大切な感情
真琴さんの攻撃を正面から受けた私。今は何処に?
保健室?それとも刺さり所が悪くて病院?もしかして……
頭の中を巡っていく思考。私は現状を把握出来ずにいた。
閉じたままだった目を開く。ここは何処なのか、はっきりするだろう……。
最初に見えたのは冷だった。私は即座に剣玉を当てられたであろう部分を触る。だが、傷も痛みも全く無い。
目の前に居る冷は、いつものように少し丸まっているのではなく、丁度私が毛布を掛けている時のように真っ直ぐ広がっていて、それも地面すれすれから、私の頭の上までを覆うように「立って」いた。
それはまるで、私を守る為に盾になったかのような姿だった。
真琴「武器が生きているだけではなく、意志を持って……?」
真琴さんは攻撃もせず冷を見つめている。
冷は少し経つと、いつものように丸まって私の所に戻ってきた。そして私の腕の中にすっぽりと身を委ねる。
月華「冷!私の盾になって……怪我はない?」
すかさず私は冷が傷を負っていないかを確かめる。冷は毛布である。あんな鋭い物で攻撃されたらひとたまりもないだろう。穴が開くのは確実だ。
冷「ひ~ひ?」
冷は丸まったまま私を見上げるかのような仕草をした。私を心配しているのだろうか。でも私は逆に冷の事が心配でならなかった。
注意深く冷に開いた穴を探す。すぐにでも直さなければと思ったからだ。
しかし、冷の何処を見ても穴らしきものは見当たらなかった。私は安心し、冷を抱き締め涙を流す。
「無事で良かった」
緋威翔「……。」
真琴「……。」
(緋威翔)
強い絆とはこのような事を言うのか……。
もし僕が武器であるカードを無くしたとしても、あそこまで涙は流せない。あのカードはとても大切な物だけれど、まず自分の命が助かった事にほっとすると思う。
命を掛けてまで、大切な物なんてこの世界に無い。
そんな僕からは想像すら出来ない。
(真琴)
この武器は僕の味方だった祖父が大切にしていた物。形見でもある。
確かにこれが無くなってしまったら、僕は泣くかも知れない。でもそれは、「道具」に対してではなく「祖父」に対しての涙。
月華さんのように、「物」に対して涙を流すなんて事は考えられない。
……この戦い、意味あるのかな。自分達の大切な物を犠牲にしてまで戦うなんて……間違ってるんじゃないかな。
……僕は僕のやり方で……。
(月華)
周りの事も気にせず泣いていた私を、誰も攻撃する事は無かった。むしろ皆は見守っていた。私が泣き止むまで。
真琴「……ごめんね」
何故か敵である真琴さんが、私に頭を下げ謝る。その頬に涙がつたっていたのを、私は見逃さなかった。
罪悪感を感じているんだ。
月華「……謝らないで下さい。当然の事をしたまでなんですから」
真琴さんは一言私に告げると、今度は地面に落ちたカードを一枚一枚拾い上げた。
真琴「緋威翔さん……ごめんね」
申し訳なさそうな顔でカードを緋威翔さんに手渡しする。
緋威翔「大丈夫ですよ」
緋威翔さんはカードを受けとると、パッと両手でカードを隠した。そして、両手で隠したカードを扇状に広げていく。
そのカードには、開いていたはずの穴が無かった。
緋威翔「僕は、マジシャンですから。ほら、そんな辛そうな顔しないで。冷も、このカードも無事ですよ」
真琴「嘘……!?」
緋威翔「種も仕掛けもありませんよ?」
緋威翔さんが、真琴さんに向かって微笑み掛ける。
真琴さんは、今にも泣き出しそうではあるが、ほっとした表情で微笑み返した。
真琴「……有難う。敵なのに気遣ってくれて」
緋威翔「敵である前に、クラスメイトですから」
真琴「うん、そうだね……。でも戦いを続けていたらまた犠牲が出てしまうかも知れない。早く止めにしちゃおう」
真琴さんは、あろうことかポッケから宝石を取り出した。
月華「えっ、でも……!」
真琴「いいんだよ。僕のチームは戦う気、あんまり無かったしね。ほら、平和主義者が集まってるから。皆分かってくれる筈だよ」
そういって真琴さんは、私に宝石を差し出した。
月華「なら……」
私も、持っていた宝石を差し出す。
月華「これで引き分け、ですね」
緋威翔「優勝はこれで決まってしまいますが、まぁ良いでしょう。武器は機会があれば見れますし」
真琴「……ふふっ、そうだね」
璢夷「たった今、両チームの宝石が敵チームに渡った為、この勝負、引き分けとする」
引き分けという結果で終わった試合。でも、後悔はしてない。大切な感情を共有出来たから。
今回gdgd過ぎて
オワタ\(^p^)/
本当は決勝戦もやるつもりだったのですが、争いは良くない的な展開になったので急遽無しにしました。
次からは、多分克服編になります。




