表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/32

三.隠された姿

 紅い瞳と赤い髪。初めて会った彼の外見はその色だった。ただ、その瞳が緑になったのは、私の知る彼とは違っていた。


「…どうして、わかったの?」


 レオルドの口調が変わった。曇った表情も困惑にどう答えたらいいかわからないようだった。


 私は満足して、にっこり笑う。


「スノウ様。あなたが私という一人の人間を助けたから。決定的だったのは、さっき見た過去ですね。レオルドの、本当にあったかわからないけれど…一部の記憶です。どういう訳か私、人の過去が見れるみたいなんです」


 ふふっと自慢げに告げると、彼は目を瞬かせ、くすりと笑った。


「君は…!!」


 不意に、背後から声が上がった。さっと横に風が吹いたかと思ったら、目の前のスノウの横に偽アデルがいた。


「…アデル様?ああ、あなたは相も変わらず、ご機嫌麗しゅうございます」


 スノウが一瞬彼の登場に驚いたが、すぐににっこりと笑みを浮かべ、偽アデルの前でお辞儀した。


「スノウ…。君は、もういなくなったのかと…」


 姿形はレオルド。でも、その仕草はスノウだ。彼も気づいたのか驚いている。


「あのとき、私は体とともに消滅しました。しかし、魂だけはその後、レオルドの体に憑依したのです」


 スノウは彼に今置かれた自分の状況を説明した。


「体がない?憑依とは、まさか闇魔魔法!?」


「…そうですね。あの魔術師が編み出した禁忌の魔術。私はレオルドに眼を奪われた後、あの子を追放しました。でも、あの子は幻影眼を使って、私になりすまし、自分の体に私の魂を入れた。そのときから、私はここから抜け出せなくなりました」


「レオルドが…?ああ、でも、あれはサイファーの魔術だ」


「ええ。その魔術師が裏で操っていたのは知っています。そして見事に、何もかも奪われ、今や私は奴の操り人形となったのです」


 スノウの顔から、すっと表情が抜けた。


「アデル様!危ない!!」


 その瞬間、ユリウスの声が響いた。ハッとして私達がそちらを振り向くと、対峙していたユリウスが満身創痍で膝を突き、アレステが私達の方に剣を向けていた。


「邪魔なんだよ、あんたらは!!」


 アレステが鬼気迫る表情でこちらに駆けつけてくる。剣の攻撃に偽アデルが先に動き、私とスノウを両脇に抱えてそこから離れた。


 一瞬をついた攻撃だったが、偽アデルの動きで回避できた。


「まったく、面倒だな」


 偽アデルはアレステを見て、深いため息をついた。彼の中にいるのはサイファーのはずだ。でも…何か違和感がある。


「アデル様。積もる話はまたの機会にします。それとあなたも…とても不思議な子ですね。色々聞きたいことがありますが、私の意識もそろそろ限界がきています」


 体調は治らないようだ。もともとレオルドの身体は病に侵されていた。それが負担になっているのだろう。


「なにをぺちゃくちゃ喋ってるの?はぁ〜…アデルもユリウスも、さっさと消えて」


 アレステはいい加減うんざりしているようで、私達に露骨に顔を顰めて見せる。

 そのセリフ、そっくりそのまま返したい。


「あなたの相手は、私です!」


 そこに再びユリウスが動き、背後から彼に襲いかかる。アレステが面倒そうに舌打ちし、その攻撃を防御し、回し蹴りをした。それをかわしたユリウスが炎を操り、二人の戦いは第二ラウンドに突入した。


「時間が…っ、アデル様。レオルドは、あなたの大事なアレを、どこへ…しまい…っ」


 うつらうつらと、眠たそうに眼をこすりながら、彼女が問いかける。

 その唐突な質問に驚きながら、私は思い出してみた。

 過去の私は、誰かに心臓を奪われている。いや、殺された。だからこうして生き返り…ここにいるわけだが、今のスノウの言葉で、それが本当に私の過去なのか不安になった。


「私は…大丈夫。レオルドにアレは奪われなかった。ただ、記憶を…昔の記憶を消されてしまっただけ」


 偽アデルが少し悲しそうな顔をして、答えた。記憶が無くなったため、不憫なことが起きているのだ。私もそのせいで…いや、この男の存在事態にまた困惑させられる。

 このアデルに瓜二つの男は、本当に自分なのか…。いや、そもそも私はアデルだったのか…。


「記憶、ですか…。そう…ああ、もう限界…」


 不意にスノウの言葉が途切れ、ふらりと体が前へ倒れた。咄嗟に偽アデルが肩を掴んで支える。


「スノウ…?…意識をなくしたか」


 操られていると言っていた。多分、そのせいだろう。よく見ると、青白かった顔が更に真っ白で、そこに生気は感じらない。死体と同様の姿だ。


「あっ、アデル。彼女の、大事なアレって、前話した至宝のことだよね」


 自分は大丈夫だと自信持っているが、なぜそういい切れるのか…。


「そうだけど…その話は後ね。ユリウスが危ない」


 ハッとして、彼の言葉に、アレステと戦っているユリウスが苦戦していたのを思い出す。


「そうだった!あのままじゃユリウスが…あっ、ねぇ!レオ…じゃなかった、スノウ様と私、宝石を発見したんだった!でも、アイツが急に現れて奪っていったの」


 至宝を探していたことも思い出す。レオルドの姿をしたスノウは、あの男に操られて至宝を、この場所にある始祖の宝石を探しに来た。


「至宝が?やはりそれが目的だったわけか。カノン、君は下がっていなさい」


 偽アデルは私の言葉を受け止めると、アレステの方に体を向けて鋭い視線を投げた。


「人形使い…!!君は、やり過ぎた」


それが合図にユリウスに斬りつけていたアレステの手が止まり、偽アデルが動いた。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ