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blanket  作者: 璢音
再び戦いへ
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真剣な話をしよう

「緋威翔さん。」


 教室を出てから、私は真琴さんの事を話し合おうとして彼に話しかけた。ひんやりした廊下の空気が私の思考を落ち着かせてくれる。言うなら今だと直感が訴えてきた。


「分かっていますよ。真琴さんの事でしょう?」


 す、凄い。言わなくても通じてる。流石緋威翔さんだ。ただ単に私が分かりやすいだけかもしれないけれど。


「今はそっとしておいてあげてください。彼を今元気付けるのは逆効果です。」

「そう、ですか・・・。」

「次の授業は武器学でしたよね。支度をする必要は無いですし、少し話でもしましょうか。」


 私に対しても気を遣ってくれているのだろう。話題を切り替えて楽しげに話をしてくれる。


「最近この近くにアンティークショップが出来たそうなんですが、もう行きましたか?」


 アンティークショップ?緋威翔さんがアンティークな品に囲まれている姿を想像して、思わずため息が出そうになる。似合う。とっっっても似合う。


「その、僕も今度行ってみようと思っているのですが、一人で行くと1日中店内に居座ってしまいそうで。」


 微笑みつつそんな魅力的な話をされてしまったら、私も行きますから行きましょうとしか出てこない・・・っ!でも、私はそういうの詳しく無いし、どうしよう。勇気を出して・・・。


「ちょっと待った。その話混ぜてもらってもいい?」

「おや、栞さん。珍しいですね。」

「アンティークショップって聞こえたからさ。つい。月華さんも行くでしょ?」

「抜け駆けは良くないですよ。今から誘おうとしていたのに、台無しです。」

「あぁ、そうだったんだ。でも緋威翔も緋威翔だよ。誘うなら・・・あ、ごめんね月華さん。」

「い、いえ、気にしないでください。」


 あっと言う間もなく話が進んでしまった。結果的には私も一緒に行けるみたいだし、良いのだけれど。

 何だか栞さんがいつになく積極的だ。


「それで、貴方のお目当は?」

「特定の物は無いよ。ただアンティークショップが好きなだけ。何か気に障った?」

「あの、お二人とも・・・。」


 何でそんなにピリピリしているんですか?とは聞けなかった。聞いてはいけない事くらいは、私にも分かる。


「もしかして“二人で”行きたかったのかな。それは失礼したね。」

「そっ!?」

「あれ、月華さんが釣れちゃった。緋威翔は・・・相変わらずか。素直になりなよ。」


 栞さんの言葉に少しムッとした表情を見せながら、彼はアンティークショップの話を続けた。

 何でも、ほんの数日前にオープンしたばかりらしい。可愛らしい雑貨屋さんとして、人気があるのだとか。緋威翔さんも店の品揃えが気になっているという。

 緋威翔さんが話している間に栞さんは要所要所で反応を見せていた。


「栞さんに先に言われてしまいましたが、一緒に行きませんか?日にちは合わせますから。」


 私はすぐにハイと答える。

 この先の予定は特にない事を伝えると、今日の放課後でもいいかどうかを聞かれたので、それもまたハイと答えた。


「栞さんはどうされますか。」

「自分も特に用事は無いからついていくよ。今日の放課後か。図書室に集合で構わない?」

「大丈夫です。」


 こうして私は緋威翔さん、栞さんと一緒に放課後アンティークショップへ向かう事が決定した。


 ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇


 彼がいきなり接触してくるのは想定外でした。まさか廊下にいるとも思わず、折角の機会が無駄になってしまったではありませんか。

 実に残念です。


 僕に対抗心でも抱いているのではないかと思うほどに、彼は僕に対して冷たいと感じるのは気のせいですよね。

 それとも知らぬ間に彼を傷つけてしまっていたのでしょうか。だとすれば原因を追求しなくては。


 一体僕は何をしてしまったんでしょう。

 ここまで記憶に残っていないのは初めてで、戸惑います。表情には出しませんが。

 隠していないと全てが見抜かれてしまいそうな感覚さえ起こしてしまうのは、彼の観察眼が優れている証拠でしょうか。

 何にせよ、警戒はしておくべきですね。

 もしも思い違いだったなら、謝りましょう。


 しっかりと確認が取れるまでは、気は抜かないつもりです。

 彼が何を考えているのかは分かりませんが、隙を見せるなんてことはしませんよ。


 ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇


 二人と話している間に時計の針は進み、授業開始間際になってしまっていた。

 慌てて席へ戻ると、授業開始のチャイムが鳴り響く。辺りにいたクラスメイト達がわらわらと自分の席へと着席していった。

 そんな中、荷物運びを手伝いにいった二人の姿だけが無い状態だ。


 彼女らは数分後に慌てて先生と一緒に教室へ入ってきた。

 二人と先生は沢山の本を抱えていた。今回の授業で使う資料だろう。かなり重量がありそうだ。


「ごめんごめん待たせたな。今日は武器について学ぼうと思ってな、さっき図書室で本を探していたが、思ったよりも時間が掛かってしまったよ。」

「先生は一冊探すのに時間がかかり過ぎですわ。」

「でも私達もあまり早くなかったわよ、姉さん。」

「それもそうね、おあいこだわ。」


 二人がそう言いながら、教卓へその資料を置いた。


「武器って、非武装の方・・・じゃあなさそうだね。へぇ、昔使われてたっていう武器の話なんだ。」

「そうだぞ、やけに気合が入ってるな聖夜。興味があったのか?」


 先生に対して敬語を使っていない事をちっとも気に留めず、寧ろ嬉しそうに先生は会話を続けつつ資料を配っていった。

 私の手元にもその資料が手渡される。早速中身を見てみると、どうやら武器の構造について書かれているらしい。

 剣・銃・槍・斧・槌・弓など、いくつもの武器の見た目や能力等が図鑑のように記録されている。

 今では使う事の出来ない武器の資料がここまで残っているのは、これらが記載された本が残っていたから。

 非武装の武器が作られる前・・・大魔法発動前に書き留められたそれらは、戦の中でも失われる事無く現代へと情報を残してくれている。

 そう思うと、何だか奇跡のように感じた。


 資料が全員の手元へ配られたところで、先生は教卓の前に立った。


「非武装の武器が作られるよりも前、私達の世界には争いが絶えない国があり、その国では日夜武器の研究がされていた。」

「それがこの資料に収まっているコレか。」

「そうだ。今の君達みたいに大きな力を持っている人が居なかったあの時代は、己の身は己で守らねばならなかった。」

「だからこそ武器これに頼ったんでしょ?」


 武器があれば、例え力が弱くとも攻撃を返す事が出来るのではないか。

 人々は自分や大切な人を守るために力を磨いたのだろう。


「セミリア・ファルには魔法が使える人がそこそこ居たんだよね。魔法を使う人と武器を使う人に分かれたのかな。」

「魔法を付与した武器なんかもあったかもしれないわね。」

「そうだな。真希もノエルも当たりだぞ。この時間はその話をしよう。」


 いつもは明るい先生が、真剣そうにそう言うので、私はその目をじっと見つめながら、その先の言葉を待つのだった。

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