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第11話 即席高級食材のの賄い

 いきなり、突撃したお詫びにとメメがキッチンを借りれないかと質問してきた。



「今日、バイトはないけど。食材のロスでかけたから、もらってきたの」



 マイバックの中をざっと見させてもらったが、魚か何かが多いのか保冷剤を入れていても少し生臭い感じ。しかし、雅博の彼女としても幼馴染みでも……こちらの食生活を支えている存在であれば、是非食べてみたいと思った。



「すぐ出来るもの?」

「米はあるし、おかず増やす程度なら? 十分もらえば、すっぽんの唐揚げご馳走しようか」

「マジ!? あまんの久しぶりじゃん!!」

「今日は予約キャンセルになったから、女将がぶつ切りしてくれたの!! マチャ、生姜チューブと醤油でいいわ。あと片栗粉!」

「油は奈月が今日買ったのあるぞ」

「……奈月、くん。使っていい?」

「いいよ。あと、雅博とタメだから呼び捨て全然」

「あ、そなの? あたしもタメ」

「んじゃ、俺もメメでいい?」

「いーわよ。あ、ゲテモノ見るの平気?」

「……高級食材、だっけ?」

「ふぐは流石に免許持ってないから、無理だけどね」

「はい、お待ち!!」



 雅博が家から持ってきた調味料で、メメはささっと下ごしらえを始めていく。今度はちゃんと玄関を閉めたかの、お説教を軽くしてからと根本的にきちんとしているところは現実側といっしょだなと思えた。


 そして、問題のすっぽんだったが。ワニとか亀のような皮がついている赤身肉だったので、奈月は少し驚いた。



「水気は抜いてあるけど、下味もつけたし。もう一個のジップに入れて……はい、奈月。袋握って振って振って」

「……こう?」

「そうそう」



 いきなり渡されて、粉をまぶすのを任されたが。いきなりでも性格が滲み出ている分、嫌な感じにはならなかった。




(……根本的な、魂の感知と共有)




 外側に多少の違いがあれど、『核の同一体』となれば……若干VRの生活をしていても、奈月はここまで感動していいのか不安定になりそうだ。


 だが、ふたりとの今を意識中断したくない気持ちが強かったため、ここは涙を堪えて袋を振った。粉が吹き出してこない程度に振れば、肉に白茶の衣がまとわりつく。



「じゃ、揚げていくけど……野菜がもうちょい、欲しい」

「んー? 俺んちにいつもの酢玉ねぎあるぜ?」

「それ採用。あとは緑だけど、一応先に作った方があるし。汁物はあたしの追加でいいかな?」

「……健康的だね」

「「こいつのせい」」

「ハモった……」



 仲の良いカップルと言うよりも友人以上恋人未満のやり取りにも見えたが、裏を返せば惹かれ合うそれは熟練した夫婦にも見えそうだ。現実側でも、ひょっとしたら奈月の知らないところで交際していただろう。


 確かめるのは今ではないので、出来上がった唐揚げといっしょに三人で食卓を囲むことにした。一人暮らしだが、身内が来る設定でもしたのだろうか。既にダイニングテーブルが一式あったため、今日は二人増えても余裕で座れた。

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