肝試しの帰り道
「ふ、ふふふ、ふーん」
下手くそと自覚してる鼻歌をあげる。
それだけ気分が良い。
ハンドルを握る手が軽い。
アクセルを踏みこむ足もだ。
「来て良かった」
今なら素直にそう言えた。
やりたくもない肝試し。
心霊スポットへの真夜中のお出かけ。
強制連行されて車に乗せられたのだが。
今はそれで良かったと思ってる。
ガキの頃から一緒のクズ共。
近所と言うだけで一緒にさせられてきた。
運転してる男は、仲良くしたくもなかったのに。
そんな気持ちを全く聞き入れない親は、「遊んできなさい」と子供だった運転手を家の外に追い出した。
今もそれは変わってない。
そうして外に連れ出されてやる事と言えば、殴る蹴るの暴行。
近所のガキ共にとっては遊びだ。
人をいたぶり、なぶり、傷つけるのが。
周りの人間もそれを見て、「ほどほどにしておけよ」と笑って言うだけ。
子供同士でじゃれ合ってると思ってるようだ。
暴行が遊びという、日本らしい考え方を運転してる男は知った。
そんな関係が無駄に長く続いた。
大学になって一人暮らしを始めて少しだけ解放された。
正月やお盆は帰省しろという親の声も無視した。
帰れば嫌な思いをする。
とはいえ、仕送りを打ち切ると言われればどうにもならない。
仕方なく、大学二年目の夏に戻りたくも無い地元に帰った。
そしたら夏の夜中に近所のクズ共に捕まった。
生きたくもない心霊スポットに強制連行である。
親はそんなクズ共に運転してる男を渡した。
「籠もってばかりだから外につれていって」とほざきながら。
そんなこんなで心霊スポットまで連れてこられた。
「あいかわらず陰気くせえな」とか「しみったれたツラしてんじゃねえ」などと貶されながら。
これが近所のクズ共による友達への接し方である。
そんな状況に、運転している男も耐えるつもりはなかった。
持ち込んだナイフで隣のクズをさす。
後部座席に座らされてるのが幸いした。
両隣にいるクズを刺し殺す。
それから助手席のクズ。
後ろから簡単に殺すことができた。
「おい、てめえ!」
慌てる運転席のクズも容赦なく刺す。
運転してるが知った事ではない。
危ないと思うなら止めればいいのだ。
それをしないクズが悪い。
とりあえずナイフで刺して動きを止める。
それから前席に体をねじ込み、ブレーキを踏みこむ。
運転してるクズが邪魔だったが、どうにか車は止まった。
それから刺されて悶えてる奴等にとどめを刺していった。
急所かどうかなど考えない。
何カ所も刺せばそのうち危ない部分を突き刺すはず。
そう考えて殺していった。
こうして四人のクズが死んだ。
心霊スポットには到着する前の事だった。
幸い、周りに人はいない。
心霊スポットらしく人がいない場所へと向かっていたからだ。
目撃を気にする必要がない。
誰もいない場所で四人を殺した。
爽快な気分になった。
自分を苦しめる元凶が消えたのだ。
幸せと言ってよい。
「もっと早くやれば良かった」
これだけ本当に残念だった。
もっと早くやってれば、ここまで長く苦しまなくて済んだのだから。
だが、ここで面倒を終わりに出来た事を良しとする。
ここで踏ん切りを付けずに長引かせるよりは良い。
何よりも良いのは、もう二度とクズ共につきまとわれない事だ。
生きてる限り、どこかで問題を起こすのがクズだ。
それに巻き込まれる可能性は常にある。
運転してる男が免れても他の誰かが辛い思いをする。
そんな害悪の発生源を処分できた。
世の中が少しは良くなっている。
なにより、今までの鬱憤が晴れた。
クズにつきまとわれた20年。
その間にたまりにたまった不満と憤りが消えていく。
これだけでも復讐をして良かったと思える。
そうして死体を四つつんだ車を走らせる。
心霊スポットに辿り着く前に来た道を戻る。
あとは家に帰るだけ。
もちろん、これで終わらせるつもりはない。
「あのクズ共……」
浮かんでくるのはこんな事に巻き込んだ親。
ガキの頃からクズ共に運転してる男を放り込んだ元凶である。
絶対に許すわけにはいかない。
もちろん、クズ共の親もだ。
近所のジジイ・ババアも例外ではない。
虐げられてるのを見てけしかけていた連中だ。
誰一人、運転してる男を助けようとしなかった。
良い機会なのでそいつらも処分していく事にする。
「楽しいなあ……」
心霊スポット(の手前)からの帰り道。
家に着くのが待ち遠しい。
生まれて初めてこんな気持ちになった。
今まで家に帰るのも苦痛だった。
外に行くのもつらいものだったが。
帰ったところで楽しいわけでもない。
安全というわけでもない。
家にまでクズは乗り込んでくるし、それを親というゴミは受け入れる。
地獄はどこまでもつきまとった。
しかし、今は違う。
家について、親を殺して、近所のクズも殺す。
それを考えるだけで気分が盛り上がっていく。
仲良しこよしが全ての原因である。
無理して人を一緒にさせて面倒と問題を起こす。
孤独や孤立よりは良いと、人と一緒にいる事を強制する。
おかげで運転してる男はクズ共に虐げられ続けた。
それを親もまわりの人間も素晴らしい事とほざいた。
その報いを受けさせる。
放置するわけにはいかない。
神も悪魔もこの状況を救ってくれない。
自分でやるしかないのだ。
憤りが高まっていく。
それ以上に期待がこみ上げていく。
楽しい楽しい帰り道。
アクセルを踏みこみそうになるのをおさえながら、運転してる男は家路をたどっていく。
数日後。
運転していた男の近隣住人は全滅した。
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