休日【月華編Ⅰ】
今回は、ほのぼの(?)した休日の話。本編の進行からは軽くずれてます。
色んな人に振り回される月華ちゃんをお楽しみ下さい。
【↓↓↓編集後記↓↓↓】
休日を書くのが楽しすぎてついつい長くなっちゃった!
戦闘中は暗い事がおおいからその反動でやたら明るいね!
長くなりすぎたのが原因で次回は続きになっちゃった!読者様、何かごめんなさいっ!
(*´Д`*)<早くあの子を出したいなぁ~☆
今日は、土曜日。休日は学校が無いので、依頼も受けないでゆっくりと過ごせる。
……とは言っても、出来れば今すぐに依頼主の場所へ行きたいという思いは変わってない。
だけど、今日は大人が……仕事として受けてくれるというので、安心して過ごせる。
ちなみに、仕事をしている人も、学校を卒業した人らしい。
私は、休日を満喫すべく、私は寮を出た。
何処と無くふらふらと町へ歩き出す。最近依頼をこなしっぱなしだった為に、こんな日々は久々だ。
日の光を浴びて、何だかふわふわした気分になる。スキップとかしたいような、そんな感じ。私はついに我慢出来なくなってスキップをし出した。
「……鏡?何やってるんだ?」
「えッ?」
誰かに名前を呼ばれて振り返る。目の前に人がいると……璢夷さんが居ると分かった瞬間、顔から冷や汗が流れるのを感じた。
「み、見ちゃいましたか?」
私の歳でスキップする人など居ない。普通そんなことするのは、幼稚園生や小学生だ。段々と顔が熱を帯びていく……
「まぁ、そうなるのも分かる。気にするな。」
きっとフォローしてくれてるんだとは思うんだけど……実際フォローになってない。恥ずかしいのには変わりないから。むしろ、スルーしてくれた方がよかったよ……
「散歩か?」
「うん。天気もいいし、暇だったから。寮で休む気にもなれないし。」
「そうだな。丁度俺も散歩してきた所だ。だが、少し足りないなと思ってたんだ。鏡、ついて行って構わないか?」
「うん!勿論。一人で行くより、数人で行く方が楽しいよね」
散歩から寮へ帰る途中だったという璢夷さんと合流し、寮から少し歩いた場所にある、ショッピングセンターへと向かった。
「何か買うものがあるのか?」
すぐ横を歩く璢夷さんが語りかける。私は、特に買うものはなく、ウィンドウショッピングでもしようかと思ったと、素直に気持ちを伝えた。お金を余り使えないという理由から、あまり大きな買い物も出来ない。ならば見るだけでもと、そういう事である。
「そういえば、先程散歩に行った時も、他のクラスメイトに会ったぞ」
「例えば誰ですか?」
「まぁ、俺の家族は除いてだな……、星本や雷野、それに緋威翔も居たな」
緋威翔さんだけ名前で呼んでいるのが少し気になったが、どうやら休日に出掛ける人は多いらしい。
「俺達もまた、誰かに会うかもしれないな。」
「そうですね。」
ショッピングセンターに到着し、何の店から見ようかと考えていると、不意に誰かの視線に気が付く。
「?」
璢夷さんを見てみると、やはり此方を誰かが見ていたらしく、辺りをキョロキョロと見回していた。
「今、誰かの視線が――」
そう言い掛けた時だった。
「あら、璢夷くんと鏡さんじゃない?二人で何処へ?」
深い藍色の日傘をさし、薄紫のワンピースを来た霧雨さんが私達の前に現れた。
一体何処から出てきたのかは分からない。
「そういえば、璢夷くんとはさっきも会ったわね」
「そうだな、散歩途中にも会った。偶然は重なるものだな」
そう言う璢夷さんだか、実際は違うと思う。あの一瞬感じたただならぬ“殺気”から、霧雨さんはあとをつけて来たと私は推測する。
「処で、二人は何処に行くの?」
「俺は只の付き添いだ。散歩の延長線だな」
「私はこれからウィンドウショッピングでもと……」
「なら丁度良かったわ。私、買いたいものがあったの。鏡さんもついてきて下さる?」
彼女の中では、璢夷さんがついてくるのは確定らしい。
私も特に何処を見ると決めて無かったので、霧雨さんの買い物に付き合う事にした。
霧雨さんにつれられて向かった先は、何やらお洒落な洋服屋さん。一階と二階にまたがる大きなお店だ。
「お前はいつもここで買い物をするのか?」
「えぇ、私はいつもここで服を買ってるわ。このワンピースも、ここのものよ」
二人で会話が進んでいく。私はついてきただけなので、特に言う事もなく、二人の会話を聞いていた。
それにしてもこの二人の光景が、カップルに見えて仕方ない。洋服選びをカップルでするのを見ているようだ。
「璢夷くん、これはどうかしら?」
あるスカートとトップスを試着した霧雨さんが、試着した姿を璢夷さんに見せて言う。
その顔は満面の笑みだ。多分、彼女の視界に今、私は居ない。
「……何故それを俺に聞く?俺より鏡に聞いた方が良いんじゃないか?」
天然なのか、私に話を振る為かは知らないが、璢夷さんは霧雨さんに向かって言う。
霧雨さんは少し残念そうな顔をして、私に質問してきた。
「……で、どうかしら鏡さん?」
「えっと……」
二人の間に、気まずい空気が流れ出す。それは霧雨さんから放たれる凄い殺気の影響だ。
私は、霧雨さんを見て、また璢夷さんに話を振れと思っているのだと認識した。
「……似合ってると思うよ。ね、ねぇ?璢夷さん?」
「あぁ、そうだな」
思いの外、あっさりと軽く言う璢夷さん。私は霧雨さんの顔色を伺う。
どうやら作戦は成功したらしい。霧雨さんは満面の笑みを浮かべていた。
「じゃあこれ、買おうかしら。」
そう言って霧雨さんは直ぐにカウンターへと向かっていった。
「……霧雨さんとはいつもあんな感じで?」
「あぁ、やたら俺に意見を聞きに来るのだが、どう返事をしていいのか分からなくてな、困っている。」
どうやらこれは日常茶飯事らしい。璢夷さんに同情する。多分、霧雨さんは璢夷さんに好意を寄せているのだと私は思う。だから私の事が視界に入らないし、璢夷さんにばかり意見を求めるのだと思う。
逆に璢夷さんは、皆で仲良くと思っているタイプだ。誰か会話に加われない人が居れば、進んで話題を振る。だから、さっきみたいになるのだ。
「霧雨さん、他に買うものはありますか?」
私は敢えて、霧雨さんに聞いた。
「そうね……、特にはないかしら。あ、でも寄りたい場所はあるわ」
「……と言うと?」
「ゲームセンターよ」
霧雨さんがゲームをするタイプとは思えない。とすれば、私達が次に何をやるのかが直ぐに分かる。
早速私達は、今居る一階からエスカレーターを使い五階まで上がった。
エスカレーターを降りると、何やら女の子用の雑貨店と、帽子等を売っているお店が見えた。
その間を縫うようにして、エスカレーターから見て右側の奥へと進むと、ペットショップがある。更にその奥に、目的地であるゲームセンターがあった。
少し前までは、某音楽ゲームや小さなクレーンゲーム等が結構あったのだが、今は音楽ゲームはプリ機の端へと追いやられ、ゲームセンターはプリを取るだけの場所へと変貌していった。
そう、私達の目的はプリクラ。きっと霧雨さんは、璢夷さんと一緒に写りたいんだろう。
ゲームセンターを慣れないように見つめている璢夷さん。どうやらあまりゲームセンターには来ないらしい。
「入るのか?」
「えぇ、一緒にプリクラ撮りましょう!」
早くも張り切る霧雨さん。その傍らで私は愛想笑いを浮かべる。
璢夷さんを引っ張るようにしてプリ機に入る三人。入ると同時に霧雨さんが硬貨を投入する。
画面をタッチするのも様になっている。これは相当撮りなれているようだ。
「背景を選んでね!」
プリ機が音声で誘導していく。霧雨さんはそれを聞かずにどんどん指で背景をタッチしていく。
最終的に、ピンク、白地に黒のドット、黄色、薄ピンク、白と黒のボーダー、白地にピンクのハートがついている背景を選んだ。
「撮影を始めるよ!」
あまり大きく写りたくないので、出来る限り後ろに下がる。……が、上から垂れてくる黄緑色の幕が肩に当たり、慌てて前へ行く。
プリクラなんて普段撮らないから、焦る。
璢夷さんも同じようで、画面端ギリギリの場所に立っている。その璢夷さんを引っ張るようにしながら抱き着く霧雨さん。大胆すぎる。
「なっ、何するんだ」
「もっと中心に写らないと!ほら、笑って!」
「わ、私はどうしたら……」
「3…2…」
私はどう写って良いか分からず、しゃがみ込みカメラの視界から消えた。
「パシャッ」
カメラの音が聞こえ、安心して立ち上がると、もう次の画面になっている。そうか、まだ五枚残ってるんだ。
「月華ちゃん!写りなよっ」
そう言う霧雨さんの顔は、上機嫌だ。さっきまで鏡さんと呼ばれていたのが嘘のように、月華ちゃんと呼んでいる。きっと二人きりで写れて嬉しいのだろう。
「鏡も写らないと意味が無いじゃないか」
折角三人で来たのだから、と付け足す璢夷さん。
「3…2…」
「パシャッ」
二枚目は、何とか頑張って写ってみる。ちゃんと笑えているかどうかが不安だが。
その後も何とか順調に写り、撮影は終わった。
「次は目の大きさや明るさを選んでね!」
手馴れたように、淡々と指で画面をタッチする霧雨さん。目の大きさは最大、明るさは二番目に明るいものを選んだ。
「次は落書きだよ!右側のスペースに移動してね!」
明るい声が、落書きは右側のスペースでやるのだと告げる。
「落書きって……?」
「プリクラに文字を書いたりスタンプを付けたりするのよ。二人でね」
二人でね、を妙に強調する霧雨さん。やはりここも璢夷さんと二人きりが良いという事か。
「わ、私は――」
落書きなんてしたことがないからと璢夷さんに任せるつもりで口を開く。しかし――
「そういうのは、雷野と鏡でやった方が良さそうだな。じゃあ俺はそこらへんに居るから、終わったら言ってくれ」
そう言い残し、璢夷さんはスタスタとその場を去ってしまった。途端に場が静まり返る。私は焦り様子を伺う。すると、霧雨さんが話し掛けて来た。
「……仕方がないわね。二人でやりましょうか」
そう言い、幕のような物をくぐる霧雨さん。私もそれについていく。
落書きスペースは、さっきの撮影場にあった液晶パネルと同じような物があり、その左右には、ペンのような物がついている。霧雨さんの仕草を見ているとどうやら、指でタッチする代わりにこれを使うらしい。
「ペンで画面をタッチしてね!」
撮影の時と同じ声が流れる。霧雨さんは、ペンで画面をトン、と軽く触れた。
その瞬間、私達が写ったプリクラらしきものと、パレットのような見た目の画面が出てきた。霧雨さんに各説明を受け、落書きを開始する。
「ねぇ」
二人でプリクラに落書きをしている途中、霧雨さんが私の方を見ずに語りかける。
「貴女は好きな人、居るの?」
ふとあるイメージが浮かぶか、すぐに首を振った。
「居ないの?」
「はい、居ません」
「そう。じゃあ話すわね」
トントンと次々にペンでタッチしていく霧雨さん。その霧雨さんが担当するプリクラは見事に飾られていく。
「私はね、見ての通り璢夷くんが好きなの」
「えぇ、見てて分かります」
「だからね、協力してほしいのよ」
「な、何をですか?」
余りに急な事で、私は思わず聞き返す。
「なるべく、私達の間に来ないようにしてほしいのよ」
それなら、今の時点で出来ている。さっきから私は、霧雨さんの隣、つまり端に立っていた。だから璢夷さんと霧雨さんの間には一度も立っていない。
「まぁ、貴女はわざわざ人を引き裂くような真似はしないとは思うけど」
「そんな他人が傷つくような事はしません」
黄色が背景のプリクラに、星のスタンプをつけようとする。しかしつけようとした星も黄色だったので、その隣の白の星をプリクラにつけた。
「私ね、一目惚れだったの」
急に語り出す霧雨さん。私は冷静になり、話を聞く姿勢をとる。
「あのカッコ良さ、クールな性格、優しい気遣い……最高なのよ」
「そ、そうなんですか……」
「だけどね、あの性格だから、やたら女が近寄ってくるの」
実際、男女構わず仲が良いようには見えるが、緋威翔さんの時のように、女性だけが群がるという事は今のところない。
「この前も、私が璢夷くんを尾行した時――私より歳上のナイスバディな女の人が話し掛けてきてたのよ、しかも英語で!あれは璢夷くんを口説いてたに違いないわ!」
単に道を聞いているだけとは思わなかったのでしょうか。
「そ、それは……」
「それに、ティッシュ配りのお姉さんも璢夷くんの事をジッと見つめていたし!」
……ってよく聞いてれば、霧雨さん、璢夷くんを尾行してるんですか!もしかして今日も……?
「今日、まさか女子と……貴女と二人で歩くとは思わなかったわ……」
やっぱり尾行してたんだ。だからあの時視線を……。嫉妬されてたんだ、私。
「私は別に……」
「えぇ知ってるわよ。見てたから。本当、羨ましいわ、璢夷くんと散歩だなんて。まるでデートじゃない」
それは違うような気が――。
【†璢夷side†】
全く雷野には困ったものだ。周りに毒を吐く癖は止めた方がいい。
とりあえず、二人が落書きをしている間暇だと思い、何となくゲームセンターを回る。
すると、新しく入ったらしいゲーム台に何人かの列が見えた。
そんなにゲームが面白いのだろうかと思い、そのゲームへ近寄る。
どうやら、音楽系のゲームらしい。流れてくる音符と同じ色のボタンをタイミング良く押せば良いようだ。
「ん?もしかして璢夷?」
声に気付きその方向をむく。どうやら声の主は、列に並んだケインのようだ。
「お前もこのゲームをやるんだな」
「あぁ、面白いんだぜこのゲーム!めっちゃ難しくてさ!」
「そのゲームをやりに、ここまで来たのか?」
それを聞くと、ケインは明らかに怪しい反応を示した。不味い、というような顔をして、指で頬を軽く掻いている。
「……話すから、引くなよ?」
「あぁ、大丈夫だ」
「それがさ、今日、霧雨ちゃんが此処にいるって情報があったからさぁ」
「誰からだ?」
「そ、それは企業秘密だって!ま、まぁ、それで、霧雨ちゃんに会うためにここまで来た訳さ!」
「つまり、ストーカーだな」
【†ケインside†】
璢夷にはっきりとそう言われ、俺は正直しょげた。だってあの璢夷にストーカーって言われたんだぜ?ショックだぜ。
「まぁ、ストーカーをしているのはお前だけではないと聞いている。気にするな」
……でも流石璢夷。器が広いな。
「で、霧雨ちゃんは何処にいるか知ってるか?」
「今、そこのプリクラ機で鏡と落書きをしている」
「へー、じゃあすぐそこにいるのかぁ……」
愛しの霧雨ちゃんが、すぐそこに……!
今にもその場へ行きたい気持ちをぐっと堪え、璢夷に話を聞く。
「なぁ、璢夷。お前さ、霧雨ちゃんの事、何か知ってるか?」
「例えば、どういう事だ?」
「好きなタイプとかさ」
「……好きなタイプの情報は無いが、好きな食べ物等は知ってるぞ」
おっ、これは良い情報がきそうだな。そう俺は期待して、懐からメモとボールペンを取り出す。
「ふんふん、それで?」
「好きな食べ物は、苺のタルトだ」
「い、苺のタルト……!」
それは俺が作れる範囲を越えてるぜ!いくらなんでも苺のタルトなんてそんなオシャレな食べ物、作れねぇよ。
「どうした?」
「いや、苺のタルトなんて作れないからさぁ」
「あぁなんだ、手作りの物をあげようとしてたのか。なら作り方を教えるから、心配ない」
「ほ、本当か……!?」
こういう時、璢夷は本当に頼りになる。だってアイツは「万能」だから。アイツに出来ないものは、無い。
「いつ作るんだ?」
「今日、今すぐにでもだ!」
【†璢夷side†】
俺達が話している間に、音楽ゲームの列に並んだ人は減り、とうとうケインの番になった。ゲームの内容が気になった俺は、ケインが音楽ゲームをやる姿を眺め、そのゲームの画面を覗き込む。
「よぉおし、見てろよ璢夷!」
音楽が流れ出すと同時に音符が画面に出てきて、音楽に合わせて流れてくる。画面の真ん中にある円に音符が重なると同時に音符に対応した色のボタンを押していく。
暫く見ていると、曲が止み、結果の画面に変わった。
「Sか。まぁまぁだな!ほら見ろよ璢夷!このゲージが溜まれば溜まるほど高得点だぜ!全部完璧に出来てSSSだから、俺も中々だろ?」
「そうだな。」
ゲージは八分程溜まっている。80%ぐらい出来ているという事だろうか?
「璢夷もやってみるか?」
「あぁ、楽しそうだしな。やらせてもらうぞ」
【†ケインside†】
俺と璢夷が場所をチェンジし、音楽を選ぶ。
「どれが難易度なのか、良くわからないな。ケイン、適当に曲を選んでくれるか?」
「あぁ、分かったよ。じゃあ俺の好きな曲をやってくれ」
「分かった」
俺の好きな曲、それはこのゲームで最高の難易度の曲、“shooting star”。流星の名の如く、殆ど見えない程音符が早く流れるのが特徴だ。
スタート画面になり、俺は璢夷を見つめる。
出来る筈はないのにと、俺は内心苦笑した。だって俺でさえも、この曲はクリア出来ないのだから。
曲が始まり、俺は新たに苦笑を洩らす。それは、目の前に広がる光景が信じられなかったからだ。
まるで楽譜を知っているかのように、いや、暗譜しているかのような、素早い反応。それだけじゃない。全て完璧のタイミングでボタンを叩いているからだ。
後ろに並んだオタク達も、流石に驚いたのか必死に携帯を弄っている。動画を撮る者、掲示板サイトに呟く者と色々だけど、考えていることは皆同じ。
“こいつは神だ”
曲が終わり、結果画面になる。ゲームはマックスまで溜まっており、スコアは今までの最高のスコアを越えている。新記録だ。しかもノーミス。
その瞬間、後ろからやべぇという声がちらほら溢れ出す。そして、璢夷が振り向いた瞬間――。
オタク共が群がるように璢夷に話し掛けにいった。
「なっ、名前は……っ!?」
「璢夷だ」
「何であんなに出来るんですか!」
「知らない……というか出来てたのだな。良かった」
「えっ……?」
皆から漏れる疑問の声。そう、コイツは初見(楽譜を初めて見た状態)だ。
「ま、まさか初見……?」
「そうだよ、初見だよ。このゲームさえ初めて知った奴だ」
俺が付け加えると、どよめきが起こった。
「ま、マジかよ……」
「神だ!神が降臨した!」
「やべぇええええ」
「?、何だか知らんが俺は失礼するぞ」
「あ、ちょっと待てって璢夷~っ!」
その場を去る璢夷を、慌てて追う俺。その後ろにはまるで崇めるような視線をしたオタク達がいた。
後でサイトを見てみると、璢夷の件は伝説として語られていた。
【†璢夷side†】
そろそろ落書きも終わる頃かと思い、プリ機の場所へと戻る。するとプリ機の近くにある小さな台の場所で、プリクラを鋏で分けている雷野と、それを見守る鏡の姿があった。
「あっ、璢夷さんお帰りなさい」
「もうちょっとで切り終わるから、待ってて」
二人が俺の後ろに居るケインを確認すると、鏡はケインに挨拶し、雷野は嫌そうな顔をした。
「何でアンタが此処にいるのよ。この前も会ったわよね。まさかストー……」
「霧雨ちゃああぁん!会いたかったよおおぉ!」
相変わらずの二人に苦笑いしながら、俺は鏡に渡されたプリクラを眺めた。
……やはり、笑えていなかった。鏡と雷野は笑っているのに、俺だけ表情が固いのだ。
「いいなぁ、璢夷はさぁ…霧雨ちゃんとプリクラ撮れて……」
「アンタは他の子と撮ればいいでしょっ!」
「そんな冷たくあしらわないでよ霧雨ちゃん……、あ、そうだ。璢夷!例の件、今すぐに準備するから、お前も来いよ!」
【†月華side†】
何とか霧雨さんと二人で落書きが終わり、璢夷さんと合流した。
その場にケインさんが来たことにも驚いたが、それより驚いたのは、ケインさんに対する霧雨さんの反応だ。
いくらなんでも冷たすぎる。私や璢夷さんと話している時と大違いだ。
少しの間、二人がギャーギャーやっているのを遠目で見守り、霧雨さんが切ったプリクラの一部を璢夷さんに手渡すと、ケインさんが何やら璢夷さんに話し掛けている。
話が終わると、璢夷さんが私達に背を向けた。
「すまん鏡、雷野。俺はやることが出来たから、帰らさせてもらう」
「えっ、どういう事よ?」
「ケインの手伝いをする事になってな」
「俺がお料理レッスンを頼んだんだよ」
「じゃあそれ、私も参加するわ。ケインがいるのは気にくわないけど、璢夷くんが居るなら別よ。さ、行きましょ」
「え、ちょっ、私は――」
「すまん、じゃあな」
三人は私を残して去ってしまった。一人残った私は仕方なくまたウロウロし始める。
携帯を見てみると、既にお昼になっている。どうりでお腹が空くはずだ。
私はお昼ご飯を食べるべく、食事処を探して歩き出した。
最初は璢夷と合流しショッピングセンターへ。そして璢夷を尾行していた霧雨と合流し、服屋とゲームセンターへ。更にそこで霧雨を探しに来たケインと合流したものの、ケインさんのお料理教室が原因で一人になってしまった月華。
お昼を食べようと歩き出すが、次は誰と会うかなぁ?(笑)




