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blanket  作者: 璢音
第三章:戦い
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対峙

久々の更新です。今回の話は今後の展開を決める大事な話です。


 ザーッという雑音の中、私の中にはある映像が流れていた。きっとこれは目の前にいるヘッドフォンをかけた少年……、乙波君の過去なのだと私は感じた。映像が一通り終わった後、隣にいる緋威翔さんの方を見ると、彼にも同じ現象が起きたのか私の方を見て頷いている。


乙波「……効かない……!?」


 何故か乙波君は、雑音を聞いて平気でいる私達を見て驚いたようだった。多分、武器を持っていない人に対してこの雑音は、苦痛を感じさせていたのだろう。武器を持っているという同じ立場の私達には、彼の過去が流れるという事象が起きたのだが……。


緋威翔「過去を共有した事によって、少しは落ち着きましたか?言葉遣いが戻ったようですが」


 先程の乱暴な口調の彼は姿を消していたのだが、やはり気持ちは変わらないらしい。


乙波「僕は、もう誰も信じないって決めたんだ。そして晃を見つけ次第、彼を殺す」


 彼はヘッドフォンを首にさげたまま、俯きか細い声で言葉を紡いだ。彼が紡ぐ言葉は重く私達に圧し掛かる。彼がどれだけヘッドフォンを大切にしていたかや、それを壊されたことによる怒りも分かる。怒りに隠れている悲しみも、私にはわかった。彼は無理をしていると……。


緋威翔「引っ掛かりますね」


乙波「?」


月華「緋威翔さんも、ですか?」


 雑音の中で知った彼の過去。その中に出てきた晃さんは、悪い人の感じがしなかった。そんな彼が何故乙波君に会って逃げてしまったのか、私には理解出来なかった。本当に晃さんは乙波君のヘッドフォンを壊し、隠したのか?もし、隠していたとしても……それは彼の本心だったのか?そんな疑問が私の中を渦巻いていたところだったのだ。


緋威翔「彼の言動、行動には気になる点があります」


 悪天候なこの環境で、緋威翔さんは意見を述べていく。だがその言葉に乙波君は耳を傾けてくれなかった。多分、これ以上傷つきたくないんだろう。その気持ちも痛いほどにわかった。でも私は、過去を鵜呑みにしている乙波君を変えようと思った。その為には……彼の過去を詳しく知り、そして晃さんの真意を知るしかない。でもどうしたら……。


緋威翔「…………」


 彼の反応を見て流石にやめた方が良いと思ったのか、緋威翔さんは意見を述べるのをやめたようだ。しかしこのままではいけないという現実は変わらない。だから、乙波君を説得にかかった。


緋威翔「過去のことは、もう少し落ち着いてから話すとしましょう。ですが、その武器が生まれてしまった以上、僕達は君を止めなくてはならないんです。その武器が暴走してしまったら、関係のない人にまで被害が出てしまうんです」


月華「だから……せめて私達と一緒に制御の方法を学びましょう?」


 雨は段々と止んできたようだが、まだ空は黒い雲が覆っている。そんな中、屋上に立つ乙波君は私達の言葉を聞いて、反応を示した。


乙波「……ふざけるな。今の過去を見てその言葉が出るのか?馬鹿なのか?俺はもう誰も信じない。人間なんか大っ嫌いだ。お前たちと一緒に制御の方法を学ぶ?そんなの必要ない!俺は独学でこの武器を制御できるようになったんだからな!」


 彼は私達を怒鳴りつけた。そしてヘッドフォンを両手で持ち、先程と同じように……


乙波「雑音、音量大!」


 その瞬間、先程とは違う雑音が耳に流れ込む。ザーッという音は音量を増し、頭に響く。流石にこれは辛い……!思わず耳を塞いだけれど、音は耳を通じて流れているのでは無く、いわばテレパシーのようなもので流れているらしく、少しも音は緩和されなかった。


乙波「音量の調節も、効果の変化だって自由自在だ。これでも制御出来ないっていうのか!」


月華「…………」


 何にも言えなかった。さっきの雑音とは、完璧に質が違う。独学で制御出来るような子も居るのも確か。……でも乙波君は情緒不安定だし……。


 乙波君にもし「怒り」の念が無かったら、こんなに取り乱して無かったら…


緋威翔「乙波さん。貴方はこのままだと確実に暴走します」


 怒りの感情に身を任せたままの乙波君に、緋威翔さんははっきりとそう告げた。普段冷静な緋威翔さんから発せられる「現実」に乙波君は直面する。彼はこの言葉をどう受け止めるの……?


乙波「……暴走、してもいいや。その方が、罪の意識がないかも知れない」


 怒りの中に残っている理性が彼に語りかけたのか。“罪の意識”というワードが彼の口から出た。少なくとも過去の乙波君は晃さんを友達と思っていた筈だ。幾らこんな事があったとはいえ、突き放す事は出来ないんだと思う。


 それが無ければ、私達がここにくる前に晃さんを見つけて殺していただろう。血眼になって探さないのは、彼が躊躇している証拠だ。


月華「乙波君……貴方は」


乙波「煩い!俺達の事に口出ししてくるなぁッ!!」


 彼はそう言うといきなり私達に背を向け走り出した。屋上に吹く風を体に浴びながら。屋上にある重い扉を開き、彼は階段を駆け降りていった。

 彼なりの葛藤。私には逃げる彼の背は「追い掛けて来て」と言っているように見えた。


月華「緋威翔さん……!」


 緋威翔は去っていく乙波君を見てから、首を横に振った。今は、介入するのが得策とは言えない。そう考えたようだ。彼の事は心配だが……


緋威翔「……カインさん達と合流しましょう。ある程度のデータはとれました。これを報告しに学校へ戻るのが、一番良い方法です。彼の事は、また後で……」


月華「でもそれじゃ…晃さんが……!」


緋威翔「……晃さんの捜索が最優先ですね。もっとも……」


 バッ、という音と共にいくつかの人影が空を舞う。そしてその人影は、屋上のコンクリートに見事に着地した。その顔を確認して、私は思わず手を口に当てる。


カイン「ここに居たんですね」


 集まったのは、私達のチームの人だった。カインさんにケインさん、セイラちゃんがそこに立っていたのだ。


緋威翔「そちらはどうでしたか?」


 現在の情報を交換し合う。情報の共有は、チームワークに一番大切と言ってもいい程、重要な事である。それを即座に見抜き、二人は現状を話始めた。


カイン「こちらは、非武装の武器を所持した少年を確認しました。そして説得にかかりましたが失敗。逃げられてしまいました」


緋威翔「こちらもそんな感じです。武器はヘッドフォン、能力は“noise”による振動波。璢胡さんとほぼ同じ能力ですね」


カイン「こちらの少年も、同じくヘッドフォンでした」


 え……同じ武器……?


 一般的に同じ非武装の武器を持っている人は居ないと言われている。なのに乙波君と少年は、同じ武器の所持者――。


 私の中にふと、ある考えが泡のように浮かんだ。彼らには何か関係があるのかと。


 晃さんを探す乙波君、乙波君から逃げる晃さん――。

月華「まさか、カインさんの言う少年って……!」


緋威翔「晃さんの可能性が高いですね」


ケイン「晃?あいつはライトって名乗ってたぜ?」


緋威翔&月華「!!」


 やはり晃さんか!ライトという名は乙波君が付けた名前だった筈!……繋がった!


カイン「ライト君は、もうマークしましたのでセンサーが反応して場所を示してくれます」


 カインさんの差し出す携帯のようなものには、先程センサーで感知した時と同じように赤い点が映し出されていた。この赤い点が晃さん……。 もし、このレーダーの事を乙葉君が知ったら、彼は迷わずここに向かうだろう……



緋威翔「彼を追跡しますか?」


月華「乙葉君の言葉も引っ掛かります、追って行って双方の争いを回避するのが得策じゃないですか?」


カイン「……では、先程対峙した者同士で担当する事にしましょう」


セイラ「私達がライトさんで貴方達がその乙葉って人ね」


 私達は頷くと同時に、カインさんの誘導に従いライト君、もとい晃さんを追跡する。晃さんを見つけた時点で、カインさん達は晃さんの警護、私達は乙葉君の抑制を担当する事で話がまとまったからだ。


 カインさんの持つレーダーに載っているポイントが段々と近付いて来ると同時に緊張が高まる。


 私達は都市部へ突入した。さっきまでは住宅や公園がメインだった風景は消え、高層ビルや大規模な店等が連なる道へと変わった。道路には車が忙しく行き来している。


カイン「ポイントまで後少し……この辺に居るようです。辺りに晃さんらしき人は見えますか?」


 カインさんの指示で辺りを見回すが、見えるのは建物と車ばかりで人自体が余り居ない。建物と建物の間や、道路を挟み向かい側の道等を見て捜索していく。


 少し経ってからふと空を見上げると、ビルとビルの間からお日様が顔を出した。さっきまで薄暗い雲が空を覆っていたが、どうやら晴れて来たようだ。雲があると周りが暗くなり見辛いので晴れてくれて有難い。


セイラ「えッ……」


 私達の後ろを歩いていたセイラさんが急に驚いたような声を出した。何事かと振り返るとセイラさんの視線の先に、彼が居た。彼は特に建物に入る訳でも無くただ私達と対峙するかのように道に立っていたのだ。

この回はまだまだ続きます。


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