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第38話 信じて欲しいから

 最初に出会った、雅博らにも打ち明けていないことを咲夜に言おうとしている。


 とりあえずは自宅でいいだろうかと、話があるからとわざわざ招いたが掃除も何もほとんど手付かずのままだ。


 雅博らに自炊は習ったりしても、その周り程度しか生活感がない。けれど、咲夜にも見て欲しいし、知って欲しいから祖父とかいうあのIDが展開しやすいようにリビングだけは広くスペースを作っておいた。



「お邪魔……します」

「色々あるけど、どうぞ」



 準備した上で、休日の今日咲夜を家に招いた。せめてもと、茶菓子と飲み物くらいは用意したが手をつけるかはお互いわからない。


 リビングに入ってもらってから、展開させたディスプレイの多さとIDの彼を見るなり、絶句していたからだ。



「……これ、は」

「…………俺の、秘密」

「……仁王、くんたちは」

「教えてない。まずは、君にだけ」

『ボクはそこの奈月にとっては、祖父のようなものだ』

「…………おじい……さん??」

「まだ俺も信じられないけど……こっちでのじいちゃんなのかわからない」

「え?」

『この奈月の肉体こそは、君のいる世界のものかもしれない。しかしながら、意識と呼ぶような『魂の外側』はこの世界のものではないのだよ』

「偽物、に見えるかもしれない。でも、咲夜を『パートナー』に選んだのは俺の意思だ」



 わかってもらえないと思っても、伝えたいことだけはまず言いたかった。咲夜は何故か顔を真っ赤にしていたが、小さく頷いてくれたので宗ちゃんが説明を続けてくれた。



『率直に言おう。この世界以外の並行世界と呼ばれるもの。異世界と聞こえがいいかもしれんが、他所の自分とこちらの自分とで『ズレ』が大きく生じてな。その奈月は元いた世界の崩壊が始まったことで、本来の自分とも入れ替われなくなった』

「……待ってください。地球の崩壊はたしかに始まっていますが、完全には」

『そこだ。この世界はここに奈月がいることで『ギリギリ』を保っている』



 奈月もここまで本格的な説明を聞くのは初めてだったが……奈月が現実側であの端末を受け取り、こちらで展開しているディスプレイの中でノイズがあるのをいくつか見たが。


 つまりは、世界としての『喪失』を一度とならずいくつも繰り返していることがわかった。楔として、奈月がこの肉体を生かしていることで……耐えれたのだ。


 ここのいる咲夜を含め、多くの人間たちも同じようにして。



「……じゃあ、他の『誰』も同じとは限らない?」

『そうさ。奈月はだいたい理解してくれているから、そこの柔軟性はあるな? お嬢さんは、ちょいと混乱しているようだが』



 無理もないことだが、いきなりの壮大な物語とも言える情報を共有したことで……キャパシティがオーバーしても仕方がない。だが、数分後に深呼吸をしてから、真っ赤だった顔色を引っ込めた。



「……バースト・コードを身近な誰かが持っているとしたら。奈月くんを生かすことで、それがわかるんですね」

「……バースト・コード??」

「……簡単に言うと。世界崩壊を言い出した『組織』が十二年前に出現したんです。政府がそんな名付けをしたんですが、シェルター対策とか技術が飛躍し過ぎた代償……とも言われちゃってるんですが。地球が崩壊しないと、使いものにならない存在の粛正が出来ないって、犯行声明のようなものだそうです。その組織を『バースト・コード』と呼ぶ大人もいますが」

『ボクじゃ全部は言えん。制約に関わることだからな? とは言え、こちらと奈月の世界との文明開化の相違は本人がこれでわかっただろう?』

「……うん。結局は『喪いたくない』誰かか何かを奪い合うのに、代償は俺が請け負っているってことか」



 なら、シミュレーション内で見たノイズがこちらでも現実化しておかしくない。


 奈月は宗ちゃんことIDを縮小させて端末に移し……ディスプレイの解除をしていいか、咲夜に聞く。



「……どうして、ですか?」

「もしかしたら、ここから俺と引き離される可能性が高い。ここが安全とも言い切れないから、さ?」

「大丈夫です。もしかしたら、この建物自体が『シェルター』かもしれませんし」

「! じゃ、予測不可能だけど。『帰れる』ようにするから」

「はい!」



 同意を得て、ディスプレイを消去する方法を取った途端。


 鈍器で殴られたかのような衝撃を受け、奈月の意識が途絶えた。

次回は金曜日〜

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