聖夜VS霧雨
会議が終わったので、またモニターを見る。
そこには十文字さんの姿があった。
(聖夜)
ふぅ…
団体戦は、苦手って飛び出してきたけど、誰も戦う相手が居ないや…。暇だなぁ。
…折角だから、空から敵を探したりしようかな。
うーん、今日は快晴だし飛び甲斐があるってもの。
ってんん?
向こうで何か飛んでる。
よし、行ってみよう。
翼で風を切り、猛スピードでその何かに向かって飛んでいく。
その何かに近付くと…その何かが傘だった事が分かった。
傘と言えばー…
霧雨「こんにちは、十文字さん?」
地面の方を見てみると、傘を持った霧雨の姿があった。
聖夜「雷野か。その手に持ってるのはー…」
ずっと見下ろしているのは大変なので、翼をたたみ、地面へ降りる。
霧雨「傘。」
俺が地に足を付き、雷野がそう言った瞬間、雷野は俺目掛けて傘を突き刺してきた。
霧雨「見れば分かるでしょ!」
俺は即座に翼を出し、体を覆い隠して防いだ。
聖夜「じゃあ、あの飛んでる傘も君の?」
霧雨「そうよ。」
聖夜「随分傘を持ってるんだね…。」
霧雨「…それより、あんたの相手は私みたいよ?」
聖夜「あぁ、そうみたいだねー…」
その瞬間、この場が只ならぬ雰囲気になった。
重く、暗い雰囲気に…。
霧雨「…貴方、随分と余裕そうね。」
聖夜「…そうかな?まぁ、君に勝てる位の能力はあるけど…女子に本気だすような人じゃないよ。」
霧雨「あら、そうなの?てっきり本気で掛かってくるかと思ったわ。…別に、本気でもいいわよ?」
聖夜「本気だしたら君、肉片すら残らないかもよ?」
霧雨「…、ふぅん。」
一瞬の静寂。
先に静寂を破ったのは、霧雨だった。
霧雨「…なら、試してみないとね…!」
これは来る!
俺は間合いを取った。
霧雨「rainshower!」
霧雨が唱えた(?)瞬間、大粒の雨が降りだす。
俺には何が起きたのか良く分からなかった。
…霧雨の能力は、「天気を変える」能力なのかな?
聖夜「…中々面白い能力じゃん。」
霧雨「お褒め頂きどうも。」
聖夜「でも何か、思ってたのと違うなぁ。霧雨って名前だし、霧雨か何かを出すかと思ってたよ…」
霧雨「勿論、出来るわよ?けどそれは雨を弱める為の口実に過ぎない。そうでしょう?」
…参ったなぁ。
この雨の中じゃ、飛びにくい。なるべく大粒の雨はやめてほしいんだけど。まぁ、仕方ないか。
聖夜「分かったよ。陸で戦…」
霧雨「その必要は無いわよ。」
さっきまで地面で傘を持ち立っていた霧雨は、傘を開いた。
霧雨「私も、空を飛べるしね。」
…こっちを飛びにくい環境に居させて、向こうは傘で雨を凌ぐ…
第一、雷野が降らせてる雨だから、雷野に悪影響はない…か。
聖夜「君のせいでずぶ濡れじゃないか。」
霧雨「あら、傘を持ってないの?その翼で傘を作れば?」
聖夜「はぁ…。じゃあそうするよ。」
(月華)
モニターに映し出される二人を見て、戦闘の学習をしようと思ったけれど、案外戦わないものだと分かった。
それに…二人と私には、決定的な相違点がある。
二人は、unarmed armを“武器”として使える。
逆に私は、unarmed armを“武器”として使えない。
いや、“盾”としてさえも使えない。…だって大切な物だから。
そう。だから私は…戦う事なんて出来ない。
戦力にならないという事。
それは皆も知ってる筈。
そんな私をチームに入れてくれた三人には感謝だけれど、罪悪感もある。
こんな私のせいで、チームが負けたなんてなったら申し訳ない。
冷「ひ~?ひぇっ!ひぇ!!」
?
セイラ「冷が何か伝えようと…?」
ケイン「通訳居ねぇの?通訳!」
月華「…私も…冷が何を言ってるか分からないんだ…。」
誰か冷の言葉を理解出来る人は…!
…いや、私でさえ分からないんだもん。誰も分からないのが当たり前…
?「…盾にしても構わないから、月華にダメージがいかないようにして欲しい…傷付くのは見てられない。俺…いや、僕かしら?…は月華を守る為に生まれたのだから。…って。」
声がした方を向く。
そこにはピンクの髪が麗しい、一人の女性が立っていた。
月華「貴女は…?」
見たことない人だったので、冷の言葉を理解した事に凄く驚いた。
…それにしても誰だろう…?
セイラ「ノエルちゃん!」
…セイラさん、あの女の人知ってるのかな…?
ノエル「ふふっ、不思議だったでしょ?」
月華「び、びっくりしました。冷の言葉を理解している人が居るなんて。」
ノエル「ふふっ…私も何でこの子の言葉が分かるのか…分からないわ。」
妖艶で甘い声…女の私でもウットリしちゃう。
セイラ「ノエルちゃん、何でここに?」
ノエル「私にも…出来ちゃったのよ。unarmed armが。」
セイラ「えぇっ!?」
ノエル「ほら…私がいつもつけてる猫耳と尻尾。あれが動くようになって…、私自身が猫人間になってしまったみたい…。」
月華「えぇっ!?」
流石に私もビックリ。
確かに、ノエルさんの頭には猫耳が…生えて(?)いる。
ノエルさん自身の耳も、勿論ある。ピンク色の髪のふわふわしたツインテールの側にちらちら見えているのが本当の耳だろう。
…って、耳が四つある!?
ノエル「困るのは、爪が武器になってしまうこと…、折角のネイルも直ぐにボロボロ。鼠を見ると追っかけたくなるのも困るわ。」
月華「じゃあもしかして…夜行性だったり、魚ばっかり食べたりするんですか?」
それこそ、本当の猫みたいだけど…。
ノエル「その通りよ。」
セイラ「まさか能力は猫化!?」
ノエル「そうかもしれないわね…。本当、どうしようかしら…。」
甘い声も、猫なで声だと思えば納得がいく。
…そんなunarmed armもあるんだ…大変だなぁ。生活リズムが乱れちゃうし。
ノエル「ところで、このモニターに映ってる人達は何をしてるの?」
モニターに映る二人を見て首を傾げるノエルさん。
どうしてもその姿が猫のポーズにしか見えない。
セイラ「unarmed armの発表会が発展して、技の競い合いになったの。私達のチームは後に試合をするから、ここで待機してるんだ。」
的確な説明をし、ノエルさんが理解した所で話を本題に戻す。
月華「ノエルさんにも武器が出来てしまったということは、ここな生徒になるって事ですよね?」
ノエルさんは私を見て頷く。
ノエル「えぇ。余り実感が湧かないのだけれど…そうよ。」
セイラ「じゃあクラスメイトになるんだね、嬉しいな。」
セイラさんは純粋な気持ちで嬉しいと思っていると思うけど、また1人…非武装の武器の餌食になった人が出たという事に私はショックを受けた。
私の冷は兎も角、他の人達の非武装の武器は危険すぎる。命を危険に晒すことさえありうるのだから。
…だからこそ、学校で色々学ぶ必要があるのだけれど。
その事に関して、皆は全く危機感を持っていない事が私には信じられなかった。
ノエル「この戦い、もう少しで終わるわね。相討ちで。」
雷野さんと十文字さんの戦いを見ていたノエルさんが、ぼそっと呟いた。
その瞬間、画面に映った二人が…
「落ち始めた。」
(雷野)
…体が動かない。
さっきの技で体力を使いすぎたかしら?
いや、私はもっと力を使えた筈。もしかして相手の力に反発していたせいで、力を思ってたより消費したというの?
初めての試合が相討ちなんて…ショックだわ。
…私、何処まで落ちてくのかしら…?
(聖夜)
さっきまでずっと強がってたけれど、僕だって万能じゃない。使った分の力を取り戻す事は出来ない。
…さっきの戦いで消耗しすぎたか…。
まさか僕が、あの女の子と同じ力しか持ってないなんてショックだな…。
…さて、助けは来るかな?来ないかな?
来なかったら僕、助からないかも?
(月華)
さっきまでずっと空中戦をしていた二人が急に急降下し始めるなんて…!
助けに行かなきゃ…!だけど、私には何も出来ない…。
セイラ「向こうにはカイン兄さんが居るよね?」
月華「審判の為に、行ってたと思うけど…気づいてるのかなぁ。」
ノエル「…大丈夫よ、もう助けは来たみたいだから。」
恐る恐るモニターを見ると、両サイドから人が来るのが分かった。
誰かが助けに行ったんだ!
自分が情けなくなりながら、助けが来たことに安心した。…でも、誰が助けに行ったんだろう?
モニターを手に汗を握りながら見ていると、璢胡ちゃんが見えた。
月華「璢胡ちゃんだ!」
セイラ「だとすれば、お姉さんも一緒な筈。」
ノエル「ひとまず安心かしらね。」
急降下してくる聖夜さんを助ける為に集まった二人は、非武装の武器を構えた。
璢娘さんがリボンでしっかり聖夜さんを包み、璢胡ちゃんが空気を調節しながらゆっくりとリボンに包まれた聖夜さんを下ろしていく。
見事な連携技に私は驚いた。
月華「流石姉妹…」
一方、雷野さんの方には黒い服装をした人が駆けつけた。
…璢夷さんかな?
セイラ「あのペンで…どうやって…?」
璢夷さんの非武装の武器はペンだ。確かそのペン自体が武器になっていると言ってたけど…そのペンでどうやって…?
(璢夷)
璢胡と璢娘の気配を辿って来てみれば、まさか雷野が相討ちとは…聖夜は予想以上の強者だったと言うべきか…。
…そんな事を言っている暇ではなかった。
今すぐに雷野を救助せねば!
(月華)
璢夷さんは持っていたペンで何かを描き始めた。
ペンはインクが出るタイプらしく、空中に絵が出来ていく。
…少したつと、それが巨大なクッションだということが分かった。
あのペンで書いたものは実体化する。確かにこのゲームの最初にも宝石を出していたっけ。
…それにしても、皆凄いなぁ…
そのまま落下して来た雷野さんは、クッションの上に乗った。
もふっ、という音が聞こえたので相当柔らかい素材だったのだろう、衝撃のダメージも無さそうだ。
クッションの上で倒れている雷野さんに璢夷さんが近づく。
璢夷「雷野!大丈夫か?」
雷野「…璢…夷…く……ん?」
雷野さんは辛うじて意識があるみたい。そこに助けに来たのが璢夷さんだということも理解しているようだ。
璢夷「あぁ、璢夷だ。見えているならば問題はないな。クッションにあの速さで落下して大丈夫だったか?正直心配だったのだが。」
雷野「大丈夫…だと思うわ、痛みは無いし…」
璢夷「咄嗟の判断だったものでな、多少手荒な真似をしてしまった、すまない。」
雷野「助けに来てくれたんだもの、貴方が謝るなんておかしいわ。私がお礼を言う立場よ。…璢夷君、ありがとう。」
璢夷「あぁ、どういたしまして……」
…二人の会話が何となくRPGに聞こえてしまったのは私だけだろうか…
そんな事は兎も角、二人が無事で良かった…!
…また事故があったりしたらどうしよう。
やっぱりこんなに危ない試合、止めた方が…
…でも逆に考えてみると、危ない目に遭わせたのも、その場を救ったのも非武装の武器なんだけど…
何か複雑。
聖夜「…鎌田の二人…だね。助けてくれて…ありがとう。」
聖夜さんの方も意識があるみたいだ。
璢胡「後は私達がやりますから、安心して休んで下さいね。」
璢娘「じゃないとコスプレさせちゃうからね☆」
聖夜「…コスプレは勘弁。」
冗談を言い合ってるから、疲労が溜まったくらいみたい。少し休めば良くなるかな。
その後落下してきた二人は、カインさんの指示で保健室で寝ていることになった。
二人で喧嘩しなければいいけど。
…で、その場に残った三人が戦うみたいでー…
兄弟同士の対決…
お互いに手の内が分かるって事だから、作戦が勝敗の決め手になるかな…何て兄弟の対決を楽しみにしていたら、急にモニターに映ってる人が変わった。
どうやらカメラが変わったらしい。
映し出されているのはー…




