第七話 世界について語る
「あのサナさん?」
「あっ!やっと名前で呼んでくれる方が!嬉しいです。」
「ええと、この状況についてどう思う?」
「理解不能です!だって、別世界があって、そことなぜかつながっていて、お嬢様はなんかふつうに馴染んでいて、変な噂もあるし、あたまがこんがらがってしまいそうです。」
「変な噂って?」
サナさんは急に真顔になったかと思うと、淡々とした口調で言った。
「あまり詳しくは言えないのですが、お嬢様はお屋敷、つまりご家族の方から疎まれています。」
「ううん、なんというか、想像がつくね。イミィには悪いけど。」
「お嬢様はそのことについて全く気にされていないようですが、それがまた疎まれる原因にもなっておりまして。」
「その、イミィはお屋敷の人たちからはどう思われているの?」
「恐怖、そして嫌悪です。魔力を持った血統は傲慢ですからね。恐怖に関しては当然です。しかし嫌悪に関しては……言えないです。」
「うん。ありがとう。それで、サナさんはイミィのことをどう思っているの?」
「これ、言っていいのかわからないんですけど。」
「大丈夫。こっちにはそういうのないから。」
そういうの。ある意味便利な言葉だ。受け取り方が色々あるからね。
「別に全く怖くないんですよね。」
「それはというと?」
「感情に純粋な方なので、それさえ気をつければどうとでもなるので。」
「確かに。それにあっというまに気分が変わるからね。」
「一言でいえばちょろいんですよね。でも、私のような人は少数派みたいで、それで離れに派遣されるメイドになったんです。」
「色々ありそうだねえ。」
「私、口軽いのできっといつか教えてあげますよ。」
「ありがたいよ。」
そういえば、二人はどうしてるんだろう。
「だから!そっちの世界には時間を巻き戻すすべがあるのか聞いてるの!!そしたらもう少し仮説が立てやすいから!!こっちの世界が上位世界なのか下位世界なのかでどう対応すればいいのかもわかるし!!」
「巻き戻す……ね。もし巻き戻せたらこちらが上位世界ということになるのかしら?」
「そうとは言ってない!こちらから観測した結果による!!その時間の巻き戻しでそっちの世界がこちらの世界からどう見えるのか、世界全体が巻き戻るのか、それともその存在だけが時間の流れを逆転させて動くのか、全部観測してみないとわからないの!!だから僕が聞いてるのは時間が巻き戻せるのかどうかだけで。」
「こちらの世界では時計が時間を司っているとされているわ。でも、時計を巻き戻したところで時間は戻っているといえるのかしら?一つだけでなく世界全体で巻き戻せば、それは時間を巻き戻していることになるのかしら。そういえば、私、時計忘れてきちゃったわ。」
「そっちの世界では時計が時間を動かしているの?!」
「どうかしら。ふふ。そもそもそれは時間の定義によると思うのだけれど。」
「時間の定義、何回言わせるのさ!!」
「忘れちゃったわ。もしかして、時間が巻き戻っていたりしてね。」
かなり熱く語っているようだ。