表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/56

第34話 氷点下も耐えねば

 熱もだが、冷感も大事と言われたが。


 装置はそのままに、宗ちゃんの素体を一気に冷やすかどうかで悩んだ。素体は万が一壊れていいものの、組み込んだ宗ちゃんのデバイスが無事かの保証ができない。


 とくれば、エアコン調整のように温度を下げる結論に至った。



《そこの『ボク』を心配せずとも、バックアップはしっかり取っているじゃないか?》

「……それでもだよ」



 カフリンクスに予備のデバイスは繋いであるが、誤作動やロストの可能性はゼロではない。この並行世界にリンクして、最初の相棒と言ってもいい存在を……杜撰な扱いだなんて、正直したくない。


 しかし、どこかの並行世界ではこの宗ちゃんとリンクして、こちらの彼を管理しているかもしれない。とは言って、簡単に放棄する気にもなれないのは奈月の性格もあって、無理だった。


 レバーで徐々に氷点下に向かう単純作業ではあったが、一気に下ろすのは怖い。


 そして、あと少しで下り切ると思った途端。



 パリン、パリン!!



 と、シェルターにヒビが入り、宗ちゃんの素体がガチガチに固まってしまった。



「俺らの判断で、温度上げたる!!」

「奈月くんはさっちゃんと素体見てて!! 壊れたら、本気でごめん!!」



 呆けかけたが、そんな場合じゃないと咲夜もいっしょにシェルターに向かったが。ヒビは下手に広がっていないものの、シェルターの外と内側の距離は10mほど離れているために……駆け寄れない。


 この距離のもどかしさを、奈月は自分の現実側で感じたのは……母の死を知った時だ。ドナーを受けても、結局死を受け入れてたのは奈月とてあったはずなのに。


 擬似的な人格でも、『知り合い』が死にかけているようなこの状況ですら、奈月の心は潰れそうに痛い。


 痛過ぎて、破裂しそうだった。



「……宗ちゃん!?」

《大丈夫だ。少し痛覚に似たバグを感じてはいるけれど、素体は少しヒビが入った程度だ。替えは必要だなあ?》

「だ、大丈夫!? こっちの予備にコピーは!」

《ははは。ボクはAIだよ? 既に幾つかの転送処置は終わっているとも。とりあえず、この素体での修理費の計算が必要なようだね》

「……ほっ」

「えっと……とりあえず、大丈夫?なの??」



 咲夜には宗ちゃんの音声が聞こえていないので、奈月の一喜一憂にオロオロしていたが。藍葉らの方も対処は落ち着いた雰囲気だったので、宗ちゃんからのリクエストを話すことにした。



「……修理申請って、職員室に言えば?」

「あ、まあ……そうね? 破損はちょくちょくあるらしいけど、このレベルだと……私らと書類記入くらいかしら?」

「俺が取ってくるわ。そんくらいやったら、今日のリーダー扱いで免除してくれるはずや」

「あんた、顔はいいもんねー?」

「……彼女の台詞なん?」

「彼女だからー」

「……咲夜ぁ」

「……兄さん、頑張って」



 素体こと、フィギュアを確認したが。温度変化の差のせいで、ヒビがきちんと入ってしまっていた。この手のフィギュアの購入し直しは大変なので、強化も兼ねて修理道具を買いに行くことに決めたのだった。

次回は水曜日〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ