第1話 カプセル世界の基盤
新作です!!
現実と並行世界が当然のように認知されて、行き来出来るようになってきたのまではいいが……人口がそのため星ひとつでは足りなくなった。
では、作ればいいのではと思うが、技術はあれど資材も有限のために追いつくわけがない。
戦争や紛争などの弊害が落ち着けば、あとはあふれるばかり。
であれば、糧を得るために募るのも同意。
星を破壊せず。かと言って、集結するだけでは相違ない。
故に、開拓の時代が百年を越えて再び訪れたまで。
資産があれば、整い次第……先に向かうまで。擬似的な『星』を作り。強固に補強して、ひとつの『家庭』を築けばいい。
地上とやらはそれまで、ギリギリまで避難させて凍るまで。
この繰り返しを発案したのは、資産家の息子のひとり。
己の虚弱な体質改善を……ある程度生きながらえることを条件に。自由の時間を得るまでの『生き方すべて』を差し出したのだ。
昼間は有志団体の一員として、様々な職業の研修に向かい。
夜は擬似人格の中に忍び込み、警備システムとしてVRのゲーマーの役割を担う。開発には十年以上の月日がかかったが、犠牲と称して彼自身はとても有意義な職業だったと、マニュアルの最後には記載するほど楽しんだ時間を過ごしたようだ。
ひとつの『カプセル異世界』とやらの擬似世界が宇宙に飛び出してから、わずか二年目で百も超えるそれらが実用可能となり。
始まりの彼が宇宙空間のどのあたりで生活をしているかは、開発部でも最高補佐官だった存在しか知り得ない。
独自の世界を開発するために、文字通り『死んでいた』のだから我慢も何もない。ただただ、表側の生活で見つけたパートナーとの再会のために、今日まで尽くしてきたのだから。
VRMMOと称し、実は百年期間で続いた『世界改変』に巻き込んだビジュアル計画の中心人物として、これから地球に向かってくるのも知る存在は少ない。
今は凍りついた地球の中で、凍えているのは互いに約束し合ったパートナー。
生きるも死ぬも己次第。
最高のスタートダッシュを切るのも、あくまで彼が最初だ。
「……んじゃ。迎えに行きますか?」
擬似的な空間を節電モードにし、光年では百二十くらい突き離したところから地球への接近を始めたはいいものの。
あまりにも離れ過ぎていたので、仕方なくVRの中にダイブして地球に向かうことにした。
天変地異のせいで、まるで跡形も無いと揶揄しそうなくらい悲惨な光景を間近で見るのは初めてだったが。
任務を最初に任された、加東那月は久しぶりに会うパートナーのためにデバイスを展開してから瓦礫の上に降り立った。
今日は五話まで