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第24話 気づかなかった、対

 対比するくらいに、相手を気にかけたことがなかった。


 いずれ、命が終わる存在だと自負していたこともあって……奈月は家族とも友人とも、関係性に線引きをしていたことを思い出したのだ。


 結局は、他人は他人で、自分はひとりなのだと。


 コミュニケーションが乏しいと言われればそれまでだが、結局のところ不器用でしかないのだ。


 作業なら卒なくこなすように見せて、人との関わりは必要最低限。だからこそ、恋だの愛だのに意識を向けることだなんてわざわざすることはなかった。


 親にでさえ、散々健康面で迷惑をかけたのにこれ以上、となれば。


 現実側の肉体だって、差し出して並行世界での救難措置を急ぐ方が先なのは当たり前。


 そう思っていただけなのに。



「こ、こんにちは。は、はじめ……まして」

「加東、奈月……です」

「…………つ、月峰、咲夜です」



 それが何故、合コンのような出会いでの対面座席を設けられてしまったのだろうか。


 学校にいたのは、雅博のAI端末でわかったということと。たまたま今の時間帯が休憩時間だったこともあって……本人も暇を持て余していたのか頷いてくれたのだが。


 ディスプレイよりもだいぶ小柄で、奈月よりも小さく見えるようだ。


 名前と印象で気にはなったものの、正直な話。



(……小さめのハムスターみたいだな)



 自分より小柄なこともあり、縮こまる癖なのか俯きがちではあったが……奈月には好ましく見えた。自信なさげとかというよりも、恥ずかしがり屋なのか耳が赤い。


 奈月は自分の容姿に頓着ではあるものの、普通よりはマシに思っている程度だ。それが月峰にも、少し好ましい印象を与えたようだ。



「月峰、俺仁王。こっちは目黒」

「し、知って……ます。美男美女カップルで有名な」

「……そんなつもりはないけど」

「メメは美人系だとは思ってるけど」

「奈月に断定されると、照れるわ」

「俺はー?」

「「チャラい」」

「ハモランでも!?」



 事実を言ったまでだと頷けば、くすくす笑う声が。まだ耳とか赤いが、月峰がおかしそうに笑っている。奈月は、シンプルに可愛いと思ったがさらに煽るだけだと黙っておくことにした。



「けど、いきなりパートナーに誘うのダメじゃない?」



 生命をかけるのはもちろんではあっても、その先の生涯を簡単に決めるのは良くないと思っている。この世界の『奈月』は正確には今の奈月ではないのに。


 すると、『え』と言う声が月峰の方から聞こえてきた。



「あの、私……たしかに、売れ残りかもですけど。ダメですか?」

「いやいやいや! 転校生の俺がいきなり、ってのが生意気かなって」

「? それは……特に」

「えぇえ? いいの?」

「その……『協力者』って意味でなら、全然」

「あ、そう……か」



 雅博とメメが茶化すように言うから、少し焦ってしまったが。本来の目的は一時避難のために『協力者』としてのパートナーシップを組むに過ぎない。


 それを思い出して雅博らを見れば、逃げようとしていたのでわざとらしく声を上げて追いかけていく。


 月峰もとい、咲夜と呼ぶようになった彼女とは今日から四人で行動するようになるのは、雅博らに鉄拳制裁を施してすぐだった。

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