ヒーローヴァース 下読み結果(文:Kei.ThaWest)
Kei.ThaWestの下読み二回目。今回もちょっと厳しい意見を言わざるを得ないと思う。だが真に受ける必要はない。基本的には主観による個人的な意見であり、作者様に受け入れがたい内容であれば無視してしまって構わない。執筆を続ける上でモチベーションが保てなくなるのならアドバイスなど不要である。ただ、このような下読み企画に作品を提出するということはそれなりの向上心や野心を持っている方であると判断し、こちらも率直な意見を述べさせていただく。では始めるとしよう。今回はこれだ。
作品名:ヒーローヴァース
URL:https://ncode.syosetu.com/n3548fv/
作者:ジョニー杉本
まず始めに言っておくべきことがある。本作は内容より先に解決すべき問題を多数抱えている。ただこれらの問題は解決すること自体は何ら難しくない。作者様に創作へかける熱意さえあればすぐにでもクリア出来るレベルの話である。
今回、事前に作者様にお伺いした自作がウケない理由は以下の通り。
『書く気』が起きた時にしか書かないから、どうしても更新が不定期になってしまう事。
描写が細か過ぎて、話が中々進まない事。
自作の挿し絵があまり上手い絵じゃない事。
先に結論から申し上げると、なろうでそれなりのPVを獲得しようと本気で考えているのであれば毎日更新は絶対である。ましてや書籍化とか、更にその先を狙うなら単に毎日更新しているだけではランキング上位の者達には絶対に追いつけない。彼らは必要とあれば1日に4話でも、8話でも更新する。1日で数万PVを獲得するような人気作ですら、これ程ハイペースに更新をしているのだ。マイナージャンル、無名の作者が書く気が起きた時にしか書かないようでは太刀打ち出来ようはずもない。
以上。これが全てである。
と結論付けて下読みを終わらせてしまってもよいのだが、それだとあまりにも不親切だろうと思うので、以下はもう少し詳しく解説してゆく。
毎日更新は絶対、というのは揺るぎない事実だ。試しにランキング上位の作品達の更新頻度を確認してみるといい。ほぼ確実に、毎日更新以上のペースを保っているはずだ。
だが、現実的に毎日更新は困難なこともあるだろう。ならば次善策としては、不定期であっても今よりもっと更新頻度を上げることである。本作の更新頻度はあまりにも遅い。というか、同時進行で何作も連載しているせいでほとんど更新が停滞してしまっている。これは大問題である。作者の信用を失う行為だ。
本作でなくてもいいのだが、まずは一本に絞り、可能な範囲でいいから更新頻度を上げることだと思う。そうしないと恐らく、このテーマの作品が浮上することは不可能だ。目安となる更新頻度はせめて2日に1回くらいは欲しい。1話は2000字程度でも構わないから、頻繁に更新する癖をまずは付けてもらいたい。
けれど幸いなことに、皆さんもご存じの通り、なろう小説には高い文章力は求められていないし、書籍化作品であっても文章レベルが壊滅的なのはよくあることだ。よって筆力については現時点では未熟でもよい。そんなものは書き続けさえすれば自ずと獲得できるし。
単に更新頻度を上げるだけでPVも上がるし評価ポイントや感想をもらえる機会も増えるのだから実に簡単な方法である。堅実で確実。逆にこのような泥臭い努力なしにランキングを駆け上がろうと思うのなら読者にウケるジャンルで書くしかない。それですら、ハイペースな更新が無ければ厳しいと思うが。
ヒーロー物自体、なろうではかなり不遇だ。人気作品と言われたら僕にはほとんど思いつかない。高評価を獲得している作品でパッと思いつくのは『極悪怪人デスグリーン』くらいだ。とにかく、ウケないジャンルなのだ。相当ニッチであると言える。
ちなみにニッチにはニッチの戦い方がある。少数のファンのハートをガッチリ掴まえることだ。描写が細かすぎる、というのはニッチ層向けと考えればむしろ好ましい。
が、僕が読んだ限りでは本作はそこまで描写が細かいという感じはしなかった。というか読みづらい部分が多い。
webで連載するなら読みやすさには細心の注意を払いたい。改行はもっともっと行ってほしいのと、固有名詞を一度に大量に出すのは控えて欲しいと思う。読者は作者ほど設定に詳しくないし、設定に興味がないし、設定を覚えてもいないものだ。残念ながら。
本作は冒頭からして大量の新規ヒーローと敵キャラがバンバン出てきてド派手な絵面であるが、これがもう多くの読者をブラウザバックさせる強力な必殺技となっている。一撃必殺だ。笑い事ではなく。
読者は作品のことを何も知らないのである。作者側からすればつい忘れがちだが、読者は想定以上に注意力もないし記憶力にも乏しい。こう言ってしまうとなんだか読者を馬鹿にしているようなのでより正確に記述すると、読者は面白いかどうかもわからない試し読みの作品にそこまで脳のコストをかけたくないのである。
よってリスクを回避するなら、素直に時系列に沿って、最初のヒーローの物語からじっくり書いてゆけば良い。クライマックスの戦闘にチラ見せしても、読者は全く興奮しないだろう。だって、どのキャラも知らないんだもん。
またタイトルとあらすじも変えた方が良いと思う。現状、タイトルからもあらすじからも作品の内容やウリが見えてこない。タイトルは今の形が気に入っているようならせめてサブタイで簡単に内容を説明するとか。
個人的には、本作に登場予定のヒーロー達はそれぞれ別作品として一つずつ完結させてゆき、最後に全員登場の作品を書けば良いのではないかと思った。始めからヒーローヴァースとして書かずに。
本作でやりたいことは小説版アベンジャーズなのだろう。でも本家ですら最初からアベンジャーズとして公開されたわけではない。それぞれのヒーローの単独作品がいくつもあって、その集大成としてアベンジャーズという作品があるのだ。いきなりヒーロー大集合をやるのは読者からすると本当に敷居が高い。
更新頻度、タイトル、あらすじ、書き出し、文章、本作はいずれの要素においても読者にとって敷居が高すぎる仕上がりとなっている。描写や絵がどうこう言っている場合ではない。
もし改稿される際は、読者は基本的に怠惰であるという意識を持ち、可能な限り読ませる敷居を下げるべきであろう。
やるべきことは決して難しくはない。
まず、毎日更新。そこまでは無理でも更新頻度を上げる。
そして、タイトルだけで内容がわかるように。
あらすじはこの作品のウリをもっと前面に。
冒頭のシーンは削り、時系列に沿った形で書く。
文章は適度に改行すること。余裕があれば小説を書く際の正しいルールについても勉強をする。
以上だ。
ここに更に付け加えるなら、第一部は『シルバースレイヤー』という独立した物語として完結にし置いておくことを勧める。同様に第二部も『サンフェニックス』として連載してはどうだろうか。こうするだけで幾分、可読性は上がるだろうと思う。
なお、これらの改善点についてはあくまで、このニッチな内容で本気で書籍化等を目指そうという場合を想定して書いている。趣味でのんびり連載しているだけであるなら、全く聞く耳を持たなくてよい。自由な執筆スタイルを僕は一切否定しない。
本作は内容より先に解決すべき点を多数抱えていると、僕は冒頭で言った。が、その解決方法はこのように決して難しくはない。やろうと思えばすぐに実行可能だ。
そしてお気づきの方もおられるでしょう。僕は今回、ストーリーラインやキャラクターについては一切言及していない。何故なら本作は、中身自体は決して悪くないからだ。僕はヒーロー好きだし特撮好きなので、この作品が含んでいる多くのお約束要素をストレス無く消化できたし最新話まですんなり読み切ることができた。刺さる読者には刺さる。これがニッチというものだ。
しかし間口だけは広げておくべきだろう。もっと読みやすくすれば、そして読者の目に留まりやすくなれば、絶対伸びる。そんな作品だ。




