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仮面

作者: 柚依

 昨日の夜のことだった。刑法x条として思春期を迎えた少年、少女の「反抗」が刑事罰として懲役二年以上の罪になるということが発表された。この法案が成立した背景には数年前から世界を未知のウイルス感染が侵食していることにより、自宅での生活が増えたことでストレスを抱えた思春期の少年少女の少年犯罪数が急激に上昇したことに関係しているとのことである。

 ―僕の将来の夢はお父さんやお母さんみたいな人になることですー

模範的な回答とされたセリフを吐き、たくさんの拍手を浴びた小学六年生の僕は、今年で高校二年生になった。今となっては、小学六年生の自分の発表したあの将来の夢は、嘘と化して脳名で何度も何度もうざったく繰り返される。

「人の気持ちを理解しようとしないあんな人間にはなりたくない。」

今の僕の本心はここにある。x条さえ無ければとっくに反抗して、こんな家なんか出て行って、もっと自由に、もっと生きやすい僕の世界で生きていたのだと感じる。嘘の笑顔の仮面をつけて、両親の理想とする姿を演じるのにはもう疲れた。

 現代文の授業で課された課題は「理想とする人物について」であった。小学六年生の僕の姿とあの拍手が脳内で響き渡り、またこれかと嫌になる。

「お前なんて書く?まぁ、xあるし、相場親のことだよな(笑)なんかxって、無理やり俺らを抑え込んでいい子にさせようとしてるみたいでキモイよな(笑)あ、こんなこと言ってたら俺なんかすぐ捕まるか(笑)」

そう言われて咄嗟に

「そうだね、あんなもの大人のエゴの押し付けでしかないんだよ。」

そう答えた僕の心にはこの時すでに「反抗」の二文字があったのだろう。その夜僕は、両親と口論になり、「お前らの子供になんか生まれたくなかった。」そう口にして家を飛び出した。

 飛び出した先には暗闇しかなかった。まるで出口のないトンネルのようで、僕の心の中の不安感と後悔とそれでも「両親のところには戻れない。戻りたくない。自由になりたい。」という気持ちの行き先を表しているようであった。

―きっともうじき僕は捕まる―

そう思いながらたどり着いたのは僕の通っていた小学校だった。あの時の記憶がよみがえる。脳内で何度も何度も繰り返すあのセリフと拍手の音が僕を余計に苛立たせる。

「本当はいい子でなんかいたくなかった。いい子の仮面をかぶった自慢の息子でなんかいたくなかった。自分自身がいなくなるみたいで怖かった。」

―僕って何なんだろう―

今までは「いい子」でいるのが当たり前だと思っていた。彼らは僕の一番の理解者だと思っていた。僕の気持ちも全部わかってくれると思っていた。でも、そうじゃなかった。だから、僕が僕らしくあることを諦めるしかないんだ。

遠くでサイレンが聞こえる。もうすぐ僕は捕まる。僕の僕としての時間に終わりを告げる。そうしてまた、「いい子」の仮面をかぶって、来た道をぼんやりと歩きながら、玄関のドアに手を伸ばした。

「ただいま。さっきはごめんなさい。」


とある授業の課題として制作したものなのですが、思ってた以上に好評でした。

という個人的思いれのある作品です。

自身の思春期が作成中に思い出されるようで、どこか恥ずかしいと思いながらも制作していました。(笑)

感想やアドバイスをくださった方々、投稿をする勇気をくれた方には感謝しかありません。

今後ともよろしくお願いいたします。

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