第23話 シェルター開発に必要なもの
並行世界にダイブして、学校にも行くようになってから……五日程度。
今日は雅博に誘われて、シェルターの『擬似体験』をすることになったのだが。
半円状のポッドにしか見えないそれが、居住区になるとはとても思えなかった。
「……これ?」
「これこれ。んで、問題がお前には一個あった」
「ん?」
「パートナーだよ。お前、まさか単独でシェルターに行く気はないよなあ?」
「……パートナー? 雅博じゃダメなの?」
「違う違う!! 根本からわかってないなあ?」
「説明してないからでしょ?」
ジュースを買ってきていたらしいメメが来た。ペットボトルで適当にと渡してくれたのはミックスジュース。嫌いじゃないので、ありがたく飲むことにはしたが。
「説明……もしかして、女性側ってこと?」
「そこは先生も一応言ってたのね? そーそー、ぶっちゃけ『人類滅亡説』も出たくらいだから……好きな子が一番いいけど、難しいならせめて一時的にでも組む女の子とかよ」
「……俺、転校してきたばっかだけど」
「そうねー。だから……掲示板、行くわよ!」
と、引きずられるように連れて行かれたのは、正面玄関横のディスプレイ。いくつものディスプレイがある中で、端っこには小さめのものが。
テロップに『決まっていません』とわかりやすく書いてあり……下には指名手配書ではないものの、学生証の写真が男女入り乱れでランダムに切り替わっていたのだ。
「……お見合い相談所?」
「救済策だからなあ? 俺とメメのよーに、前からじゃない連中のためのもんだし」
「顔合わせもあるし、ここで選んだ方が……ある意味楽よ。郊外とか道端でなんて奇跡的出会いは正直言って皆無」
「あ、うん……まあ、わかるけど。俺、今まで気になった子とかいなかったし」
虚弱体質のせいで、生きていくのに精一杯なだけだった。恋だの愛だの、そんなものは無縁で過ごしてきたに等しい。現実側の『まちゃ』が友人だけであったのも奇跡だったのに……それ以上の『配偶者』になりうる女性を探し出せ、と言うのは盲点だった。
はっきり言って、いつ死んでもおかしくない体質に、寄り添う存在を遠ざけていた性格は自覚していた。
しかしながら、この並行世界ではそうもいかない。
単純に避難場所を開発して、単身で過ごすつもりでいたのだから……赤の他人との共同生活は考えていなかった。むしろ、種の存続に近親者同士の結婚など、遺伝子的にもご法度なのだから……奈月もうかうかしていられなくなった。
仕方なく、ちらっとディスプレイに目線を向けたが。
これぞ、という相手の名前がひとつだけあった。その仕草を雅博が見落とさなかったのか、勝手にディスプレイへタップしまくってたが。
「こいつか?」
髪が、綺麗だな……と印象を受けたのと名前が可愛らしいで選んだのは。
『月峰咲夜』と言う、綺麗に見えて可愛らしい名前。大淵のメガネをかけてはいたが、奈月は同じ『月』の名前が入っていた彼女が気になっていたのだった。




