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第2章 【バーソロミュー】

ゴホン。あたしは一呼吸置き、咳をした。


「バーソロミューか。喋れるとはな。

お前はいつからここに住み着いていたんだ?」


「オボエテナイ イツノマニカ ココニイタ」


バーソロミューはカタコトであたしを見上げながら喋る。

小型ロボットでなんだか見てくれは可愛らしいが、孤高を愛するあたしは、言葉を発する者に情を持たない。

あたしは冷酷な口調のまま続けた。


「食料か?

食料が目的なら、他所で探すんだな。

とりあえず、ロケット内はあたしの家だ。

お前はお前の家族の元へ戻るんだ。

迷子なら、道は通りすがりの奴にでも聞けばいい」


バーソロミューは構わず答えた。


「モクテキハ ナイ

カゾクッテダレ イナイ

ロケット オモシロイ

ワタシ ココ スム」


あたしは途方に暮れて溜息を吐いた。


「物分かりの悪いロボットだな。

住まわせることは断る。

とりあえずロケットを適当な場所に着陸させるから、そうしたらこの場を立ち去れよ」


バーソロミューはキョトンとした表情であたしの顔を見つめると、唐突に内部を駆け回り始めた。

「おい、お前……途轍もなく好奇心旺盛なロボットだな」

止める間もないスピードだ。

まぁ、どのみち次の星に着陸したら此奴はあたしがここから降ろせばいい。

あたしは極めてバーソロミューを楽観視していた。


するとその時だ。


バーソロミューがいきなり目から虹色のレーザービームを四方八方に発射しだした。

次々とロケット内のシステムが故障していく。


「お前、気でも狂ったか!!

墜落するから止めろ!!」


あたしはバーソロミューを止めたが、バーソロミューの衝動は止まらない。


遂に全てのシステムが故障し、ロケットは墜落してしまった。


ー オキテ オキテ クダサイ

ワタシハ テキデハ アリマセン ー


「……はっ、どこだ、ここは!!」


どうやら気を失っていたようだ。

あたしは木の枝にぶら下がっていた。

洋服が運良く枝に引っかかっていたのだ。

下を見下ろすと、崖っぷちになっている。

よりによってかなり高い位置にある木に助けられたようだ。

木の枝に助けられなければ死んでいたに違いない。

手脚が痛むが、命に別状は無し。


「オメザメデスカ レイラサン」


見上げるとバーソロミューが木の枝にフクロウのように留まっていた。

さっきまでレーザービームを発射しまくっていた目をパチクリとし、ニンマリと嬉しそうな表情をしてこちらを見ている。


「テヲ カシマショウカ」


「手は要らない。

これぐらいのハプニングは慣れている。

なんせ宇宙飛行士で有り、旅人だからな。

片手で上等だよ」


あたしは木の枝の太い部分を片手で掴み、自ら木の上に上がり、バーソロミューの隣に立った。

昨日の予感は当たり、酷い嵐だ。

土砂降りの雨になっていた。

二人揃って嵐の中木の上に立ち、ずぶ濡れ状態で有る。

激しい風は荒波のように頬や額を吹き抜け、薄汚い砂煙が舞っており、目に入って痛い。

あたしは腕を前に翳しながら前方を確認しようとした。

視界の向こう側に、墜落して壊れ果てたあたしの家…ロケットが爆発して燃え上がっている真っ赤な炎が見えた。

旅を続ける手段とお気に入りの住処を失い、とてもショッキングな光景で有る。

まぁ、とりあえず寝床と食料が手に入ればそれであたしはいい。


あたしはバーソロミューを横目に質問した。


「で、突っ込みどころ満載なんだが、まず一つ。

お前、さっき、レイラサンとあたしの名を呼んだが、何故あたしの名がレイラだということを知っている?」


バーソロミューはあたしを斜め横から見上げて、ニヤリと不気味な笑みを浮かべた。

珍しく無言だ。正直気味が悪い。

次にバーソロミューは、視線を崖の向こう側にやった。


「あ?」


そこには、森林に囲まれた屋敷がドンと建っていた。

そしてあたしは小型ロボット、バーソロミューの小さな身体に、翼が生えて居ることに気がついた。


「なるほど。まぁどうにかなりそうだな。

とりあえずあっち側に渡るか」






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