第71話 あの日あの時
災害を未然に防ぐなど、完璧には不可能でも。
2032年の5月、地球全体が崩壊寸前までの災害に見舞われた。
それらを『予知』する役目を担っていた者らが……少しでも、被害を最小限にしてくれる手筈を整えてくれたと知ったのは、SNSでスパムだと一気に報告されていた『クロニクル=バースト』の公式アカウントだった。
宇宙には完全に逃げられない。
地底火山の活動は、富士山の山脈の再活動を促すもの。
さらには海底火山の活発化にも関わっている。
AIで作ったかのように、公開されていく画像や文言。それらすべては預言者などではなく『活動の過程で起きる事象』として普通のことだと言い出したのだ。大抵、受け入れられずに『スパム』『偽垢』『BAN』されて当然だと多方面から全面攻撃を受けても。
『彼ら』はSNS以外にもVRMMOなどのクリエイター集団としては、きちんと活動していたため……どちらが『本物』か惑わされてしまう。
ゲームはβ版も含め、リリースされているものにはスターシステムというパロディ要素が含まれているため……一定の評価が成されていた。しかし、インスピレーションの善し悪しが多いのか、若い世代には特に人気があったのが『スカベンジャー・ハント』。
原案者は行方不明とされていたが、集団のどこかには潜んでいるらしいとの噂が立つくらい秀逸とされた作品。プレイヤーの脳神経への負担が少なく、一定の時間プレイしたあとは休眠状態にさせられる。
身体を労わるゲームとして、第二世界の始まりのようなシステムには初回の日本サーバーだけでは物足りず、アジアや欧米などがこぞってサーバーを広げてほしいと契約を提案するほどだ。
その要となった人物こそが、『クロニクル=バースト』の幹部の一人・クロード=如月だ。並行世界では奈月の先輩で藍葉のパートナーと思わされていた、彼こそが運営の基礎を築いた人物とされている。
表向き、はだが。
「めんど~……皆して、らぶらぶしよって」
コールドスリープには入眠せずして、今まで運営を維持してきた彼だが。マッチングしない女性を待ちつつも、周囲の環境変化には腹立たしいと思っているのだ。実の妹が、同僚とマッチングさせられていただなんて事実を知らなかったのもあるが、幹部連中のほとんどが似た状況なのに羨ましくて仕方がないのだ。
VRMMOをなんとか運営し、NPCを一部兼任している社員はコールドスリープを起用して入眠していたのだが。クロードはぎりぎりまでマッチングするパートナーがいなかったため、運営幹部のひとりである藍葉のサポートとして『起きて』いたのだ。だから、並行世界側ではふたりがパートナーシップを組んでいたかのように奈月は感じ取れたのだろう。
「預言とかのインスピレーションはとりあえず、終わった。あとはこの先の環境整備とかの支援物資とかをどーするかやろ? 余暇のサポートは俺らで出来ても……独り身は、この暇過ぎな時間が堪えるぅう」
表向きの仕事がひと段落したクロードは、外は極寒だが室内は『普通の設備』として整えらえているシェルターの自宅でぼけっとしていた。妹は検査を受けたらさっさと政樹の自宅へ行ってしまうし、同僚の藍葉は恋人が『起きた』ので元の生活に戻るだけ。
ほかのスタッフも似たり寄ったりなのに、クロードは……相手がいないのだ。これから協力し合える以上に、プライベートも協力し合える存在に。全世界全地球人が成されていないとはいえ、幹部のひとりが実はそうでした……が、個人的にすごくショックだったのだ。
藍葉は仲の良い同僚だったが、既に先約済みだったためアウト。独占欲の塊である成樹を敵には回したくないのもあった。
「……まあ。完全に地球が滅亡したとちゃうし? ここから……ゆっくり、か」
少し楽観的に考えようと思えばそこに行き着く。それでいいのだと、クロードも焦ることをやめにした。ひとまずは、腹が減ったので藍葉監修の冷凍弁当をひとつ温めたが……悲しくなるくらい美味くて、成樹が本気でうらやましくなった。
次回は金曜日〜
今年一年ありがとうございましたー




