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第14話 はじめてなのに初めてじゃない?

 肉体は並行世界の奈月自身に馴染んでいるせいか。


 徒歩、駆け足、跳躍などをいくつか試してみたが。ひとつ前の世界と比較すれば『身軽』なのがよくわかってきていた。


 泳ぎはまだ不安要素が多いところもあるが、他の運動の動作的にはあまり問題がないらしい。ただし、サーフボードは体幹を必要とするので……少し転けながら操作してみたが。



「……すげくね?」

「たっのしい!」



 乗れると確認できてから、段階を踏んでギア変換のように波乗りの速さを上げ。


 バイキングレーンの雅博は、熟練のサーファーのような乗り方でボードを操る奈月の様子を見て、ぽかーんと口を明けながらもレーンを回されていた。酔っていないか少し気になったが、嘔吐の様子もないので大丈夫そうだった。


 アトラクション一回分の分数で楽しんだが、三半規管も整っている身体にはそこまで負荷がかからず。雅博があらかじめ用意してくれていたらしい、グレープフルーツベースのフレーバーウォーターで喉を潤した。



「……お? 今度は出来てんな」



 ボールの中身を確認していた雅博は、こっちに来いと手招きしてくる。早足で行けば、空洞のように見えた中身はアイスクリームの塊が出来上がっていた。バニラだけじゃなく、ドライフルーツのベリーミックスと言った感じに。



「これ作るため?」

「ほんとは、ボードの下の波ん中でボールも転がしたいが……バランスむずいしなあ? んで、半分遊びの装置増やしたわけ」

「美味しそう……」

「聞いてた?」

「聞いてたけど、食べたい!」

「はいはい。向こうに簡易キッチンあっから」



 アイスなんて、熱を出したときのひと口か二口程度。


 がっつり食べられたその味は、ベリーソースも入ったチーズケーキ風だったので、さらに美味しい気がした。



「もう一回乗りたいぃ」

「気に入ったか? 疲れてね?」

「いい運動になるよー」



 それに、ボードを奈月でもうまく操れれば。


 現実側では、最低救急隊の訓練から組み込めるだろうし……自衛隊もどこまで大きく訓練に支障が出ないか。


 地球崩壊の中に、大きく出てくるのはどうしたって水害が多い。シェルターの方法も研究中だろうが、こちらの時間軸のズレで向こうはどこまでその開発が進んでいるのかどうか。


 本来の奈月の身体すらもアンドロイド手術が進んでいるか、こちらでは情報を敢えて引き出せない。一方的な情報の伝達は出来ても、奈月からは具体例がないのだ。


 ただ単純に生活出来るように、手配という代価を使ってくれたのは提案者だと言う。検討がついてても、敢えて関与をしないようにしている。


 そうしないと、この場で楽しんでいる『奈月』すら何もわからなくなるからだ。



「おーっしゃ! 次は片側バイキングくらいにして、ボード増やすか」

「手伝うよー」

「おー」



 この並行世界すら、『夢の作り事』と言われても当然にはしたくなかった。昏睡状態には変わりないし、現実側での奈月は事実上『死亡』しているのと同じ。


 その誓約くらい、とっくにサインしていたのは奈月の意思だ。


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