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第4話 手術手前の打ち合わせ

 肉体改造が本格的に始まる前に、奈月はカーテルだらけになった腕でそれをずらしながら……書面にサインすることになる。おそらく、意識があるうちで、最後の動作になるかもしれないとゆっくり丁寧に。



「……父さんとも、意識があるうちでは会えないんだっけ?」

「……多分、ね」



 長い投資計画になるかもしれないので、奈月とスタッフの会話に敬語などの隔たりはない。スタッフたちが気にかけてくれただろうし、奈月自身もいずれ……の友人関係を築ける仲間内がいるのは嬉しかった。


 今までの友人たちとは、次会える保証はない。まだ一度しかダイブしていないが、あの並行世界にいる魂とやらでは彼らも存在しているだろうと信じていてもだ。


 次に会える姿が同じかは保証されていない。それは奈月自身も同じだった。そのために、生命を差し出しても足掻く決意をしたのだ。おそらくだが、父親自身もドナーか何かで奈月に協力してくれるかもしれない。


 奈月が半分機械化するギリギリまでの、大学部の学部長としての役割を果たしつつ。


 そんなことで、と自分なりに納得した奈月は、署名した後にウォーターベッドへと倒れ込んだ。



「きっつぃ……口から食べるの、水分もそろそろ難しい?」

「うーん。ご褒美と言いたいけど、今極力身体の水分率減らしているから」

「ん。じゃ、向こうでなんか食べてみる。ポケットマネーからざっくり振り込んでもらうようにしてくれるかな?」

「いくらでも。……向こうの親御さんは探さないの?」

「んー。鍵っ子、ひとりっ子……のちゃんとした生活に慣れてからがいいかな? 俺、今までちゃんと一人暮らし出来なかったんだ。VRの操作で、高校生くらいにして欲しいな? それなら、自立と混同するでしょ?」

「ふふ。さすがは、ライター志望。想像力ついでに企画提案早いね」

「レポートばっかりの日々過ごしてたら、こうなるよ」

「了解。すぐに適応させるから、『寝よう』か」

「ん」



 次はどんな状態で『起きる』かはわからないけれど。どんな状況でも受け入れないと、感覚が過敏になり過ぎてしまい……並行世界とこちらの現実側が混同してしまう。


 発達障害を少々持つ子どもは、一部で感覚が鋭い状態で感性が強い分……過敏になり過ぎると倒れてしまうリスクを背負っている。ルール化させ過ぎた社会の負の遺産でしかないが、脳もいじくってくれるのなら奈月はなんでもよかった。


 起きた時の過呼吸並みに、狭心のような感覚になるのはもうごめんだった。虚弱に加えて精神疾患だと早めにわかってからの……国からの計画に組み込まれていたのだろうが。


 利用されてでも『生きること』が出来るVR進化の計画には……奈月は遊園地で遊ぶのと同じくらい、楽しもうと決めたのだ。


 身体も何もない、大切な魂だけさ迷う……幽霊や亡霊のように見えたとしても。地球温暖化以外で、住む場所が切り替わる手伝いをするのならこれも学生としてのバイトだとも認識しておくことにした。


 そして『普通に』寝て起きたら、ワンルームより大きな部屋で寝転んでいた。今度は感触がちゃんとあるVRMMOとしてのユーザー側のようだった。


 家具家電一式のレンタル賃貸だと思ったが、備え付けの家電を見ればちょっとお高い雰囲気のもの。向こうでスタッフが奈月の年齢を引き上げるのと同時にプランを底上げしてくれたかもしれない。



(……てことは、この意識体(?)の簡単なステータスは)



 やれるかわからないが。手術前まで、レポート形式で提出した書類の中に、RPG風の並行世界にダイブ可能かの提案はしてはみたものの。


 サッと、横に手を振れば。異世界ファンタジーアニメやソフトゲームのように奈月好みの『ステータス』が展開されたのだ。



「マジ!? 並行世界……異世界だけど、ラノベとかの異世界じゃないらしいから。この世界の『俺』って実は優秀??」



 魂そのものを転生するのではなく、『外側の肉体操作』以外はどこかに存在する並行世界にダイブのみなので。


 これはいわゆる、異世界転生ではないのだ。

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