第16話 学校とやらは
夏休み期間も長いようで、結局短かった気がする。
雅博とボードゲームの実験を繰り返したり、温水プールで遊んだ以外にも。憧れてた友人とのレジャーワーク。
とは言え、学業も忘れてはいけない。
奈月は高校の義務教育をほとんど通信で受けていたので、もう一度やり直しの通学になってしまうが。中途半端に転校という形で、やり直しするのであれば問題はない。
健常者の生活を学ぶのも、奈月の大事な仕事……と思っていたのだが。
「ミニテストと問題集解く以外、基本『開発』メインだぜ?」
案内も兼ねて、雅博といっしょに登校している最中……だいたい教わったが、1999年代にも関わらず、技術革命が2200年代であってもおかしくないくらい進んでいる模様だ。
端末の簡素化とIDの擬似意識が整っている時点で、まずおかしいと気づくべきだったが。元から世間知らずだったということで、彼には言葉を濁すことにした。一年の大多数を入院生活していたのも、現実側では嘘ではない。
「……開発って何作るの?」
「シェルター。という名称で、自分の『家』作るんだ。目標は大学機関卒業まで」
「……どこに作るの?」
「さあ? 抽選あっから、通常は宇宙空間だけど……地上に近い成層圏以下は人気高いし。順当なら、銀河系のどっか」
「えぇえ?」
ざっくり、その並行世界側の技術は聞いてはいたものの。人口爆発よりも、星の『作り変わり』によっての救済措置は。こんな子どもですら、携わっていたのに驚きを隠せない。
奈月もほとんど子どもに等しいが、二個年上ではあってもこれでは小学生程度の知識と同等だった。
なので、雅博に同行してもらわないと。担任になる教師からの『シェルター』に関する説明はさっぱりわからなかったと言っていい。
「療養期間が長かったとは聞いている。仁王が隣人であるのなら、細かいシェルターの説明は聞くといいが。……適応力は高そうだな? 校舎での生活ルールも端末に転送していく以外は、仁王メインに聞いてくれ。放任と聞こえが悪く思うだろうが、『生き延びる』実習が二年から始まっているんだ」
「目黒とも面識あるので、大丈夫っすよ」
「そうか。それなら女性側は聞きなさい」
教師としてそれでいいか気にはなったが、あとは勝手に同級生で質疑応答しろと職員室からは出されてしまった。
「……こんな感じなの?」
「先生も言ったろ? ほとんど、実習に近いと『自主性』を養うのは自分次第……なんだよ。シェルターへの移住制度も、整ってまだ五年だぜ?」
「えぇえ?」
それだと、逆に余裕がないのは大人たちの方なのか。
これは現実側だと、二十年遅れているのと同じくらいの感覚に近い。とにかく、もらったDL必須の資料はPDFくらいに仕立てておく。デバイスのイヤーカフの中で、宗ちゃんに整理してもらったのだが……某国民的アニメのカプセル農場のような広い施設を『データで作成』するものらしい。
雅博が言った、抽選会とやらは大学へ進学後に決まるのはその通り。
あとは、小学生が工作でする粘土細工のように……『自分だけの家』を室内環境から整えるスタートだ。




