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後編

   

「……はあ?」

 かつての威厳も忘れて、間抜けな声を上げてしまう魔王バルタサール。それくらい、意味不明な言葉を聞いた気がするのだ。

 すかさず、青鎧の男が補足する。

「そう、俺たちは全員が何らかの魔王! それが全部で53万人もいるんだぜ! 凄いだろ?」

「だから彼が言ったでしょ、『史上最大の魔王軍』って!」

「ちなみに、俺の名前は勇者魔王! あんたを封印したっていういにしえの勇者の血を引く、正統な勇者の末裔だぜ! だから、あんたの封印を解くことも出来たのさ!」

 勇者の末裔……? それでは魔王どころか、やはり、ただの人間ではないか!

 だが、そんなツッコミがバルタサールの口から飛び出すより先に、今度は女が名乗る。

「私は占い魔王! 格好から大魔導師に間違われることもあるけど、魔法は使えないの。でも私の占いは超一流よ!」

「凄いんだぜ、占い魔王の占いは。ここまで迷わず来れたのも、占い魔王の占いのおかげなんだから!」

 魔導師ですらないのか! そういえば、こいつら、魔法の灯りではなく松明を手にしている……。

 今ごろ気づくバルタサール。

「それと、彼が……」

 単なる占い師と判明した女が、後ろの仲間を紹介する。

「……無口魔王! もちろん種族は岩石人間ゴーレムなんだけど、もう岩石魔王は他にいるから、彼は『無口魔王』ってことになったの」

 岩の塊にしか見えない茶色のモンスターが、ぺこりとお辞儀する。

「あと、一番後ろにいるのがスライム魔王! 見ての通りのスライムよ!」

 紹介してもらえて嬉しいのだろうか。柔らかそうな水色が、ポヨンポヨン飛び跳ねている。

 かつてのバルタサールの配下にもスライム族はいたが、正直、どこが目でどこが口なのかわからず、会話もままならなかった。

 というより、バルタサールの記憶に照らし合わせると、水色のスライムは、スライム系モンスターの中でも最下級だったはず。それが『魔王』を名乗る時代とは……。


「余は、風の魔王バルタサール……」

 呆れながらも、その場の流れで、名乗り始めるバルタサール。しかし、最後まで言わせてもらえなかった。

「あら! ダメよ、それ」

「ごめんな。もう『風の魔王』を名乗ってるやつはいるから……」

「多数決の結果、あなたの名前は『古代魔王』に決まったわ。私は『昔の魔王』に一票入れたんだけど……」

「俺たち魔王軍は、民主主義だからな! だから勇者軍とも、平和に戦っていけるわけだし!」

 バルタサールを前にして、キャッキャと騒ぐ一組の男女。

 岩石人間ゴーレムは黙ってジッとしているし、スライムは相変わらずピョンピョンしている。


「なんということだ……」

 せっかく復活したのに、世の中は大きく変わってしまったらしい。

 53万の魔王軍というのも、自称魔王の寄せ集めに過ぎぬ。真っ当なモンスターがどれだけ含まれているかも怪しいものだ……。

 そうした事情を察して。

 本物の――ただし時代遅れの――魔王であるバルタサールの口からは、嘆きの言葉が飛び出すのだった。

「……ダメだ、こりゃ」




(「私の魔王軍は53万です」完)

   

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