第28話 先輩登場?
宗ちゃんを設置するにも、まずは実験している先輩たちを頼る必要が出てきた。
咲夜のいとこらしく、シェルター開発部の中では今有望株だそうで。
部室に向かえば、中ではガタゴトとやけに騒いでいる音が聞こえてきたが。
「くーちゃんのバカァ!!」
「堪忍!! 温度上げただけで、ちょい溶ける思わんやろ!?」
「バカぁ!!」
などと、痴話喧嘩にしか聞こえないが。咲夜は慣れているのか、特に気にせずに扉を開けていた。
「……クロード、兄さんたちまた失敗?」
ハーフの名前かと思ったが、中に入らせてもらうと和風美人の下で制服をもみくちゃにされている男子生徒がいた。まちゃよりも白く、髪も茶より白に近い。アルビノ反応がそこしかないのか目は赤ではなく薄い青だった。
「あら、さっちゃん」
和風美人はさっと立つと同時に胸ぐら掴んでいた男子生徒を躊躇いもなく、放り出した。どうやら、パートナー込みで彼とはいい仲のようだ。
「……お疲れ様です、藍葉さん。兄さん、今度は何を?」
「堪忍やで、サク」
「どーもこーも! あたしが金型から丁寧に作ったAIの端末、ちょこっとだけど溶かしたのよ!? 一度に擬似太陽の耐久性確認やり過ぎ!!」
「……悪いって」
和風美人の名前をどこかで聞いたのは、一旦片隅に置いておいて。
改めて、咲夜のいとこのクロード=如月とやらに奈月が紹介されることになった。形相なくらいに、少ししかめっつらをされてしまったが。
「……加東奈月です」
「……おん。咲夜のいとこや、クロード=如月」
「なにガン飛ばしてんのよ!? さっちゃんのパートナー決まってよかったじゃない?」
「……せやけど。こないにひよっこ」
「言い訳しなくていいじゃない。ずっと決まらなかったし、可愛いけどさっちゃんとはお似合いに見えるわ」
「……ども」
可愛がっている身内に、見知らぬ男が寄り添うのが気に食わない。と思うのは、一般心理では普通にあり得ない話ではないのだ。ソーシャルゲームでのストーリー分岐にもよくあったと、懐かしく思いながらクロードの睨みをスルーしようとしていた。
藍葉の方の、『可愛い』のは奈月が今華奢だから仕方ない……ことと受け止めておく。
母に似ているらしいから、女顔なのも致し方ない。とりあえず、挨拶を済ませてからふたりのシェルター実験を見させてもらったのだが。
中央のAI端末に、奈月の方がはしゃいで声を上げてしまった。
「再販も断絶された……!? 戦極ロードの伊達政宗公!?」
「あら! 君もゲームのユーザー?」
「ですです!!」
宗ちゃんの端末も、そのレトロゲームのキャラクターを模したフィギュアを使用していたのだ。藍葉に見せてやれば、匂い消しに使った香油が気になったのか。真剣な表情で宗ちゃん端末を観察していくのだった。
次回は水曜日〜




