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第54話 情報共有①

 味見も一応したが、腐敗はほとんどなかったので器に移してから紗夜と袋ラーメンをたべることにした。宇宙空間にも持ってけるとされているが、やはり市販品では強度も弱いから難しかったのだろう。


 もしくは、この設備に合わせても強度が足りなかったとか。まだまだ改善が多いなと嘆息するも、今は温かい食事が食べれるだけ満足だ。



「はぁ……美味し。なっちゃんがこんな早く来てくれるとは思わなかったな~」

「……二ヶ月でも早いの?」



 ずるずる食べていく様子を見る限り、栄養が著しく欠如していたのがよくわかる。たったひとりになるまで、この場所で数か月以上も籠る生活をさせられていたら……身体面でも精神面でも狂いそうになるのに。


 紗夜の持つ、ADHDは健常者よりもそれらを緩和する個性として役立ってくれたのだ。現代医学だと障がいではあるものの、『個性』のひとつとしてみなされてはいるが。それを社会側は快く思わない人間の方がどうしたって、多い。


 だから、並行世界側のコンタクトが奈月にあってから、奈月自身も持つそれを……治療改善のデータとして扱ってくれないかとスタッフには告げた。でも実際は、現実側では災害対策に必死で精神疾患についてはどこまで奈月に薬剤を投与したかはわからない。


 それは、目の前で手を合わせている紗夜もだが。



「私に奈月くんの情報が来たのが……今年の春かな? 今氷河期だけど、暦上は夏の終わり。それまで、入退院繰り返しながらも障がい雇用で働いてんたんだ。最後の会社がまちゃくんたちの経営する会社だったってのはたまたまだったけど」

「……たまたま、ね?」



 雅博の性格を知っている奈月にとっては、『たまたま』だなんてありえないと思っている。不思議大好き、奇跡大好きな彼女の『メメ』を持つあの悪友が。自分の悪友の初恋の相手を探し当てるのに、情報を軽く握っただけで……あとは順序良く奈月と引き合わせるまでの治療費を工面したりすることも可能だ。


 奈月が大学時代のほとんどを治療に当て、身体障害者としても臨床実験の実験体にして『健常者(アンドロイド)』の手術を何度も繰り返してきたのだ。代わりに、意識はVRMMOを通じて並行世界にいくつもダイブしていたのだ。


 途中で、それは雅博たちもほとんど同じ状況になったので……今日まで、奈月も『起きれない』状態でいた。世界災害級の氷河期対策をしてきたのも、『クロニクル=バースト』というアーティスト名を犯罪者に仕立てた自作自演。


 世界災害で地球がどれほど作り替わるかを、並行世界側からの情報で『知らない』人間たちに伝える手段として……あれでも、優しく教えたつもりだったが。



「だーれも、信じてくれなかったなあ。今の首相さんはよくても、周りの野次馬連中とか」

「どこも同じか。……で、この対策に『クロニクル=バースト』に記録させといた伝承歌とかで落ち着かせたの? 外を戦後の闇市にさせないように」

「そうそう! なっちゃんがまだこっちに意識あるときとか。症状出たときに並行世界から教えてくれた共通の映像音楽!! あれ聞きながら寝ちゃうことあったけど、助かった~」

「おい、待て。それで、風呂場でそのまま?」

「あは~?」

「あは、じゃないから!!」



 そもそも、『クロニクル=バースト』を預けたところから、やり直しだと奈月はスープを平らげてからまだ動く端末を探すことにした。

次回は月曜日〜

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