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9 救世主ご一行は騎士団所属に

「必要なものはそろったようですね」


 聞こえた瞬間、その場を支配する声。見ればいつの間に入ってきたのか、扉の前で微笑む金髪金目のリアルギリシャ彫刻がいた。


 昨日も思ったけど、私この人の声、弱いかもしれない。

 認めたくないけれど、声を聞くだけで心がわっと浮き立つ気がするのだ。


 ときめきというより、こう、逆らえない上司に対する緊張感に似てるんだけど。


 えーっと、この人の名前、何だっけ。王子様であることは間違いなんだけど……。


「それぞれの特徴を生かした石に認められましたね。改めまして、私はルヴェルシュベインの王太子、リーンフェルドと申します」


 タイミング良く告げると私たちが座るソファの前まで来て、膝をついた。

 

 そうそう、リーンフェルド殿下だ。


「神より導かれし救世主、ルヴェルシュベインの光よ。あなた方の勇気と高潔なる精神に最大の敬意と感謝を。ともに戦えることに、改めて謝意を申し上げます。どうぞこの世界をお救いください」


 しん、と場が静まりかえる。私たちも呆気に取られてるけど、周囲にいる騎士や神官の驚きの比じゃないっぽい。

 

 この国で、多分二番目くらいに偉い人が跪いて謝意を表明するって、おそらく普通じゃないはず。


 それだけ状況が逼迫しているのか、それともこの王太子殿下が変わり者なのか。


 誰も声を発しない中、勇者となったのは神官長様だった。


「殿下、救世主様方が困惑しております。あなた様が出てくると余計にややこしくなるのです。どうぞここからはわたくしども神官や騎士団にお任せくださいますよう」


 お願いベースではあるが、「席を外せ」というニュアンスはばっちり伝わったのだろう、リーンフェルド殿下は立ち上がると神官長に向き直って笑った。


「そういうわけにはいかない。陛下からも、救世主たちがどのように過ごしているのか、魔のものとの戦いをどのように進めていくのか、進捗状況を逐一報告せよと厳命されている。そうだな、ライエゾール」


 はっ、と短い返事ののちに前に出てきたのは、周囲の騎士たちよりも一段と体格が良く、一際豪華な騎士服を身にまとった男性だった。


 見た目は無骨なのに、動作はなめらかで隙がない。存在感がものすごいけど、多分消そうと思えば完全に気配を消せるタイプなんじゃなかろうか。いや、むしろその存在感で相手を威圧して倒す的な? 


 騎士団長の戦闘方法をいくつかイメージして思考を飛ばしていると、低くよく通る声によって現実に引き戻された。


「騎士団長のライエゾール・フェニと申します。以後お見知りおきを。ここにおります騎士たちは皆、第五騎士団所属であり、この度の戦いにはわたくしをはじめ、第一から第六騎士団を同行させる予定でおります」


 この部屋に集まっている騎士たちは基本的に黒い詰め襟の騎士服、装飾と言えば袖口に施された深緑糸で二本のラインだけという、極めてシンプルなものだ。


 詰め襟部分に深緑糸で模様のようなものが描かれているが、あれが第五騎士団というマークなのだろう。


 対するライエゾールと呼ばれた騎士団長は金糸の縁取りで、さらに肩章が付けられている。紋章のようなそれにはやはりというか、見たことのない生き物が刺繍されていた。


 佩刀している剣も一回りは大きい。飾り気のない剣は実用重視だからだと思うと、ちょっと怖くなった。


「救世主様方におかれましては、戦いの最中にあっても心安らかにお過ごしいただきたく、必要なものは何なりとお申し付けくださいますようお願い申し上げます」


 戦いの最中でも心安らかにってどんな超人だというツッコミは、おそらく騎士団長には通じないだろう。


 戦いって言われると血みどろな展開を想像してしまうけど、もしかしたら血なまぐさいことなんて起こらないのかもしれない。うん、そうであって欲しい。


「救世主様方の武具も決まったとのこと。今後の戦いを鑑みて、早速訓練を行いたいと思っております」


 言葉遣いは至極丁寧だけど、有無を言わせない響きを持っていた。思わず横を見ると、救世主様方は固まっていらっしゃる。とおくんなんて、明らかに肩落としてソファと一体化しちゃってるし。


 筋骨隆々の団長職に預かる男性から言われると、鬼のしごきが待っているのかと思うのも無理はない。


 震え上がる私たちをよそに、騎士団長はいつの間にか救世主の武具を確認したようで、的確に指示を出していった。


「マタテ殿は第三騎士団との合同練習を。大剣の使い手がおります。トオ殿は第六騎士団へ。団長の弓術の腕は右に出る者がおりません。ハル殿は第一騎士団へ。ポールアーム、並びにその体格を生かした体術も会得していただきたい。モトネ殿は第四騎士団へ。こちらは女性騎士が多くおります。そこで神より授かりし防御能力を最大に生かせるよう、戦闘術を身につけてもらう。キヨ殿は第二騎士団の医療班に行っていただきます。その後の訓練内容については各騎士団にて確認していただきたい。各騎士団へは、ここにいる騎士たちがご案内する。質問もその者へ。以上、解散」


 ついつい自分の名前がいつ出てくるのか緊張して聞き終えてしまったけど、巻き込まれただけの私にやるべきことなんてないのはあきらかだった。


 えーっと、じゃあ今日はもう部屋に引きこもりでもいいのかな。



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