雑音と調和
私の答えは、この二人に過去を精算して、今を進んで欲しい……いや、進んでもらう!
ずっと過去を引きずっていても、何も変わらない。それに二人には……まだ“絆”がある!
二人の決着は、武器を通した争いでなくても良い筈。それならば、思いと想いでぶつかればいい。
私はそれを見守る……!
決心の固まった私は、乙波くんに向かって叫ぶ。
月華「乙波くん!君は本当は、晃くんを殺したいだなんて思ってないんでしょう?!」
乙波「煩い!」
感情の高ぶった乙波くんはこちらの言葉に耳を貸そうとはしない。むしろ、noiseで消してくる。
乙波「お前達には……特に晃には……分かんないんだよ!俺の気持ちなんて!!それに、分かろうともしないだろ……」
自分を守る言葉と、理解して欲しいという思いが現れる。過去に同じ場所で同じ時間を過ごした晃さんに、理解して欲しいとそう思っているようだった。
晃「乙波……」
一方の晃さんは、心を痛めたような、泣きそうな目で乙波さんを見ていた。そしてまた足早にその場を去ろうとする。
カイン「駄目ですよ」
セイラ「逃げるだけでは…」
ケイン「あいつと、ぶつかって来い!!」
晃「……」
乙波「やっぱり…あの時と変わらない。またお前は逃げるのか?」
話したい。逃げないで。向き合って、視線を合わせて。お願い。僕は君を――
noiseを通じて伝わる想い。乙波さんの“音”。それはヘッドフォンを通じて、晃さんの元へ――。
晃「ねぇ、乙波。僕の力を、見てよ」
晃さんが取り出した、“ヘッドフォン”。それを彼は、いつかの乙波くんと同じように首に掛けた。
晃「“harmonize”」
その瞬間、乙波くんが使っていたnoiseの効果が消えた。私達は驚き、晃さんへ視線を戻す。
彼は武器を使えない弱虫なのだと自分を語った。だが、今彼はこうして、武器を使っている。過去から逃げていた少年は今、成長したのだ。
晃「僕の能力、調和(harmonize)は、乙波。君と対照的な能力なんだよ」
カイン「では能力が使えないと言っていたのは…!」
セイラ「乙波さんのnoiseを相殺する力だから…!?」
乱れた音が無ければ、調和する意味がない。
彼の能力は、乙波くんの為に使う能力…!?
乙波「……晃……」
さっきまで乱れていた感情に整理がついたのか、乙波くんは穏やかな顔をしていた。そうして、晃さんに気になっていた質問をする。
乙波「晃……君なのか?僕のヘッドフォンを壊したのは…」
彼は重々しく頷いた。申し訳なさそうに、涙を流しながら。
晃「乙波……ごめんよ…君を裏切ってしまったんだ…僕は…。でも…言い訳だけど、聞いてほしい。僕は君がヘッドフォンを大切にしていた事を知っていたし、壊したいと思っていた訳では無いんだ…ただ…」
彼の話す内容は、重く、切なく悲しいものだった。
おッ?もうちょっとでこの二人は……




