時のはざま
気が付くと見たことがあるような、だけどどこかはわからないような場所にいた。私の服装は高校の制服で肩からかばんを下げていた。
何故か帰らなければいけないと思いすぐにその場を離れようとしたがどこに向かえばいいか分からない。その時、高校の先生が歩いているのが見えた。普段は車で登下校していたはずだが何故か歩いていた。知らない場所にいて焦っていたからかわからないが疑問に思わず話しかけるために追いかけていく。
追いかけたつもりだったが目の前が白くなったと思うとまた別の見たことのない場所に出ていた。さっきまでは明るかったはずの空が今では冬の夜八時くらいの暗さになっていた。そんなに長時間歩いていた覚えはない。しかし例により疑問に思う事は無かった。
そこは十字路で右に公園、左に少し細い道、前は見たことのある何処か分からない住宅街だった。とりあえず動かないと始まらないな、そう考えた私は右の公園に子供がいるのを見つけて話を聞きに行く。数歩歩いたところで子供が遠ざかっていったので話しかけるために早足で進む。すると突然そこにいてはならないような戻らなければいけないような気がして全力で元の十字路に戻る。道はまだあるが通ってはいけないような気がして右の道に向かうのを諦めた。
次に左の道に向かっていった。特に何もおかしなところもなく順調だったが奥から男性が歩いてくるのが見えた。話しかける気になれずそのまま通り過ぎたが歩いていた向きが変わっていた。今までいた十字路の方を向いていたのだ。おかしいと思い進もうとしたが後ろから男性に押された。
「まあまあまあまあ、こっちこっち」
抵抗する気にもなれず、言葉も話せず押されていると元の十字路に戻ってきていた。男性はどこにもおらず左の道が見えなくなっていた。
そこで右のポケットにスマートフォンが入っているのを思い出し地図アプリを起動してみた。ここがどこか、どうすれば帰れるのかわかるかもしれないと考えたからだ。地図を開くと私のいる場所を中心に薄緑色で囲まれており地名が時のはざまと表示されていた。なんだこれ、と思いながら詳細表示ができるようなので開いてみると本音を伝えれば出られると書いてあった。ゲームやアニメみたいだと思うが誰に話せば、何を話せばいいかはわからない。
気が付くと目の前が真っ暗になっていた。少しするとだんだんと明るくなっていき、薄暗いなー程度で止まった。床には畳がひいてありふすまが閉じているのが見えた。見覚えがあるなと考えているとすぐに思いついた。リフォームする前の私の家なのだ。六年前ぐらいに傷んだところを直してフローリングに貼りなおした家の一室に似ていた。ふすまの奥には人がいたらしい。私の兄だ。私たちはお互いに嫌いあっていたがこんな状態にもなると心強く思え話しかけてしまう。
「************」
自分で何を話していたかはわからない。何か彼を認める発言をしているのだろうと言葉では表現できないが感覚でわかった。
「**********************」
「*************」
「**********************」
向こうも何か話している。やはり内容を理解することができなかったが、自分が何を話しているかは不思議と理解できた。
そんなことをしているうちに目の前が白くなっていき
「もう朝だよ、学校に遅れるんじゃない?」
「まだ大丈夫~間に合うよ~」
目が覚めるといつも通りの日常だった。
作者が実際に体験した話