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51 アマヴェンナさんの研究


「そういえばさっき王様の名前は歴代の王様から取るって言ってましたけど、もし子どもがたくさん生まれたらかぶっちゃいません?」


 八賢王ってことは八人分しかない。


 王位継承権は世襲制だから、確実に次世代につなげていくためには子どもをたくさん産むだろうし、そしたら名付けの名前がなくなっちゃうなんてことにはならないんだろうか。


「そもそも王族は少子傾向にあります。というのも、王族は魔力を有していることがほとんどで、この魔力量が子をなすにおいて非常に大きな作用を及ぼすと言われているからです。夫婦の魔力量の違いによって子をなしにくいと言われており、基本的に膨大な魔力量を持って生まれる王と釣り合う魔力量を持つ人は非常に限られています」


 明かされる王家の子作り事情。


 何だか人様のご家庭の問題に無神経に入り込んでいるようで、居心地が悪くなるけれど、アマヴェンナさんは実に事務的に淡々としている。気まずさを感じてるのは私だけのようだった。


「歴史をひもといてみても、王家では一世代に子どもはおおむね三人までにおさまっていますので、兄弟間で名前がかぶるという心配はされておりませんね。さらに言えば、身内では愛称で呼ぶことがほとんどのため、かぶったとしてもそれほど困ったことにはなりません」

「そういうものですか。王族は魔力を持っているってことは、魔法が使えるんですか?」

「はい」


 今度は私が目を輝かす番だった。


 日常生活で使う水道やガス、電気はどうやら魔法が使われているっぽいけれど、どうにも魔法感がない。


 ぜひその王族ならではの魔法を教えてもらいたい。たとえ私に使えなくても。


「例えばどんな?」

「おまけさまがどのような魔法を期待されているのか分かりませんが、おまけさまも魔法をかけられておりますよ。しるしを付けられたとお伺いしました。さらに転移魔法で空間移動もいたしましたね」

「あ。」


 そうでした、私思いっきり魔法かけられてました。美幼女に連れられて森の中に行きました。


「魔法は多岐に渡ります。魔力量や性質によって使える魔法には限りがあるようですが、転移や探索、攻撃や防御といった魔法も存在するようです。これはあくまでも言い伝えに過ぎませんが、あまりに強い魔力を持つ者は魔法を行使する意図なく、あらゆるものを意のままにできるとも言われています」


 思い浮かべただけで叶う、ということだろうか。それはそれですごい能力だ。


「王族はまず自らの感情をコントロールすることを学びます。同時に、ある程度大きくなるまで魔力を封じられます。これは感情のままに魔法を使うことを防ぐためです」


 アマヴェンナさんによると、魔力量は生まれた直後が一番少なく、徐々に増えていき最大値になったと同時に安定していくそうだ。


 そのため、最大値になるまでに感情をコントロールし、無意識に魔法を使わないよう徹底的に教育されるんだそう。


「王族の方々が魔法を使うことはほとんどございません。世界の安寧のために魔法を行使することはあれど、個人的な欲望のままに魔法を行使することは御法度とされているからです」

「じゃあ、ほんとに魔法をぽんぽん使うようなことってないんですね」


 私のつぶやきに残念そうな響きを感じ取ったのか、アマヴェンナさんが軽く首を傾げて見つめてきた。


「おまけさまは魔法に興味がおありのようですね」

「元いた世界でも魔法は空想上のものだったので、実際に目にできるならどんな感じだろうっていう好奇心はあります」

「おまけさまは好奇心が非常に強いようですね」

「……それ、どちらかというと賛辞ではないですよね」

「心から感心しております。好奇心の強さだけで言えば、研究者向きと言えるでしょう」

「……そういえばアマヴェンナさんはゴリムレラの研究をされているようですけど、どうしてゴリムレラの研究を?」

「もちろん好奇心からです。私はどちらかというとヒーローよりもアンサングヒーローに惹かれるのです。ルヴェルシュベインにおいて最も謎多きアンサングヒーローは、間違いなくゴリムレラでしょう。彼の意思の痕跡を見つけ、解明していくことに生きがいを感じます」


 テーブルに置かれた分厚い神話の解説書は何度も読み込んでいるようで、表紙は丈夫な装丁がされているにも関わらず四隅の金具は細かな傷が目立ちくすんでいる。

 さらに表紙の刺繍も所々ほつれかかっている。


 題名を綴った刺繍を優しく撫でながら、アマヴェンナさんは内緒話するようにそっと声を落とした。


「それは同時にこの世界の史実を明らかにすることにもつながります。史実ではルヴェルシュベインの初代王はイヴェリーンの子とされていますが、実際はイヴェリーンであるリーンフェルド王であり、ゴリムレラの血脈でもあります。この世界は綿々と続くゴリムレラの血脈により守られ、発展してきたのです」


 ゴリムレラは、とアマヴェンナさんは続ける。


「自らの存在を悪として対比させることで、イヴェリーンの神格化を深めていった。ゴリムレラの執念は、彼の神が唯一叶えられなかった後悔として、この世界を続けていくよすがたらしめている。そう私は解釈しています。この執念は、ひどく人間らしいと思いませんか? 全知全能であり、人とは異なる神の人間らしさにもっと触れてみたい、理解したいと感じたことが私の学びの原動力になっているのです」


 アマヴェンナさんの顔は、興奮からか少し頬に赤みが差している。瞳もいつも以上に輝いて、本当に研究が好きなんだとその表情や眼差しからうかがい知れた。


「そのゴリムレラが、私たちを召喚したってことなんでしょうか」


 表向きには大いなる神であるイヴェリーンが召喚したってことになってるけど、イヴェリーンが人間ってことは召喚したのはゴリムレラである可能性が大だろう。


 いやもうほんと、ゴリムレラは何がしたいんだ。

 魔のものなんてゴリムレラの神通力でえいやっとやれば一発だろうに。


「召喚に関する詳細は、一般の研究者や神官には伝えられておりません。しかし、神官長であれば。詳細は神官長に伺ってみる方がよろしいでしょう」

「今はみんなで遠征中でしたっけ。じゃあ帰ってきてもし時間があれば、お会いしたいです」


 もしかしたら今回の遠征で魔のものとの戦いもあっけなく終わるかもしれない。


 そう期待を抱きつつ、ユエジンさんへの面会手続きをアマヴェンナさんにお願いし、休憩することにした。


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