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第33話 臨死体験ではないが

 現実側か、ズレが起きた並行世界側なのか、最早区別がつかなくなってきていた。


 些細なことで、ズレは『差分』を感じるほどまで広がっていき。


 死の間際を迎えたと思った、幾つかの個体は『あの世』との境目まで魂魄のズレを感知してしまっているのだ。


 あの世の獄卒とやらでは手が間に合わず、各裁判長である『十王』らも手の施しを迷うくらいだ。



「……星の再生。その終わりの兆しを、何処かの『お前』が見つけたようだな」

「…………そのようですね」



 王に呼ばれてやっと起き上がることは出来たが、まだ頭痛以外の鈍痛が落ち着いてはいなかった。刹那、と呼ばれる時間の間で何巡もの『加東奈月』との魂魄を駆け巡ったのだから……補佐官が死人であれ、肉体があることに変わり無いのだと実感。


 たとえそれが、十王で有名な閻魔の補佐官のうちの一人であれど。



「儂の繋がりとやらは、もう風化していて現実側に痕跡がない。しかし、並行世界とやらではお前とは縁戚でもあり……親でもあるのか」

「……いきなり呼びませんよ」

「当たり前だ」



 今主軸になっている並行世界。あれが、奈月と咲夜が実験でとっくの昔に採用した『シェルター』そのものであるのなら……もう準備は整ったと言うことだ。


 地球の、死と再生が同時期に起こることと同じく。


 多くの死者が狭間にある『現実世界』から、こちらのあの世へ流れ。自分たちのシェルターにある『AIが作成した肉体』への転送が為されてしまう。


 誤差、感覚で十二年ではあるが、宇宙に合わせると百二十年ときた。こんな微々たる差で済むとはあの世で先にいる奈月ですら、予想してない。二手三手先まで、提案者の『加東奈月』が共有を遅らせたのかもしれない。


 あの世にいる自分ですら、それを踏まえて行動すると思うくらいだ。



(……そうか。父さんと母さんのシェルターも、無事何処かで)



 巡りに巡って、かの元へ。


 であれば、死者の裁きで忙しくなるのがこちらの奈月の仕事だ。


 予言や占い、霊媒などで思想などと論破する愚かな人材については容赦しない。その差分で、どれだけの裁きが遅れたかをわからない連中ばかりだからだ。



「大王。私たちの役目……補佐官以外の彼らも、『裁き人』としての任務を共有しているでしょう」

「憑依ではなく、『彪の草笛』で呼び起こされた記憶……だからな。良かろう、『悪取り』として増えてくる邪気払いは任そうではないか」

「……はい」



 誰がどれ。


 どれが誰など、パターンも決まっているとしたら。


 下手すると、あの世のやり直しになりかね無いので……まずは、下に属する奈月ら若人が、自分たちの『最初の相手』を探すのに出発した。


 式神で確認したが、クロードと成樹は既に向かっているようなので……ほとぼりがつくまで、それぞれの邪気払いは任せた。

次回は月曜日〜

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