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78 一人きりの離宮にて




 いよいよ終末の唄が奏でられようという状況で、ふとルドの言葉を思い出した。確か彼は言っていた。私にも魔法が使えるかもしれないと。


 魔法が使えたら、私も誰かの役に立てるかもしれない。おまけのお荷物からちょっぴり昇格できるかもしれない。


「アマヴェンナさん、最近ルドに会いませんけど、どうしてるか知っていますか?」


 ここはルドが管理している離れだと言っていたけれど、最近とんと見かけない。


 救世主の旅が始まるということで、王族の一員としてルドも忙しいのかな、と思いながら尋ねると、朝食後のお茶を用意しながらアマヴェンナさんは姿勢を正した。


「ルドレキオ様への面会をご希望でしたら、わたくしから申し伝えておきましょうか。ちょうど本日、王宮に出向く用がございますので」

「う、ん……面会を希望するというほどのことでもないような」

「では、おまけさまがルドレキオ様を気にかけていたとだけお伝えしておきましょう」

「いや、わざわざ私の話題出す必要は」

「しかし、先方は必ずおまけさまのことを根掘り葉掘り聞いて参ります」

「……うん? じゃあ、元気にしてるかだけでも、様子を見てきてもらえると」

「遅くとも、本日夕刻には本人自ら喜び勇んでこちらにお出ましになるでしょう」

「いや、あの、無理はしないでもらえると」


 何だかこの待遇、ほんとに破滅の救世主特権のようで居心地が悪い。橋渡し程度の役割の人間にそこまでするだろうか。いや、考えるのはよそう。沼にはまってしまう。


 ルドとはあの日、私の体に残る魔法の確認をしたとき以来会ってない。あの日のことを思い出して、途端に気まずさがこみ上げてきた。


 いや、あれがごく一般的な、残った魔法の確認なんだ、きっと!


 触れられたうなじに熱がともったようで、思わず手を伸ばして触れてみた。


 あれから特に変化もなく、魔法を取り込んだという体から魔法を感じることもない。


 ルドが見せてくれた『雲』とか、美幼女が使っていた転移の魔法とか、使えたら便利だろうけど使いこなせるかも分からないし、旅まではあと数日しかない。


 一朝一夕で魔法が身につくとも思わないけれど、できることなら試してみたい。

 

 かすかな希望を胸に意欲を高めていると、アマヴェンナさんが心配そうに切り出した。


「そういうわけでおまけさま、わたくしはこれより王宮に行くためここを離れますが、くれぐれも外に出るようなことはなさらないようお願いいたします」


 くれぐれも、という部分に圧がかかっていた。大丈夫、私は空気を読めるからアマヴェンナさんの意に背くようなことはしない。するはずがない。


 神妙に頷くと、それでもアマヴェンナさんは目尻をつり上げたまま、圧を弱めない。何だか全然信用してくれてない。


「大丈夫です! 外には出ません」


 任せて、と力強く頷いてみせると、ようやくアマヴェンナさんは目力を弱めてくれた。


「ではおまけさま、昼食の用意はしておりますので、大変恐縮ですがご準備はご自身でお願いできますでしょうか。夕刻前には必ず戻って参ります」

「はい、大丈夫です。むしろいつも何から何まで準備してもらって、ありがとうございます」

「それから、以前にも申し上げましたが、三階は鍵がかかっておりますので、おいでになりませんよう」

「三階……確か、中には危険なものがあるって言ってましたね」

「そうです。鍵がかかっているので入れません。もし万が一扉が開いていても、決して中には入らないように。魔のものより恐ろしいものに魅入られるかもしれません」

「は、はい」


 おそらく絶対に中に入らせたくない何かがあるんだろう。


 子どもに言い聞かせるときに使うような台詞だけど、今の私にとって魔のものは恐ろしい存在だ。決して興味を持ったりしない。


 何かあれば必ず表にいる騎士達に声をかけるように何度も言い含め、アマヴェンナさんは王宮へと向かっていった。


 さて、アマヴェンナさんが帰ってくるまで、とりあえず魔法に関する本でもないか図書室にでも行ってみようかな。


 午前中を図書室で過ごすことに決め、そこで何冊かの本を手に取ってみた。王族が静養に使用する館だけあって図書室の内容は娯楽系が充実している。


 特に小説や旅行記、あとは刺繍や編み物といったハンドメイド系の指南書が中心で、それ以外に政治や経済っぽい本もあるけれど、分厚くて難しい漢字が並んでいるので手に取る気にはなれなかった。


 魔法に関する本は見つからず、宗教関係や建国記は何冊かあるけれど、どれも幼児向けの絵本のように情報量は少ない。


 それでも何か分かることがあるかも、と読んでみたものの、イヴェリーンがいかに素晴らしい神であったか、そして初代王であるリーンフェルドがいかに素晴らしい為政者であったかたたえるものばかりで、特に知っている情報以上のものは得られなかった。


「うーん。やっぱり裏事情となると、こんな公の場所に置いておかないよね」


 それでも、魔法関連の本が一冊もないのは不思議だ。あと旧生物に関する本も。


 私の探し方が悪いのかな、と図書室内をぐるぐるしらみつぶしに探してみるけれど、それらしいものは見つからなかった。


 これはやっぱり直接ルドに聞いた方がいいな、と決着したところで、旅の参考になるかもしれないと何冊か旅行記を手に取ってリビングに戻ることにした。


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