていく。全て真希さんの手によって。


「真里亜さん捕まーえたっ」


「あっ……」


「ノエルも捕まえたッ」


「むっ!?」


 ノエルさんは、木陰で隠れつつ休憩していた所を捕まった。残るは私とアルバートさん、そしてセイラさんだ。


 ちなみに私はと言うと、真希さん真琴さんとはかなり離れた場所にある草陰に隠れている。


「っ、はぁ……セイラが捕まんないっ……」


「真琴~頑張ってよ~。まだ1人も捕まえてないじゃーん」


「うっ、煩いよぉ!これからっ、これからだから!」


 そう言いつつ狙うのは相変わらずにセイラさん。しかしセイラさんの走るスピードは変わっていない。そして、真琴さんは徐々にスピードが落ちていっている。


「じゃあ二人で協力して……」


「やだ!僕が一人でやるから真希は違う人をっ」


「もー、我儘だなぁ、真琴は~。あ、アルバートタッチ!」


「何ぃっ!?」


 ついに残るは私とセイラさんだけだ。……と思っていると、急に視界から真希さんが消えた。何処だろうと思って見渡していると、肩をぽんぽんと叩かれる感覚。焦り振り返った先にはやはり真希さんがいた。


 いつの間に。


「月華捕まえたっ」


「ひゃっ!」


 呆気なく私が捕まった為、残るはセイラさん一人だ。


「真琴~。後セイラだけだよー」


「はいはいっ!」


 元気な声と裏腹に、差は広がっていく。


「クスクス」


 ミニスカートにブーツという女性らしい姿で、尚且つ走りにくい姿な筈なのに、それを感じさせない走りっぷり。


 しかも、その表情は余裕そのもので、クスクスと笑いまで出ている。


「な、なんか悔しい……ッ」


 真琴さんの前を走るセイラさんの前に、真希さんが挟むように走っていく。しかしセイラさんはそれを予想したかのように、方向転換をし、見事にかわしていく。


「す、凄いねセイラさん……」


 だが、その数分後異変は起きた。さっきまで順調に走っていたセイラさんが、ある一点を見た途端に急に遅くなったのだ。


 先程見た走りとは全く違う。軽くランニングしてる程度の速さになっている。しかもその顔は、若干赤い。


「!?」


 勿論、差はすぐに縮まり、見事に真琴さんに捕まってしまった。


「やっと捕まえた…」


 やれやれというようにしゃがみこむ真琴さん。走りっぱなしだったその足に負担がいっているのだろう。


 私は、セイラさんが急に遅くなった理由が気になり、その異変が起きた場所を見た。すると、公園内にある丘の上に人影が見える。


 もしかしてあの人が原因なのだろうか?


「ふー、運動したら疲れちゃったよ~」


「……凄かったよ真希。次々に人を捕まえて。」


「うん、凄いと思う。足、速いんだね、真希くんって。」


「確かにそうね」


 向こうに見える人影が気になった私は、反省会みたいなムードになったこの場を背に、丘へ走り出した。


「どないしたんやろ、月華ちゃん」


「走り足りないんじゃないかな?」










 丘の上までかけ上がると、そこには下を見下ろす聖夜さんがいた。


「せ、聖夜さん何でここに?」


「えっ?あぁ、暇だったからだよ。誰も遊ぶ人が居なくてね。それより、鬼ごっこ楽しそうだったね。」


「見てたんですか?」


「勿論。皆が捕まっていく様も見てたよ。後、ダサイ奴もね」


「………」


「セイラが俺に気付いた瞬間の顔、もっと間近で見たかったな。」


 やはり。セイラさんは聖夜さんを見て急激にスピードが落ちたんだ、間違いない。……でも、何で?


「折角だし、顔出してこようっと。鏡さんも行くでしょ?」


「はい」


 聖夜さんと共に丘を降りている間、ずっと考えていたが、やはり理由が思い付かない。


「やぁ、皆。随分楽しそうだったじゃないか」


「聖夜も入れば良かったのに」


 真希さんが残念そうに言うが、真琴さんが止めに入った。


「そ、そんな事したら……!」


 これまた謎の反応を示す真琴さんに便乗して、セイラさんまで変な反応を示す。


「や、止めた方がいいと思うぞ……ハッ!いやっ、その……止めた方が良いと思いますよ」


 一瞬、璢夷さんのようなキリリとした話し方になるが、すぐに元の話し方に戻った。これにも訳があるのだろうか?


「えー、何で~?楽しそうだと思うんだけどなぁ……」


「あぁ、多分俺が出たら色々大変になると思うよ。」


 聖夜さんまで、真琴さんやセイラさんと同じように、止めた方が……という反応を示した。やはり、この一連の謎は繋がっているのだろうか。


「……あ!そろそろ帰らないと……真希、行こう…」


 時計を確認した政宗さんが呟く。只今の時間は、四時半。公園で遊んでいた子供達がちらほら帰り出す時間だ。


「そうだね、帰ろうか」


 真希さんは政宗さんに賛同すると政宗さんに駆け寄り、そして挨拶をして二人は帰っていった。


 それを見て、アルバートさんが呟く。


「本当に仲が良いよなぁ。あの二人は」


「そうね」


「ピロリロリリリン♪」


「?」


「あ、俺やわ」


 謎の音の正体は、携帯の着信音だったらしく、その携帯の持ち主、アルバートさんが電話に出ると、顔をしかめてから電話を切った。


「セイラ、俺らも帰って来いって」


「お父様から?」


「そうや」


「……じゃあ私も帰ります。じゃあ皆さん、月曜日に会いましょう」


 アルバートとセイラさんも肩を並べて公園から去ってしまった。


「わ、私も夕飯の支度があるので帰ります」


 真里亜さんが申し訳なさそうに呟くと、真琴さんがハッ、と何かを思い出したような顔をした。


「そうだ!僕、亜里亞からおつかい頼まれてたんだった!」


 二人が去ったのを確認すると、この場に残ったのは後三人。私と、聖夜さんと、ノエルさんだ。


「アンタが来ると、良いことないのよね……」


「それはごめんね?でも俺にはどうしようも出来ないから。」


 何だか良くない雰囲気。二人はどうやら仲がよろしくないようだ……。


「またアンタ、セイラと何かあった?」


「別に?何もないよ?」


「……なら良いけど。」


「さてと、邪魔者は帰ろうかな。猫さんは機嫌が悪いみたいだし」


「今は人間よ!」


「あぁ、そうだったね。ごめんごめん。ついその耳を見ると」

「あー、もう分かったわよ。帰って。帰って頂戴っ!」


 シャーッ、と猫が威嚇したような声を出すと、聖夜さんはおぉ怖い怖い、と言い残しその場を去った。


「全く、本当に嫌味な奴よね。あんな奴の何処が良いのかしら。」


「あの~、全く話についていけないのですが。」


「……あぁ、そうね。じゃあ、貴女には話してあげる。信用できそうだし。とりあえず、場所を移しましょうか。」

 ノエルさんに連れていかれたのは、その場所から離れた別の公園にあるベンチだった。時間が時間だからか、辺りに人影はない。


「あのね、私と同じ名前を持つアイツは――」


 ノエルさんの口から話される「事実」に、私は驚愕する事になった。まさか、あの人がそんな存在だったなんて――。

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