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第46話 解凍しなくては②

 倒壊していない、アパートの前でGPSの反応は終わった。


 部屋番号は202。セキュリティはほとんど壊れていて、鍵も同じらしい。シリンダーの鍵も機能せずに入りたい放題だったが、逆にありがたかった。


『起きた』という言葉が適切かはわからないが、この建物の中で紗夜は眠り続けているのかもしれない。とりあえず、宗ちゃんの指示通りにして中に入れば。平成以降の建物をリノベーションしただけのアパートだとよくわかる。



「……中に、紗夜がいるにしても」



 奈月を覚えてくれているだろうか。


 奈月のことをパートナーだと認めてくれるだろうか。


 不安が募るものの、行くしかないとエレベーターがないので階段を上った。固い雪の感触に滑りはしないが、紗夜はいつからこの建物で眠っていたのか気がかりだった。


 奈月と同じ措置を受けていたのなら、もう少し設備のいい病院とかもあっただろうに。


 それ以外の考えがあったにしても、奈月は彼らから大恩を受けてこの場にいるのだ。間違った考えは持ってはいけない。


 玄関の扉を開ければ、外気に比べれば『ぬるい』感覚のエアコンが効いている部屋だった。


 ナツキのようにポッドに入っていないのであれば……逆に起きているのだろうか。少し気になったものの、起きているのなら『声がけ』が悩んだ。


 幼少の頃よりまともに会っていないし、会っていたにしても記憶がぼんやりで考えがまとまらない。記憶を手繰り寄せても『どの世界線』で奈月と紗夜は最後の最後まで出会えなかった。


 なら、これが正真正銘の『最初』かもしれない。


 半分嫌な予感と、半分申し訳ない気分を抱えつつ風呂場へと向かえば。



「……ここで凍ってた?!」



 ポッドらしき機材は見当たらないが、薄手の浴衣で全身は隠れつつも……ぬるめの風呂場でうとうとと眠っていたのはひとりの女性。


 奈月の声に起きもせずにこんこんと眠っているだけだった。上着を脱いで、ゆっくりと湯船から引き上げても起きない。呼吸の確認は取れたので、少しはほっと出来たのだが。


「ここであっためて……部屋の準備だな」



 だいたい、予想はついたが。『同棲再開』。『恋人との逢瀬』のシチュエーションは男女ともに憧れてやまないものだ。湯量を減らし、風呂暖房の温度を調整してから紗夜だと思われる女性を湯船の中に浸した。


 部屋を見てないが、解凍されているのであれば……おそらく最悪の惨事くらい簡単に予想がつく。


 あえて土足のままでリビングに向かえば……解凍したこととエアコンが働いていたので、水浸しの臭いとカビ臭いものが混ざった臭いでやばかった。


 これをある程度片付けてからでなければ……寝るとこからでも難しいだろう。買ってきた飲み物はキッチンに避難させ、病み上がりでも少しは掃除しようと……用意されてた指定地域のゴミ袋にささっと入れていくのだった。


次回は水曜日〜

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