光を無くした調和(ハーモニー)
今回は晃sideのお話。
乙波の過去談と繋がる、晃の過去談です。
僕がまだ、乙波と仲が良かった時の事。その当時は本当に毎日が楽しくて、楽しくて……。でもそんな日々は、長くは続かなかったんだ。
乙波は、僕がクラスの中心に居ると思ってたかもしれない。でも僕はまったく逆の立場に居たんだよ。
ある日、僕はクラスメイトに呼び出された。……まぁ、そんな事はしょっちゅうあったから、僕は承諾した。君に……乙波に心配掛けないように、君に理由を言わないまま、僕は君と学校で別れた。
「また明日」と言ってね。
それから、教室にある自分の机と椅子の所で1人待っていると、ガラガラとドアが開いて、1人の男の子と、取り巻きの男の子・女の子が何人か入って来て。その中心の男の子が、僕に向かって悪口を言うんだ。
「あの地味男とつるんでるのか?アホじゃねーの?まぁ、クズ同士仲がよろしくて良いことか!はははは!」
取り巻き達が続いて笑い出す。
「それで?何の用なの?」
内心では、腸が煮えくりかえる思いだった。僕の悪口は別にどうでも良いけど、乙波の事を「地味男」って呼んだのが気に食わなくてね。
でも、突っかかったらまた面倒になるから、肝心な部分だけ早く聞いておこうとして、僕は話を聞いたんだ。
「おぅ、それなんだけどよ……お前さ、あいつのヘッドフォン壊してこいよ」
余りに急すぎて、僕は頭が真っ白になった。毎回、呼び出しを食らって言われる“お題”は、所謂虐めってやつだけど、今までは、掃除で出た汚水をかぶるとか、黒板消しで顔をぼふぼふされるとか、机に落書きされるとか、ともかく僕1人に対するお題だったんだ。なのに、今回は違った。
僕がこんな立場になってしまった理由。それは、僕の父親が殺人を犯してしまった事から始まる。殺したのは、今こうして強がっている中心的な男の子、関谷 隼人の母親だ。
もともと……言っては悪いが、性格が悪かった関谷一家は僕のお隣さんで、僕達の家にしょっちゅう嫌がらせをしていたんだ。
例えば、ゴミを僕達の家の道の前に出してきたり、僕達の家を光から遮るように建物を増築したり、僕達の家の庭にある花を関谷一家のペットが荒らしていったり。
最初は我慢していた父母も、だんだん堪えられなくなってきて、母親はノイローゼに、父親は怒って関谷一家で一番性格の悪かった母親を殺してしまうという大惨事になったんだ。
父親は勿論捕まって、母親はそのまま亡くなって、今僕は祖父母に預けられている。
“殺人鬼”の息子であり、隼人の母親を殺したという事実は、隼人の父親を通じて隼人に伝わった。幸い、隼人の父親は落ち着いた人だったから、法的な処罰を望むと大人しくて、特にこちらには何もしてこなかったけど、隼人には抑える事が出来なかったんだ。
隼人には、その日に武器が出来た。僕の父親が隼人の母親を殺したという事実と、非武装の武器だ。
隼人は、母親が大切にしてたという形見の……ペットにつける首輪とリードがセットで武器になったんだ。
ただでさえクラスで中心的な立場にいた隼人に、武器が出来た事は最悪以外の何物でもなかった。
それから隼人は、気に入らない奴がいると首輪とリードでそいつを捕まえて、虐めるようになったんだ。
僕の場合は、クラスの隼人の党派に入る奴らに情報を回され、そいつらに見張りをされた。
クラスの中心に僕が居たのはそのせいなんだよ。
虐めはどんどんヒートアップしていく一方だったけど、こんな風に周りの誰かを巻き込むお題は初めてだったんだ。
勿論、僕が断れば済む話だった。僕は君を親友だと思っていたし、ヘッドフォンも……君と同じくらい大切なものだと思っていたんだ。
だけど彼は、ヘッドフォンを壊さなければ、乙波を標的にするといい始めた。僕は堪らなくなって、承諾してしまったんだ。君の大切な物を犠牲にして、君を守るために。
きっと君がこの場で聞いていたら、自分よりもヘッドフォンをといい出すかもしれない。…いや、君の事だからそう言うに違いない。だったら僕が、悪役になれば良いんだと……そう思ったんだ。
それからは、乙波といつもみたいに行動しながら、隙を見てヘッドフォンを軽く分解した。また、僕が直せるように。分解だって壊すことと変わらない、そう思ったんだ。……でも、心は傷んだよ……。
僕はそうして、ヘッドフォンが置いてあった場所に戻した。すぐに乙波が見つけて二人で直せるように。
だけど僕は忘れていたんだ。僕には見張りが常についているという事を。
その後は君が目撃した通りさ。ヘッドフォンは元の場所から消え失せ、代わりにゴミ箱から姿を現した。僕が手加減して壊した時よりも酷くなってて、しかも部品も幾つか無くなっていた。これじゃあ直せないと僕はショックを受けた。
それ以上に、君が傷ついた姿を見て僕はショックを受けた。こうなった原因は僕にあるのだと、自分を責めた。君の前に姿を現す資格などないと考えた。何より、君に恨まれたくなかった。君に嫌われたくなかった。だから僕はその日から君から逃げるようになったんだ……。
父親が犯してしまった罪を、ある意味被るような結果になってしまった晃。
それでもまっすぐに乙波を想う気持ちは変わらず、乙波とは同じ武器なのに相反する能力になった……。そういう事です。




