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blanket  作者: 璢音
第三章:戦い
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報告

今回は次の武器所持者との話へ行く前の、皆と再会したり、先生に報告したりする回。


 乙波くんと晃さんの件が見事に収まった事で、今回私達には収穫があった。


 それは、「武器に溜まった負の感情を乗り越える事で武器は元の物に戻る」ということ。

 まだどのテレビでも報道されていない、しかもこの目で見た、確かな情報だ。


 私達は、来た時と同じように電車に乗り、学校の近くの駅で降りてから学校へ徒歩で向かった。

 私達の足取りは軽く、時折笑顔も溢れた。会話は二人の事で盛り上がり、あんなに運動した後とは思えない程、軽々と学校まで歩く事が出来た。


 学校の近くにくると、見慣れた風景が私達の目の前に広がってくる。木々も、家々も、店も、私達が知っている「日常」だ。

 少し前まで、見知らぬ土地にいたせいか、この状況を見て安堵の息が洩れる。


(帰って来たんだ……)


 たった1日の……しかも数時間の事だった筈なのに、もう昔に感じる。それほど色々あったという証拠だ。


 私達がいつも潜っていた校門を通ると、カインさんが私達に言った。


カイン「さて、学校に着きましたね。皆揃っていますね?」


 暫し班で行動していたせいか、カインさんの癖なのか、カインさんはいきなり点呼をとり始めた。


カイン「……おかしい、一人足りない……」


 数え終えるなり、深刻な顔をして呟いた。私は一人足りないという言葉に反応し、皆の顔を順に確認していく。


 セイラちゃんに、ケインさん、私にカインさん。今回はノエルさんは来てないから、あと一人ーー。その一人が誰なのかに気付いた私は、余計に驚く結果になった。


月華「緋威翔さんが居ない!」


 そう、緋威翔さんがいないのだ。


ケイン「緋威翔のやつ、迷子かよ~」


 軽く馬鹿にするような言い方で、ケインさんが笑う。そんなケインさんをカインさんがたしなめた。


カイン「そんな事言っている場合ではありません。緋威翔さんを探さなくては」


月華「でもいつから居なくなったか分からないし…」


 探しようがない。彼が行きそうな場所など分からないし、彼が勝手にどこかに行くなんて初めてだったからだ。


セイラ「でも緋威翔さんの事だから、何か事情があってどこかにいるんだと思うわ。」


 セイラちゃんが心配そうな顔をしつつもそう言った。カインさんも頷く。


カイン「確かに、そうですね……しょうがない、先生に事情を話す事にーー」


 そういいかけた時だった。


緋威翔「……何か探してるものでも?」


 居なくなった筈の、緋威翔さんの姿があった。私は目の前に現れた彼を注意深く観察する。……さっきまで、居なかったのには、トリックか、理由がある筈だからだ。


 すると、彼のポケットから謎の布が出ている事に気が付く。


(これで周りに擬態して……?)


 地味な色をしたその布は、緋威翔さんが持つにしては、地味な色。イメージからして、白とか、そういう上品な色とか、赤とか黒といった、緋威翔さんらしい色の物を持っている筈。

 いつからか、私の観察力は上がっていたようだった。


カイン「今までどこに行ってたんです!?」


緋威翔「ちょっと色々あったので」


 誤魔化す緋威翔さんの顔は、何故か楽しそうだ。


 緋威翔さんのポケットからはみ出た布をじーっと見ていると、私の行為に緋威翔さんが気付いたのか、こっちを向いてきた。


 ハッ、となり私も緋威翔さんの表情を伺う。怒ってたらどうしよう、と。


 しかし、緋威翔さんの表情は予想と反し嬉しそうだったので、とりあえず怒られてはいないのだと悟る。

 緋威翔さんは、こちらと目が合うとニコリと微笑み、口に指を当て、よく言う「内緒!」のポーズをとった。


 成程。私の大体の勘は当たっていて、それに気付いた事に対して内緒だと言っているのか。他の人に見えないようにそのポーズをとっていることからもその仮説を肯定する事が出来る。


 私はその確認として、緋威翔さんに頷いて見せると、彼もそれを見て頷く。「気付いてくれたんだね」と言うように。


緋威翔「それより、早く報告に行きませんか?」


カイン「貴方が居なかったからいけなかったんですよ?」


緋威翔「……すみません」


 申し訳なさそうな顔をしながら緋威翔さんが謝る。カインさんが全く、という顔をして言う。


カイン「貴方ともあろう人が、途中で何も言わず居なくなるなんて……」


 何がともあれ、全員揃ったのを確認した私達は、先生の居る職員室へと向かう。


 職員室のドアを開けるなり先生達は、私達を見て笑顔で出迎えてくれた。


先生「お帰り!……どうだった?データは取れたかい?それとも入学を希望してくれたかい?」


 私達は、今回起きた事を事細かに全て話した。同じ武器を所持していた乙波くんと晃さんの事、同じ武器なのに全く違う能力だった事、過去の問題を乗り越えた時、武器は昇華し、元の物質へと戻った事……。それを一通り聞いた先生は、驚いた顔をした後、急に真面目な表情になり、私達に言った。


先生「それは本当か?」


カイン「はい。この目で見ました。間違いありません」


緋威翔「……最後は、見事な音楽と光――、その武器と武器所持者にあった祝福を残して、元の物に戻っていました」


先生「それは興味深い。そのデータを元にすると、君達のその武器も、君達が過去を乗り越える事で元の物に戻せると……そういう事だな」


 先生は、仮説を立て私達に話をする。その仮説は今までの情報とぴったり合う、完璧な理論で組まれていた。


月華「……話が変わって申し訳ないんですけど……、他の班は今何を?」


先生「調査が終わった班と、話が簡単についた班は戻って来てるよ」


 私はそれを聞いて、いてもたってもいられず職員室を飛び出した。


セイラ「皆に会いたいんだね、月華ちゃん……」


先生「あいつはそういうやつだからな」


カイン「そうですね」


緋威翔「でもそこが、彼女の魅力なんですよね」



 それが彼女の魅力だと、皆気付いているだろう。普段から感じる落ち着きと、思いやり、暖かい心。皆を周りから暖かく見守るその姿に安らぎを覚える。この人になら、何でも話せる気がする。一緒に乗り越えていける……そんな事を感じる。


 そんな風に感じさせる力は、彼女に最初から備わった力だ。


ケイン「報告も終わった事だし、俺も皆のとこ行っていーか?」


カイン「えぇ、良いですよ」


 ケインさんも月華さんを追って職員室を出ていく。それに続いて1人、1人と退室していく。


先生「皆からも話を聞いてみると面白いかもしれないぞ」


緋威翔「そうですね」


 僕は、皆が居なくなった後も少し残り、先生と議論を重ねる。


緋威翔「……他の班で同じ現象が起きた所はありましたか?」


先生「いいや。無かったよ。君達が武器を作ったのと同じように、武器になった物に溜まった負の感情は凄まじい。少しの努力では武器は昇華しないんだよ」


緋威翔「……そうですか」


 武器に溜まった負の感情を測る物差し等存在しない。だから誰にどれだけ溜まっているかも分からない。個人差もある筈だ。


 今回の二人は、比較的解決しやすい問題だったから良かったものの……。



 もし、僕のように何重もの問題があったとしたら、解決する事は可能なのか?そんな疑問が頭をよぎる。


……でも今は。自分の心配をしている暇はない。今は自分よりも他人だ。制御の仕方を覚えていない人が優先だ。


先生「お前は教室に行かないのか?」


緋威翔「……いってきます」


 口調的には、嫌々行くように聞こえただろう。だが、僕の心の声としては、むしろ皆が居る場所へ行きたいと、そういう思いだった。

 否定的な口調は、本心を隠す為。体に染み付いた“癖”に気付き、嫌な気持ちになる。その気持ちをまた隠すように、僕は無理矢理に作った微笑みを先生に見せてから、職員室を出たのだった。

うー、今回で次の武器所持者を出す筈が…、話が長引いてこんなことに(苦笑)


でも、負の感情と立て続けで戦うのは流石に辛いと思うので、まぁ今回は息抜き回という感じですかね。


次回こそ武器所持者を出せるように頑張ります!



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