【プロローグ】
ー なぁレイラ
君にこれを託そう
不思議な力を持つ、三日月のピアスだ ー
オーロラの夜だった。
紫と緑の波打つようなオーロラが包み込む。
岩陰に佇みながら、あたしは片手を伸ばしそのピアスを受け取った。
あたしの名は、レイラだ。
年齢は不詳。
孤高に旅を続けている。
今日はその旅の中で出会った唯一の相棒、アダムとの決別の日だった。
アダムは涙を零すこと無く、真剣な瞳であたしにピアスを手渡した。
「珍しいな。ありがとう。
これは何に使うんだ?」
あたしは礼を言いながらアダムに問う。
「今はまだ知らなくていいよ。
君はとりあえずそれを付けて行動しろ。
付けられるか?」
アダムは意味深なことを言いながら、あたしに早くそれを付けろと促す。
あたしはピアスやネックレスが嫌いだ。
纏わり付く物が大嫌いなのだ。
いつでも解放感に満ち溢れていたいから。
だが、唯一の相棒からの受け取り物だ。
あたしは渋々、促されるがままピアスを片耳に付けた。
動く度に、キラキラと光る。
綺麗なピアスだ。
アダムはそれを見て満足気に笑みを浮かべた。
澄んだように見えるその三日月のような瞳には、何故だか覇気が無く、暗く、光が差していない。
これが何を意味するのか、あたしはまだ知る由も無い。