第37話 一方こちらでも
もう戻れないところまで、来たんじゃないのは『彼女』にも伝達が届いてきていた。
終わりが始まりに。
始まりがひとつの終わりを導いたのだ。
『加東奈月』が、シェルターの『月峰咲夜』の中に入り込んだことで大きな『ズレ』が生じた。
わずかな心の隙間に。
血管よりも細く、細胞よりも微小なそれに起きた『ズレ』。
ゲームなどで言えば、ストーリー回想の中に起きた過去の自分の誤ち……などと誰かは言うかもしれないが。
総称『月峰紗夜』はすべてのズレをパズルのピースの如く、受け入れていたのだ。
いつかの彼が。
いつかの自分が。
心の隙間から、解体した『魂の核』そのものを散らしたのと同じ行為をしたからだ。
死にかけたことなど、幾度とてあった。
核さえ整えば、他はただの写し身。模造品やレプリカと言われる存在そのものでしかない。
『地球』と呼ばせたシェルターの心地よさはまだ数千年しか保てていなかったが。
またひとつの、『始終』を繰り返さねば。
崩壊と覚醒。覚醒からの始動。
これらを『加東奈月』は『月峰紗夜』との核を自分から引き離すことで、なんとか数千回のパターンを生み出せた。
シェルターと名をつけ。
自分たちの肉体だけでなく、魂の材料で並行世界との切り離しを繰り返し。
旅路と聞こえがいいかもしれないが、人生の終わりに近い死に方も迎えた。その都度、別の並行世界で創り変えられて……生まれたように蘇生させられらのだ。
『神の創生』と聞こえがいいかもしれない。
しかしながら、本気で番いたい相手と番ない苦しみを幾千年も繰り返し……疲れてしまったところで。
『地球で、『奈月』をたったひとり残すまで……あと、どれくらいだろ』
ここまで、ノイズが多いと他の並行世界でもズレが大きい。邪魔をしてきたそれらは、言い方を変えれば『敵』だが……結局は自分らも消えたくないだけの存在なのだ。
その害悪に『天使』も『悪魔』も。
『神』も『魔王』も何も関係がない。
お互いの領土の保身どころじゃないのだ。
お互いの『番』そのものを求めるために、邪魔者は排除する。自分勝手じゃ、と思われる御伽噺のアレとそっくり同じ。
だから、お互いの最愛を見つけたら……奈月と紗夜のように限界まで引き離す必要があるのを、誤差でたった百二十年で築き上げたのを。
2000年前後の人間たちだけで、誰が気づけたか。地球でその光に気づいたのは虚弱を代償に肉体をまず差し出した『加東奈月』本人。
相対の月峰紗夜の肉体は現実側には無く、魂の核だけ彼に寄り添っていたのだ。他はすべて、別の並行世界にいる奈月に届けて……泣き腫らす思いをさせたが、全てを世界の再興に向けて利用してもらった。
血も骨も、肉塊も何もかもすべて。オリジナルをひとつ創り上げた上で互いに帰れるように。
このクロニクルは二人の『愛』などを犠牲にした創造世界でしかないのだ。




