第30話 葉一枚の差
そのひとつ。
ズレの確認があれど、それは障がい扱いされ。
拘束され。
栄養をぬかれ。
固められ。
死装束に近い装いにされ。
我らは、わずかな差でズレを幾度も経験する。
どれほど、訴えても誰にも届かないでいたのに。
『彼』には届いた。
『彼』はすぐに気づいてくれた。
わずかな重なりを、ひたすらズラしてズラして……ひとつの『贄』に座標を置いたのは、誰か。
この一瞬から、『誰か』もわからない。
最初は最後なか。リスタートを切ったのも誰かだなんて、もう定かではない。
奈月か。
まちゃか。
メメか。
咲夜か。
クロードか、藍葉かだなんて。
もう、誰か誰かだなんて……はっきりわからない。
ひとつの『核』を埋め、シェルター制作をしているのも並行世界では一般的なのを誰もがはっきりとは知らない。
それが、どの世界での『自分』であってもだ。
『循環のために、水の毒と土の毒は……洗い直す方法が違うんだよ。元先人とやら?』
ノイズの入ったその声は男か女かどちらかもわからない。むしろ、混在した『自分』かもしれないと感じたのは、藍葉が一番早かったと言える。
別の並行世界で気づいた彼女は、彼女のシェルターで息子か孫でもいい彼らをひとつ育成しようとしていたのだから。
次回は月曜日〜




