【コント】戦況報告
場所:王宮の謁見間
王:白髭に王冠。玉座に座っている。
兵:甲冑姿。台詞と共に謁見間に入る。
(ぼんやり独り言)
王「魔王軍と続いた数十年の戦争……人間軍は劣勢。
もはや兵の人員を揃えることすらままならんとはな。
最期の希望は……すがる思いで送り出した勇者という少年のみ、か」
兵「国王陛下! 伝令です」
王「む、お主は……確か勇者の幼馴染であったな」
兵「はっ、覚えて頂けており光栄です!」
王「敬わずとも良い、ワシはお主の友人を死地に送り出した張本人じゃ」
兵「いえ、そのようなことは……」
王「すまぬ感傷に浸っておってな。して、伝令とは」
兵「は、その勇者の件でございます。平原で魔王軍と接敵。敵軍の数は……一万!」
王「なんと! 魔王め大軍で終わらせるつもりか! して、我が軍は」
兵「……勇者一名のみです」
王「馬鹿な! 預けた兵はどうした!」
兵「皆逃げ出したようです」
王「……なんということじゃ。すまぬ、ワシは、お主の友人を本当に死地に……」
(沈黙)
(着信音)
王「なんじゃこの音は」
兵「あ俺です(スマホ取り出す)」
王「その石板は?」
兵「ちょっと待って下さい、あこれ勇者からです。もしもーし」
王「もしもしって」
兵「うん、うん、あ、そう?」
王「何どういうこと? 勇者と話してるのそれ?」
兵「勇者、勝ったそうです」
王「勝ったの!? 戦力差、いやその前に何その石! お主が耳に当ててるやつ!
会話できるの? 遠くの勇者と!?」
兵「あ、ス魔法ですか?」
王「ス魔法!?」
兵「凄いですよこれ、世界の裏にいても勇者と話せます」
王「知らんよそんな魔法!」
兵「勇者が出がけに作ってくれて」
王「出がけに! 勇者凄いね!?」
兵「いや友人として光栄です。(着信音)あ、また勇者からです。うん俺俺、どした?」
王「大丈夫なの世界観とか」
兵「……マジか大丈夫かおい、一旦切るって、おい!」
王「なんか、ヤバめ、かの?」
兵「敵が本腰入れてきました。相手は、西の国をたった一日で滅ぼした精鋭軍です」
王「あの強国を一日で、そんな奴らを相手にたった一人では」
(着信音)
兵「あ勇者。もしもし、うん、うん」
王「いいの? 戦闘中でしょ?」
兵「うん了解……ごめん勝ったっぽいっす」
王「勝ったの!? ものの数秒よ!?」
兵「すげぇよなあいつ、化け物並だわ」
王「そ、そうじゃな」
兵「もう人間軍よりあいつ一人のが強いんじゃね?」
王「そう、かもな?」
兵「……」
王「……」
兵「ところで褒美って弾んでくれんの?」
王「調子乗っとるなお主! いや勇者には弾むけど! 言っておくがお主には一切やらんぞ!」
兵「ダチなんだけど」
王「理由になっとらん!」
兵「……か~ら~の~?」
王「やらんつってんだろ無礼者! 一国の王への口の利き方を弁えよ!」
兵「そっちこそ口の利き方考えたほうがいいっすよ? あいつ、俺の言うこと何でも聞くんで」
王「普通に脅迫してきた怖っ!」
(着信音)
兵「お、丁度勇者からだわ。いつまでも玉座にいられると思うなよ爺さん」
王「こいつ魔王より怖いわ」
兵「あ、もしもし、うん、うん……え、おい待て負けるかもってどういうことだよ! おい!」
王「どうした、顔が青いぞ」
兵「……は、魔王の最大戦力四天王が出てきた上、母親を人質にとられ、は、敗戦色濃厚とのことです」
王「……本当?」
兵「はっ、国王陛下様!」
王「口調戻しても遅いよ? で何、強い四天王出てきて、ママ人質にとられて、負けそうなの?
……っはぁー! 今度こそ終わりじゃな勇者のやつ!」
兵「魔王みたいなこと言ってますよ陛下!」
王「うっさいわ! 今は玉座が大事なの! 人類勝ってもワシここに座れないんじゃ意味ないもん!」
兵「腐ってんな爺! (着信音)……くそ勇者か、もしもし何だよ」
王「え、勇者から?」
兵「うん、ああそうなの? わかった……おい爺さん」
王「もう態度でわかるじゃん。勝ってんじゃん」
兵「悪運尽きたな王よ、頼みの綱の四天王は勇者ママが倒した」
王「ママは人質でしょ!?」
兵「化け物の親は化け物だ」
王「仮にも友人の家族に酷くない!?」
兵「ふっ、もう残るは魔王のみだ。さっさと玉座を明け渡すんだな!」
王「黙れ! 魔王の力の前に人間など無力じゃ! 返り討ちにしてくれる!」
(着信音)
兵「勇者か! どうだ! 俺の玉座は!」
王「もう隠しもせんな!」
兵「……え、魔王と、色々話した? 意外と話わかる奴で?」
王「話?」
兵「……うん、うん、ん? 人は争いばかりで醜い?(王を指さす)」
王「(兵をめっちゃ指さす)」
兵「えちょっ、待て考え直せって! おい! おい!」
王「あの、何て?」
兵「……えっと、勇者……人に絶望したんでこっち滅ぼしに来るそうです」
王「あぁー……」
(沈黙)
二人「お主のせいじゃぞ」「あんたのせいだぞ」
暗転終了